表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『放課後スターライト! ~私立夢見ヶ丘スクールアイドル日誌~』  作者: ゆっきー
第1章:夢見る少女と、輝くステージ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話:終わりのサイレン、最後の約束

いよいよ運命の日。

前日の夜、あかりと美姫はスマホで他愛のない会話を交わします。

「また明日」――その言葉が、どれほど重いものになるか知らずに。



「ふあぁ……。もうこんな時間か」


 時計の針は23時を回っていた。

 明日のライブに向けて、衣装のチェックや歌詞の確認をしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。

 ベッドに潜り込み、充電器に繋いだスマホを手に取る。

 画面には、LINEのトークルームが表示されていた。


『美姫:ねーねー、明日の髪型どうする? ポニテ?』

『あかり:うーん、ツインテにしようかな! 気合入れるために!』

『美姫:でたw あかりの勝負ツインテw』

『あかり:うるさいなー! 美姫こそ、メイク濃くなりすぎないようにねw』


 他愛のない会話。

 画面の向こうにいる親友の笑顔が浮かぶようで、私は自然と頬が緩んだ。


『美姫:ま、冗談は置いといて。明日、絶対成功させようね』

『あかり:うん! 私たちが一番輝く日にしよう!』

『美姫:じゃあ、明日は朝早いしもう寝るわ。おやすみ~』

『あかり:おやすみ! また明日ね!』


「また明日ね」


 スタンプを送信して、スマホの画面を消す。

 暗くなった部屋に、外から微かにサイレンの音が漏れ聞こえてくる気がしたけれど、私は気にせず布団を被った。

 明日は最高の一日になる。

 そう信じて、私は眠りについた。


 翌朝。


「……んん……」


 目覚ましのアラームより早く目が覚めた。

 カーテンを開けると、空はどんよりとした曇り空だった。

 なんだか空気が重い。湿気が肌にまとわりつくような、不快な朝だ。


「行ってきます!」


 朝食を慌ただしく済ませて家を出る。

 駅へと向かう大通りは、いつもより車が多かった。

 いや、多いなんてもんじゃない。大渋滞だ。


『ウゥゥゥゥゥ――!!』

『ピーポー、ピーポー!!』


「うわ……また?」


 耳をつんざくようなサイレン音。

 赤色灯を回したパトカーと救急車が、渋滞の隙間を縫うように何台も走り去っていく。

 歩道を行く人々の表情も、どこか険しい。

 みんなスマホを食い入るように見つめたり、不安そうにヒソヒソと話したりしている。


「何かあったのかな……」


 電車も遅れていたけれど、なんとか学校の最寄り駅までは辿り着けた。

 校門をくぐると、いつものチャイムが鳴る。

 でも、どこか学校全体の空気がピリピリしている気がした。


「あ、あかり! おはよー!」


「美姫! おはよ!」


 昇降口で美姫と合流する。彼女の顔を見て、ようやくホッとした。

 外の世界がどれだけ騒がしくても、ここには変わらない日常がある。


「なんか外、すごくなかった? 救急車だらけで」

「ねー。なんか怖いよね。……ま、私たちは練習に集中しなきゃ!」


「そうだね! 放課後の最終リハ、頑張ろう!」


 私たちは笑い合って、教室へと向かった。

 授業中も、先生の声よりも外のサイレンの音ばかりが気になったけれど、それでも時間は過ぎていった。


 そして、放課後。

 レッスンルームでの練習を終えた私は、いつものように一人残って日誌を書いていた。


「ふぅ……。終わったぁ……」


 心地よい疲労感。

 明日はいよいよ本番だ。

 緊張と興奮で胸がいっぱいだけど、体は正直だ。強烈な睡魔が襲ってくる。


「……ちょっとだけ。5分だけ……」


 長机に突っ伏して、目を閉じる。

 遠くで聞こえるサイレンの音が、不思議と遠ざかっていく。

 意識が、深い闇の中へ落ちていく。


「また明日」の約束が、もう果たされない世界へ向かっているとも知らずに。


 ……


 …………


「……ん」


 どれくらい眠っていたんだろう。

 ふと目が覚めると、視界全体が異様な色に染まっていた。


「……え?」


 体を起こして、息を呑む。

 窓の外。

 空が、燃えるような『茜色』に染まっていた。

 夕焼けじゃない。血を流したような、ドロリとした赤紫色。


「な、なにこれ……?」


 そして、気づく。

 静かだ。

 あまりにも静かすぎる。

 さっきまで鳴り止まなかったサイレンの音も、車の音も、何一つ聞こえない。


「美姫? ……先生?」


 恐る恐る廊下に出る。

 茜色の光が射し込む廊下には、誰もいない。

 ただ、不気味なほどの静寂が広がっているだけ。


 その時。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』


「ッ!?」


 講堂の方角から、絹を引き裂くような悲鳴が響き渡った。

 それは、私の知っている日常が終わりを告げた合図だった。


第1章 完

ついに、世界が反転しました。

「また明日」という約束。

その「明日」は、もう来ないのかもしれません。

次回、第2章 第7話。講堂で待ち受けるものとは――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ