年賀状配達員ロイドの冒険
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』の投稿作品です
くそっ、どこのバカ神が迷宮のボスをこんな深い場所に配置しようなんて決めたんだ⁉
階段を降りながら毒づく。左手には「新年優先配達」と書かれた封筒、右手には今にも息絶えそうな懐中電灯。
俺はロイド。次元間統一郵便局の平凡な配達員で、勤続十年、社会的地位はゼロ。そして、こう言い切れる唯一のバカでもある。「ええ、どんな場所でもどんな郵便物でもお届けします」
今回の依頼主はレディ・カリストラ。深淵の女帝、紅き裂け目の統治者、その他諸々の肩書きを持つお方だ。登録用紙には肩書きの最後に「等々」って書いてあって、初めて見た時は笑ってしまった。でも、領収書書く度に心の中で感謝してる。
四十七階の広間に着くと、紫と赤に輝く扉を押し開けた。二メートル半の威圧的な存在感、紫水晶のような肌を持つカリストラ様が、顔も上げず書き物を続けながら言った。
「また新年に私を殺しに来た冒険者なら、窓から投げ捨てるわよ」
「いえ、お嬢様……」声が震えないように必死だった。「配達員のロイドです。年賀状をお持ちしました」
彼女が顔を上げ、笑みを浮かべた。
「あら、ごめんなさいロイド。あなただって気づかなかったわ」
「お気になさらず、お嬢様!」封筒を指の間で整えた。「冒険者たちが休息中に押しかけてくるなんて、さぞかしお仕事の邪魔でしょうから」
彼女の笑い声が壁に響いた。封筒を差し出すと、驚くほど繊細な手つきで受け取った。
「ロイド、あなたって本当に面白いわね!」封筒を眺めてから、もう一度俺を見た。「で、どこにサインすればいいの?」
くしゃくしゃの紙とペンを差し出した。彼女は紙を見て、俺を見て、また紙を見て、ため息をついた。
「来年もまた会えるかしら?」
「多分! 首が胴体に繋がってればですが」
カリストラ様はまた笑い、サイン済みの受領書を返してくれた。
「いい加減、私と結婚してくれればいいのに、ロイド。そうすればこんな仕事しなくて済むわよ」
頷きながら、背中のリュックを調整した――全身の筋肉が温かいベッドを求めて悲鳴を上げていた。
「そうしたら誰が毎年、年賀状を届けるんですか?」
礼儀正しく微笑み返して、背を向けて出口に向かった。背後から声が響いた。
「良いお年を、ロイド。また来年ね!」
「良いお年を、レディ・カリストラ様」呟きながら、五時間の上り階段を思い浮かべた。「年賀状に良い知らせが入ってるといいですね」
はじめまして。私はブラジル人の作家と申します。
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