表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

クリエイター減反法が可決しました!

作者: 金鹿 トメ

米農家とクリエイターを並べて比較してる様子なので

なら本当に同じ扱いされてみろや! という思いで書いた実家農家の字書きです。スナック感覚でどうぞ!


6/11追記

中途半端なとこで終わってたのを何とか完成させました。


本来のプロットだと街にAI絵が溢れる中、非合法になっても手描き絵を作り続ける……というちょっと救いのある感じでしたね。

つまり、ここに書いてあるということはだいぶ変わってるということです。

気になる方は本編をどうぞ。

「クリエイター減反法が賛成多数で可決しました」

「これは表現規制につながる動きです! 許してはなりません」


「陰謀論系の配信者がなんか言ってら」


絵描きの息抜きになるかとたまたま開いた動画を閉じる。

そしてその配信者のデザインは気に入ったので。

着ているパーカーだけをパク……参考に私は赤い髪の女の子の絵を完成させた。

そしてSNSに上げる。

今時珍しい物理キャンバスの絵に、いいねがどんどん増えていった。


クリエイター減反法はAI推進派こと陰謀論界隈での呼び方だ。

正式名称は「資源効率推進法」

俗称「もったいない法」が可決された時。世間の反応は大きくなかった。


「もったいない精神を法律にしたんですね。いいと思います!」

「日本人の精神を法律にしたという訳ですね」

「人、モノ、そしてインターネット。すべてを効率的に利用するために必要だと思います!」


反対派なんてエロい絵を愛好する上に犯罪上等で人の物を盗む集団だ。

彼らがどんなに叫んでも耳を傾けられることは無かった。


「まあちょっと可哀想だけど仕方ないよね」


日頃の行いが悪い。

私は絵も描いてるけど、成績だってそこそこいい。

だから美大に行けなくてもそれなりのホワイト企業に就職して、その企業の中の文芸倶楽部の中で趣味で絵を描いていけばいい。

上手くデビューできるならそれで終わりだ。


そう思っていた。

あの時までは。



***

その日から数カ月。

日常を続けていた私に災難が降ってわいた。


「どういうことですか? 美大に推薦出来ないって」


あんまりです!

私は先生に向かって喰ってかかる。

私以上に絵が上手い人が居たのか?

けどそんな話は聞かない。

成績だって悪くないはずだ。


先生は言った


「残念だけど、成績がいい子は美大に行けなくなったの。次の模試を0点通過するって約束ならなんとかするけど」


成績がいいから推薦できない。

意味が分からなかった。

呆然としていると先生は言う


「資源効率推進法で決まったの。絵師になるには無産でなきゃならないってね」


「まず第一に学校の成績が悪い事。そして特定の分野での活躍が無い事。この二つの条件を満たさなければ日常的に絵を描くことが許されません」


意味が分からないでいる私に先生は追い打ちをかける。


「無産じゃない人が絵にかけられる時間は一日一時間まで。それが資源効率推進法での義務。罰則は……腕を切られるわ」


「……冗談ですよね?」


「私もそう思っていたのだけど」


先生は左手を差し出す。

いや、正確に言うならば左手が付いていたであろうくるぶしを差し出した。


「……教員は本来免除されるんだけど届け出を忘れちゃってね」


言葉だけなら信じなかったろう。だけど目で見てしまったのなら。

信じるしかなかった。


「つまり……絵しか描けなくなるか。絵を描けなくなるか。そのどっちかってことですか?」


先生は頷く。

そして言った。


「よく考えて選ぶのよ」


***


家に帰るとすぐ、資源効率推進法の中身を見た。

その条文は一つの原則と三つの要件で成り立っている。


原則

資源を効率的に消費するため以下の三条を定める。


一条

物理的な絵を描く人間はクリエイター免許を取ったものでなければならない。

クリエイター免許は国が1000人に発行し、毎年資格を問わねばならない。


二条

インターネット上で電子データのみで絵を描く人間も、手描き免許を取ったものでなければならない。

手描き免許は国が一万人に発行し、半年ごとに資格を問わねばならない。


三条

絵を描く人間は他に何も出来ない無産であることを証明されなければならない。

よって働いても居ないし学生でもない「ニート証明書」か、学校、会社の発行する「無産証明書」が無くてはならない。

不携帯の場合は別途定めた法で罰する。



***


私は翌日。学校に無産証明書の手続きを申請しようとした。

だが簡単にはいかなかった。


「模試が終わってからでないと受け付けられない……?」


左手の無い先生は言う。


「言ったでしょ。無産の証明ってことは無産じゃなきゃいけないのよ」


成績だけなら何とか低くつけることは出来るけど。

テストの点はね。

一週間待ちなさい。

一週間後なら推薦してあげられるから。


そう言われてしまっては納得するしかない。

けど私には時間がなかった。


あの後、私は現状を調べた。

クリエイター減反法の対象になったイラストレーターはプロだけでも5000人を超えているらしい。

アマチュアも合わせるととんでもない数だ。

例えば有名な発注サイトの登録絵師は16万人あまり。

そのサイトに登録していない絵師はもっといるかもしれない。

つまり。倍率はざっと16倍だ。


「16人に一人」


不安からぽつりとつぶやく

つまりだ。

自分以外の15人を蹴落とさねばならないのだ。

同じ絵を描く同志である絵師を。


「大丈夫。やることは今までと同じだ」



相手よりもいい絵を描く。

それで話は終わりだ。


そして私にはもう一つ手があった。

なるべくなら使いたくなかったけど仕方がない。


「どうしても絵師になりたいんだもん。仕方ないよね」


***



クリエイター減反法と共に可決した法案がある。


正式名称は「創作行為効率化法」

通称「AI絵師法」

中に書いてある条文は長くても意味するところは簡単だ。

「無産証明書を持っていない人間はAI絵師になりなさい」

ということだ。


クリエイターになれなかった人間はもれなくこの法案の対象となる。

簡単に言えばAIに命令することで絵を描くのはクリエイティブじゃないのでやり放題なのだ。

一日の制限時間とも無縁。仮にAI絵に創作性があると認められても生成にかけた時間分しかカウントされない。

つまり創作性が認められた絵の一枚ごとに数秒。


ほとんどの絵に創作性が認められることはなく。まもなく町はAI絵師の絵であふれかえった。


模試で無事に0点を取り、無産証明書の手続きを済ませた日。

私は前々から準備していたある行動を実行する。


「クリエイター免許と手描き免許を両方持ってて、さらにSNSに日常的に投稿しているのは30人ぐらい。そして……絵を上げてるのは3人ぐらいか」


3人だけというべきか。

まだ3人も残っていたのかというべきか。


とにかく私は作戦を実行する。


足のつかないところから購入したスマホで、これまた購入済みの捨て垢を都心の駅にある公共のWi-Fiから起動し。私は書き込みを始めた。



「この人。AI絵師じゃないですか?」


3人とも反応はない。

信者が釣れたが無視した。

ここまでは想定通りだ。

続いての投稿はこれだ



「AI絵師は免許無くてもできるのに……酷くないですか?」



当然無視。

信者が寄ってくる。

続いての投稿が本命だ。


「この絵。AI絵ですよね? 国に届け出ましたか?」


少しでも崩れている適当な絵を引っ張って来て不自然な部分を拡大表示する。

この程度の崩れなんて絵を描いてれば時々あるし。

指の本数だって案外間違える。

むしろ沢山描いていればいるほど間違えることなんて当たり前だ。

そこをついていくのだ。


「嘘……AI絵だったの?」


熱心に私を否定するリプをしていた信者。

その一人が動揺したようなことを言い出した。

ここから崩していく。


「私も絵を描いているんですけど……手描きにしては不自然ですね。本当のところは本人に聞かないと分からないけど」


さりげなく本人にリプするよう誘導する。

分かりやすい批判はしない。

なぜなら分かりやすい批判は信者の結束を生むだけだけで無意味だから。

こういう時は疑念の種をまいていくだけでいい。


芽を出すかどうかなんて勝手。私は種をまいただけなのだから。

ミントの種を蒔いたって有罪にはならない。

発芽したミントが悪いし、育てた人間の方がもっと悪い。


まもなく。3人は問い詰めてくる信者の対応で右往左往することになった。

精神的に負担をかけて試験対策にかける時間を減らすのが目的だったのだけど。

そして運よく一人が自白したのだ。


「確かにこの絵はAI絵に加筆したものです」


つまり加筆しているのだからAI絵ではない。

という主張だったが……。


その絵師のクリエイター免許と手描き免許が取り消されるのに時間はかからなかった。



それから1か月後。

無産証明書と共に送られてきたのはクリエイター証明書と手描き証明書だ。


私は絵師になれたのだ。

これで夢はかなった。



嬉しくなって証明書をSNSに上げる。

私を祝福してくれるリプの中に一つだけ不穏なものがあった。



「これAIで作った贋作ですよね? 私の持っているものと違いますよ? そんなことして恥ずかしくないんですか」




***



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ