118 決戦(物語はこの話で終了です。詳しくは本文の後書き)
木々が鬱蒼と生い茂る森の中。再び、テモネ山の崖の前にやってきていた。
俺とポックル、リリアは並んで歩き、一直線にセミヅクがいる場所まで進んで行く。またしてもアウラが召喚されていたようで、野獣のような風貌の隣に立っていた。
そのすぐ近くではやはりセミヅクの娘が魔法を行使している最中である。彼女の後方には緑大蛇ギルドメンバーが気絶して横たわっていた。
セミヅクが気づいたようでこちらを振り返る。馬鹿にしたように笑った。
「おっ! 虹小僧、また来たかー! 今度はポックルも一緒かあ? 傷はどうしたんだ?」
俺は質問に答えず、周囲に声をかけた。
「おいポックル、俺がセミヅク師匠をやる。お前はあの青い液状の女をどうにかしろ」
「分かったよ! だけどナナキ、負けるなよな」
「当然だ!」
「あたしはどうすればいいんだ?」
リリアが聞いた。
俺はちらりと振り返り、親指を立てる。
「リリアは俺と一緒にセミヅクをやるぞ」
「お、オーケー」
敵がもうすぐそこに迫っていた。
セミヅクは唇を引き結び、隣の青い女に命じる。
「アウラ、やれ!」
「アナタ、ワカッタワ!」
アウラがこちらへと走ってくる。右手を振り上げた。その手のひらの上に青い水の塊が生まれる。あれに当たったらヤバい!
俺は鞘から剣を抜きつつ、
「みんな、避けろ!」
しかしポックルは真っ直ぐに走り出した。おい待て!
「俺に任せろう!」
「ソーレ!」
青い液状の女が右手を振るう。水の塊がこちらへと飛来した。
ポックルが唱える。
「空七変流、天の川!」
彼はなんと、水の塊を両手で抱いて後ろへ投げ飛ばした。
瞬間夜になり、空に帯状の星々が広がる。
ドボォォン!
背後では水の塊が地面にぶつかり、巨大な炸裂音を立てていた。
ハハハッ、こいつ無茶しやがる。
俺は軽快に笑った。
「リリア、行くぞ!」
「分かった!」
二人が走り出す。アウラを躱してセミヅクのいる方へと駆けていく。
セミヅクの額に嫌な汗がつたっていた。舌打ちを打つ。
「ちっ、三人がかりかよお! だけどなあ、俺に勝てると思うなよお前ら!」
彼が抜刀術を唱えた。
「空七変流、群青」
「空七変流、雨模様」
俺は叫んで踏み込む。カウンターのタイミングで左肩からタックルを繰り出した。
夜が終わり、空から雨が降って来た。
「ぐっ!」
タックルを受けたセミヅクが苦しそうにうめく。俺はその場で横に一回転し、下から剣を振り上げた。
「どおりゃああああっ!」
「この野郎!」
セミヅクが後方へと飛びのく。俺の剣が彼の額を薄く切った。そこから血が噴出する。
リリアが前に出た。
「空七変流、虹空!」
「空七変流、雨上がり」
セミヅクが鞘を左手に持ち、二刀流の構えでリリアに襲い掛かる。彼女の刃を弾き、右手の剣で首を狙う。
俺は一歩踏み込み、セミヅクの剣を防御した。
カーンッ。
セミヅクは大きく横に跳んだ。そして顔を歪める。
「おいおいおいおい! 二人がかりなんて無いだろう! この卑怯もん!」
「なんとでも言え!」
俺は言葉を短く切る。
リリアと顔を合わせた。
「リリア、同時にやるぞ」
「オーケー!」
二人が両手に剣をゆったりと構える。
セミヅクは顔に脂汗を浮かべて、それから唱えた。
「空七変流、青の惑星」
俺とリリアが同時に唱える。
「「――空七変流、虹空!」」
二人の剣がセミヅクの蒼穹を巻き上げた。
スパーンッ。
天空に大きな大きな虹が立つ。
彼の両手から剣が離れて、空中を舞った。
その喉元に俺は剣を突き付ける。
「師匠、チェックメイトです」
そのまま喉を切り裂く。
瞬間だった。
「ファイアーボール!」
ゴォッ。
顔を向けると、セミヅクの娘が男爵級火属性魔法を撃ってきていた。
俺は慌てて回避する。
「おっと!」
セミヅクが娘に走り寄り、彼女の腰を持ち上げた。
「ソラヨミ、撤退だ!」
「パパ、逃げるの?」
「飛ぶぞ!」
「え!?」
セミヅクは何と、ソラヨミを抱いたまま崖からジャンプした。下の森へと落下していく。
「おいっ!」
「マジかよ!」
俺とリリアが叫んで崖の下を見る。セミヅクは地面に着地して、森の中へと走っていく。そして木々の合間に消えていった。
くそっ、逃がしてしまった!
空中の月を見ると、宇宙へと戻っていくところである。月落としは中断されたようだった。
……とりあえず良かった。
振り返り、ポックルの様子を見る。
彼は地面にアウラを抑え込んでいた。空七変流、常闇(三角締め)を決めている。その青い液状の女もばしゃんと溶けて地面に水たまりを作った。
リリアが焦って聞いた。
「ナナちゃん、どうする!?」
「とりあえず、王都へ戻ろう。月はもう落ちないみたいだから」
「そうだな。あー、スカッとしたぜー。大勝利ってやつだ」
「そうだな!」
ポックルがこちらへと早足で歩いてくる。そしてその場に寝ている緑大蛇ギルドのメンバーたちの体を触った。
「おい、お前たち、大丈夫か?」
「ぐ、うううぅ」
「ぽ、ポックル、様?」
ギルドメンバーたちは苦しんでいるが、無事なようだ。
それから俺たちはソラヨミの魔力燃料となっていた男たちを介抱し、ロッジのベッドまで運んであげた。
こうして、王都を襲った月落とし事件は幕を閉じることになった。
ポックルをロッジに残して、俺とリリアは王都へと帰宅する。その際、ここまで運んでくれた馬を少し探した。しかし馬はどこか遠くへ行ってしまっていたようで、見つからなかった。まあ、後で王都騎士団に頼んで、捜査して捕まえてもらうことにしよう。
◆◇◆
後書き。
こんにちは。お世話になっております。どうも雨音です。
ここまで読書をしていただき、どうもありがとうございました。ポイントやPVを見た感じ、全然ウケて無いですね(笑)。なので、この物語はこれでおしまいにしようと思います。
みなさんにウケるようなアイデアを練って、また再挑戦しようと思っています。どうか、これからも見捨てずに、また足を運んでやってくださいませ。
感謝。




