第14話 コスプレ撮影、付き合うよ
その晩、俺は机に向かってうなっていた。
なんとかして小宮の特技を生かす方法、それがわかればアニメ研究会に誘うのも自然になるかもしれない。
しかしその方法は思いつかなかった。
その時、スマホに通知音が入った。
小宮からだ。
「今日のコスプレどうのの話とかは、あたし以外の人にしゃべっちゃダメよ。秘密だからね」と釘を刺す文面だった。
やはり小宮はあれは自分だけの趣味としてひっそりと楽しみたいのである。
みんながみんな趣味をオープンにしたいわけではない。
俺は小宮とのやりとりでなんとなく今日の話題を出した。
「朝、スタジオ撮影はカメラマンがいればできるとか言ってたけど、俺がカメラマンやるって言ったら……できるか? なんてな」
冗談を混ぜてわざとそう返信する。
すると、突然スマホが鳴り響いた。小宮からの着信である。
文面でいいだろうになぜ通話が必要なのかと思いながらも俺は出た。
「あたし、やりたい!」
まず通話で一言目の台詞がそれだった。
「スタジオ撮影! 協力してくれるなら、その話、受けるわよ!」
その小宮の声は少々興奮が入っていた。
「マジか……。そんなにスタジオ撮影やりたかったのか」
「もちろんよ! ずっとSNSとか見てて憧れてたんだから! 今まで仲間がいないからできなかっただけで、あんたが協力するならすぐにでもやりたいわ!」
小宮はその勢いで話を続けた。
「でも俺、カメラっていうとスマホしかもってないぜ。あとは親のデジカメ借りるくらいしか」
よくイベント等でコスレイヤーを撮影するカメラ小僧・通称カメコと呼ばれる人たちはレンズの長い立派なカメラを持っていることが多いのを知っていた。
とてもだがスマホや安いデジカメ等ではそういう撮影に向いていないのではないか。
「問題ないわ。あたしコスプレ撮影用の一眼レフ持ってるからそれを貸すわ! レイヤーとして持っておくべきだろうと用意しておいたのがあるから! いよいよ使える時だと思うと買っておいたかいがあるし」
なんて用意周到なんだ。仲間がいない、といっておきながらすでにそういった道具を持っているとは。そこからすでに小宮のコスプレに対する本気度が伝わってきた。
話はまとまり、今度の日曜日にコスプレスタジオで撮影会をすることになった。
急にコスプレ撮影会をすることになり、しかも自分がカメラマンという重要な役割を受け持つことになり、俺は少しでもカメラマンの知識を入れておいた方がいいだろうと、本屋でカメラのうまい撮り方の本を買ったり、ネットで調べたコスプレ撮影のマナーのページを見たりと勉強した。
その他にできることはコスプレSNSを閲覧して実際にネット上にアップされているコスプレイヤーのスタジオ撮影の写真を見て。スタジオではどういった撮り方がいいのかなどを自分なりに研究した。