出会い.1
「翔ちゃん翔ちゃんこれ覚えてる? 懐かしくない?」
「うわ! 懐かしいな! 一緒に寝てる写真じゃん。 小学生の時だっけ? これ」
「そうそう。 5年生の時だよ。 翔ちゃんが転校してきたばかりの時」
ボクと翔ちゃんは、小学生の時に出会った。
翔ちゃんは、夏休み前に転校してきた。
あのころはたのしかったなぁとかんかえていると。
「思い出した! 夏祭りの日だ! 浴衣着ていくーってお前泣いてたんだよな」
「えーそうだっけ。 泣いてたのって翔ちゃんじゃなかった?」
「いや、俺じゃないって。 お前がどうしても浴衣がいいって駄々こねてたんだって」
「違うって、覚えてないの?」
ボクと翔ちゃんが出会ったのは、小学5年生の夏。翔ちゃんが、転校してきた。
始めて転校生が来ると言うことでクラスのみんなが、ソワソワしていた。
どんな子だろう。イケメンかな。と言った具合に。
「はい。 えー転校生を紹介する。 入ってきなさい」
先生に促され入ってきたのは、ちょっと乱暴そうな子供だった。
「羽田翔太郎」
たった一言だけ名前だけ言った。
「えっと、それだけかな。 羽田翔太郎くんだ。みんな仲良くするだぞ」
先生はまわりを見渡して、「窓側の1番後ろにあるからそこに座りなさい」と言った。
翔ちゃんはボクの隣の席だった。
「よろしく翔太郎くん」
「・・・」
無視された。
「翔太郎くん?」
「っち」
舌打ち。
「翔ちゃん?」
「話しかけんな」
二度と話しかけないと、決めた。
クラスのみんなは、翔ちゃんと話したがっているけど、翔ちゃんは、いつも不機嫌そうにしているだけだった。
翔ちゃんが転校してきてから1週間が過ぎた。
翔ちゃんは授業が終わると決まって教室から出ていく。
どこに行っているのか気になったボクは、気付かれないようについていった。
翔ちゃんは、キョロキョロとまわりを見渡して道に迷っているように見えた。
転校してきたばかりで、いつも1人でいる翔ちゃんに教室の場所を教える子はだれもいなかった。
ボクは、翔ちゃんにバレないようにこっそりと教室に戻った。
ボクも、初日の態度から話しかけることをしていなかった。
それから1週間後、翔ちゃんは学校に来なくなった。
だれとも話さないで、2週間過ごすことは翔ちゃんには苦痛だったのだろう。
「楓くん」
下校時間に先生に呼び止められた。
「翔太郎くんに、プリントを届けてくれないか」
「ボクがですか?」
嫌そうな顔をしてしまった。
「断ってもいいんだがな、家が1番近いんだ」
確かに、ボクは翔ちゃんと家が近い。
投稿中にも何度か翔ちゃんの姿を見ていた。
「別に、いいですけど」
郵便受けにでも入れておけばいいだろうと考え、ボクは受け取った。
翔ちゃんの家は予想よりも近かった。
いや、近いと言うより隣だ。
郵便受けに入れ、そのまま立ち去ろうとすると、
「きみ! もしかして、うちの子と同じクラスの子?」
後ろから声をかけられ、振り向いた。
「えっと」
言葉に詰まっていると
「あぁ、こめんねぇ。うちの子翔太郎何だけど知ってる?」
「同じクラスの「あっ!楓くん?一回だけ翔太郎から聞いたことあるわ!」
「そうなんですか?」
ボクの名前知っていてくれたことに驚き。
「上がってきなよ!翔太郎も喜ぶわ」
さぁさぁと言われ断れないと思ったボクは家の中に入っていった。
「翔太郎呼んでくるからリビングで待ってて。 翔太郎!楓くん、来てくれたよ!挨拶しな!」
翔ちゃんママが、呼びかけると
ガタッ、と2階から聞こえてきてそのまま足音がドタドタっと聞こえた。
扉が開き「何しにきたんだよ」と言った。
2週間ぶりに会った翔ちゃんは、今まで寝ていたのかパジャマ姿で少し寝癖がついていた。