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第17話 牢屋でぐへへな撮影?


 次に来たのはフロア内の一角が牢屋になっているスタジオだ。


 牢屋特有の金属の柵が縦に伸びた鉄格子は細い隙間でびっしりと立てられ、通り抜けることもできなさそうな細さだ。

 横には出入りする為に開閉できる柵がある。薄暗い照明がまたその雰囲気を演出する。


「牢屋なんて初めて見た」


 現代日本で普通に生きていたら入ることはないであろう場所である。


 もちろん今の日本でも刑務所や豚箱といった場所ならばこういう牢屋も存在するのだろうが、普通に生活していたらお世話になることなんてまずないだろう。


「ここなら敵に捕まったユニーの悲壮漂うシーンが撮影できると思うの!」


 こんなまさにそんなシチュエーション撮影にうってつけなスタジオもあるのか、とこのスタジオの種類には衝撃だ。

「江村、あたしが中に入ったら、牢屋の鍵をかけてくれない?」

 牢屋の扉には横に棒を差し込んで施錠する鍵がついており、本当に鍵をかけることも可能になっている。


「えっ、撮影のためにそこまでするのかよ」


 出入口の鍵がかかっているかどうかなんて写真ではわからないことなのになぜそこも再現する必要があるのだろうか?


「こういうシーン再現ってのは実際に演出する為には写真ではわからなくても、鍵がかかっている方が演出的には忠実に再現できるのよ。実際に被写体が閉じ込められたって雰囲気を味わった方がより一層悲壮感出るでしょ」


 シーン再現をしたいという小宮の情熱は本物だ。


「わかった、じゃあそこまで言うなら鍵かけるぞ」


 小宮が牢屋の中に入ったことを確認すると、鉄格子越しにしか姿が見えなくなった。


 俺は入口の扉を閉めて端にある南京錠の棒を鉄格子間に通らせて鍵をかけた。


「OK! シーン再現はばっちりね」

 牢屋の中に入った小宮と鉄格子越しに会話する。


 こうやって実際に鉄格子を挟んで話すとまるで囚人との会話シーンを再現している気持ちになる。


 鉄格子の中にいる小宮はまるで檻に入れられた哀れな子犬に見えた。なんだかこうして見ると滑稽な風景にも見えてしまう


これは一種の監禁プレイなのではないだろうか、と俺はなぜかドキドキしてきた。


 実際にアダルト系のDVDなどではこういったプレイがあるのではないだろうか……とそんなことを考えてしまう。もちろん十八歳以下の俺はそんなものは実際に見たことはないが


 鉄格子の奥の小宮はさっそく撮影の指示を出した。


「じゃああたしがここに座り込むから、江村はそれを撮影して。敵に捕らえられた檻の中のユニーを再現するのよ」


 敵に囚われた、という響きになんだか危険な香りを感じてしまい、俺はますますドキドキした。


 きっとアニメの実況コメントならば「ぐへへ」とか「薄い本が厚くなる」など変態的なコメントが書き込まれそうなシチュエーションである。


 そんなやましいことを一瞬考えてしまったがここではカメラマンだ、そんな妄想をしてはいけない。


 小宮は牢屋の隅に体操座りのようにうずくまり、顔を膝につけた。


 座り込んだ際、体操座りで足を前に出して組んでるので当然ながらスカートはまくしあげられる形になる。スカートからちらりと除く太ももが見えてしまっている。


二―ソックスとスカートの間の絶対領域がまたよく見えるのだ。

って、さっきから何見てんだ俺!


 これではスカートの下も見えてしまうのでは…と一瞬考えたがそこは小宮もきちんと配慮をしているらしく、下に黒いスパッツを履いていた。


 なるほど、こういった撮影の際に下着が見えてしまうからコスプレイヤーはみんなコスプレ用の見せパンを履いているのか、と納得した。


「ちょっとー、早く撮ってよー」


 うずくまっていた小宮は顔を上げて俺に言った。


 そうだった、撮影するのが目的でのシーン再現だった、その雰囲気を味わっている場合ではない。


 まさにサタンフォーチューンの本編で牢屋に入れられたユニーの悲壮感が漂うシーンが忠実に再現されている。


 牢屋のスタジオは本物の牢屋らしく、ライトが暗めに設定されているのがまた臨場感を醸し出すのだ。


「じゃあ撮るぜ」

 小宮は再び顔を膝にうずめ、うなだれるユニーの構図になった。


 俺はシャッターボタンを連射した。


 牢屋の静まり返った空気にパシャパシャというシャッター音だけが響いた。


「オッケー。撮れたぜ」


 俺の合図に小宮は顔を上げて立ち上がる。


「じゃあ次のところに行きましょうか」


 俺はついさっきまでのスタジオ移動の癖でそのまま小道具を持って移動する姿勢に入った。


 すると牢屋の中から抗議の声が上がる。


「ちょっとー。撮影終わったんだから早く牢屋の鍵、開けなさいよ。出られないじゃない」


 小宮は鉄格子をつかんでガシャガシャと鳴らした。


 これでは本当に囚人である。


「あ、そうだった」


 撮影の雰囲気を出す為に牢屋の鍵をかけていたことをすっかり忘れていた。

 俺は慌てて鉄格子の鍵を外した。




 その後も色々なスタジオを周って撮影をした。


 やはりコスプレイヤー利用者が多く、他のスタジオを周る際にもいろんなグループとすれ違った。


 二人から三人組という少人数で来ているコスプレイヤーのグループもいれば、十人という大人数で来たグループもいたり、やはり俺達のようなソロ撮影でレイヤー一人、私服カメラマン一名といった二人組の組み合わせも見た。中にはコスプレイヤー同士で片一方がカメラを担当してもう一人が被写体になることを交代交代でしているグループも見かけたのだ。


 そしてやはり利用客層は女性も多かった。


 他にも寝室のような部屋や台所みたいなスタジオもあり、いろんなシチュエーションで撮影しようという小宮の案により様々な撮影をした。


 やはりサタンフォーチューンという同じアニメを好きな者同士の組み合わせなのでこういうシーンもありそうだ、や捏造のシーンを撮影したりでそれもなかなか楽しいものだった。


コスプレスタジオは色んな世界観や時代を再現したスタジオがあって、昔コスプレ撮影会にカメラマン参加した時にどこのフロアも本当に二次元の世界に入ったかのようなリアルさがありました。その経験を思い出しながらこのお話を執筆しました。

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