第6章 アヒルのアヒージョ
異世界ウォーリン、西の大陸ハブフベルにて。
僕は1匹のアヒル。名はアヒージョと僕に餌をあげてくれる老人が名付けた。
兄弟たちが寝ている途中に、僕は群れからこっそりと抜け、老人が教えてくれることに耳を傾けた。
僕は老人に「言葉」を教えてもらい、そして、"言葉"を理解した僕は、老人が貸してくれた本で沢山読書した。
読めない文字は、辞書を引いて調べるようにもなった。
読んでもわからないことは老人が教えてくれた。例えば数学なんかは、文章だけでは到底理解できなかったが、老人の教え方は素晴らしく、そして知能が高くなったと同時に同じに、群れていることに違和感を感じた。
生後4ヶ月の僕は、群れから離れる決心をした。
兄弟たちとの別れ、母との別れに寂しさはあったが、少なくとも僕には夢があった。
"人間と対等になりたい"
僕は群れから抜け出し、村に来た。
そして、最初の村に入った僕は、沢山の罵声と暴力を浴びた。
知能があってもアヒルは、アヒル。
しかし、そんな僕を庇ってくれる少女セナの姿があった。
セナは、僕を可愛がってくれた。
喋れるアヒルという変わった存在、迫害、差別の対象である僕にどうしてこんなに優しくしてくれるのかは、僕にはわからなかった。
そして、セナの父親であるファクタは、僕に武術や剣術(剣は口に咥えた)、そして戦い方や呪文の使い方を教えてくれた。
僕は生後8ヶ月にして、スライム1匹は倒せるほどの"戦えるアヒル"になった。
そして、この村"エスペニル"にランズワール公国の上級騎士ルワニーが来た。
「私はルワニー。君を我が軍セントスターズの兵士として君を迎え入れたい」
僕は、セントスターズの一員となり、隣国のメサルン王国の襲撃から国を守ることとなった。
そして、僕が属する小隊の名前は「ダックス」という名前で、弓使いが3人、斧使いが5人、剣士が10人で構成されており、ルワニーの推薦もあって僕は小隊長となり、ダックスの隊員に指示を出した。
「弓使いは、弓に超光の魔剤を塗って敵を混乱させろ。
そして混乱しているうたに斧使い5人が一斉に襲撃。
そして、敵軍の軍事力が弱まった時に剣士が一気に出撃。敵軍隊の隊長を倒し、白旗をあげされる。」
僕に対し剣士のファリエルは言った。
「しかし、僕たちはただの剣士に過ぎません。勝てるかどうかわからない戦いをするなんて賭博と何一つ変わらないと思います。」
「剣を差し出せ!」と僕は強く言葉を発した。
そして、それぞれの剣に、砕石し、粉状にしたエルル・ヴァラダスを振りかける。
「この粉は、神の魂の入っている伝説の鉱石エルル・ヴァラダスを砕石し、粉末状にしたものだ。これをつけて戦えばどんな剣でさえ無敵の魔力を持つようになる」
そして戦闘は開始された。
セントスターズの小隊は次々と敗れていく。
しかし、3隊ほどが撤退し、ダックスは、出撃した。
そして弓矢セシリルの放つ超光を放つ弓に目をくらませたスキに斧使い3人が一気に突撃。そして、剣士のロンドが敵軍の剣士100人を切ると、敵軍は撤退し、その後白旗を上げたことの情報が入った。
白旗を上げたメサルン王国をランズワール公国が植民地とし、戦争は終結した。
僕はティエル公爵から、次期公爵の候補となったらしく、そして僕はランズワール公国の英雄と言われるまでなり、ついに「アヒル」の市民権獲得に成功した。
そして、一回は、離れた家族達に会いに行こうとエスペニル付近にある川に向かうと、そこに1匹のオークによって食い殺された家族達の姿があった。
僕は怒りに燃えていた。
そして、オークに思い切り突進した。
1匹のオークは死んだが、他のオーク達が残ってる。
僕は殺された家族の恨みを晴らすため、風の魔法「ウィンドル」を放つと、風のナイフがオークの胸に突き刺さりオークは全滅した。
「魔物が増えたな…」
僕はとあることを思い出した。
それは歴史書に書かれてあったこと。
"かつて繁栄していたゴルディアン王国が、魔物達の達の集団ジリア族によって滅ぼされ繁栄の歴史に終止符を打った。
しかし、エルルヴァラダスを持つ勇者によってジリア族は、討伐され、ゴルディアン王国はかつての栄光を取り戻した・・・"と。
歴史が繰り返されるとしたら、
そんなことを僕は考えると少し頭が痛くなってきた。
そして、ランズワール公国へと僕は帰ることにした。
その後僕は城の寝室で眠ることにした。
僕の寝室にはたくさんの本があり、それこそ君主制に関する書物や、哲学書、辞書、医学書、ならびに歴史書や呪文や呪術に関する本など多岐にわたって本があった。
僕はただ本を読んだ。
"文字"を知ってることにより、とにかく僕は学ぶことに徹した。
ランズワール公国の次期公爵候補となった僕は、国発展や、様々な発展途上国やそして文化の発展していない村の統治。
僕は小さな野心を胸に抱いていた。
世界を自分のものにしたい。
世界中の民からもてはやされたいという、強いエゴが自分の中に宿っていた。
しかし、ひたすら統治をして拡大し続けていくのにも無理がある。
そして、ランズワール公国の南にあるソンベルト大陸にあるソルバタールとの貿易を行いたいと考えた。
現在はソルバタールの有する"香辛料"の貿易を図るため、ティエル公爵に"貿易"を提案した。
そして、ランズワール公国の船がランズワール公国の農作物である"ヤーガ"を乗せて出航した。
僕はティエル公爵と他の諸外国との自由貿易を提案したが、残念ながらこのアイディアは見送られた。
しかし、ある日を境にティエル公爵は僕に頭を下げて公爵の地位を譲りたいと申すようになった。
たしかにティエル公爵は無能だし、おそらく僕がいなかったら今後戦争をしたところでランズワール公国は負け続けることが目に見えている。
僕は魔剤を調合した武器や、新たな兵器の開発、また兵士の戦闘力の向上にも貢献しており、僕なしで発展が難しいのはわかる。
しかし、僕だってやりたいこと他にもある。
それに僕の寿命は、長くても10年ぐらいだ。
10年という短い人生で僕はやりたいことが沢山あるんだ。
行きたい場所だってあるし。
こうして、僕が実質的な実権を握ってから、2か月の月日が流れた。
国外との貿易は盛んとなり、2か月という短いスパンでランズワール公国は著しく発展し、近代化と呼ぶにふさわしい状態となった。
しかし、北の国ザンベルトから、スワーヒという草を輸入するようになってからどうも国民の様子がおかしい。
スワーヒの成分を分析した僕は、このスワーヒは、適量であれば鎮痛・鎮静作用が認められるのだが、スワーヒをある一定の量以上摂取すると眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えたような感覚になるらしいのだが、依存性があるらしく、また副作用もあるらしい。
のだが、スワーヒによって、消費活動が活発になれば"タンス預金"の状態からは、回避できるようになるし、経済循環が見込めることから、僕はスワーヒの使用を止めようなんて考えなかった。
それにそういったことを国民に伝えたところで既にスワーヒ依存症に陥ったものを救えることは、できないと僕は認識している。
しかし、北にある国ザンベルトは、気にかかる部分がある。
僕はザンベルトに向かうことにした。
そして、2か月にわたる渡航の末、ザンベルトに辿り着くと、そこにはオークやエルフと呼ばれる魔物達が切磋琢磨と労働をしている。
魔物と決めつけて差別するのは良くないとわかっている僕はザンベルトの国王と話すことにした。
ザンベルトは独裁政権らしく、国王の気分によってオークやエルフが粛清されることも珍しくない。まさに悪魔の国と言っても過言ではない。
そして、この国王でさえも、僕には魔王に見えた。
僕は国王に自由貿易を提案したが、
それが全てのミスだったと気づいた。
ティエル公爵に、貿易の提案をした旨を伝え、ザンベルトと様々な薬草の貿易が始まった。
しかし、ザンベルトから輸入した薬草は薬草とは思えないほどの依存性や、多量摂取すると死亡するものまであり、またそういった国民の状況を鑑みたティエル公爵は、国民にスワーヒの使用を禁じたが、すると国民は、暴徒と化し革命運動が起ころうとしていた。
僕はここで、残酷かもしれないけど国民を黙らせるために暴徒と化した国民を次々とギロチンにかけ、状況の沈静化を図った。
そして、ギロチンによる殺害のみならず、民衆の前で執行人が死体をバラバラにするショーを展開したりして、恐怖政治を行うことにした。
僕はザンベルトに貿易中止を頼み込み、ザンベルトは、あっさりと承諾してくれたが、すでに時は遅し。
暴徒となった国民を抑えられることはできなかった。
僕は"魔王"を討伐し、ザンベルトをランズワール公国の植民地にして、2度と毒性や依存性のある薬草を作らせないようにしようと考えた。
そして、僕は戦士ラズーン、魔法使いのシリアル、僧侶マホエルと一緒に魔王城に乗り込んだ。
戦士が持つ剣には、エルル・ヴァラダスが含有されており、魔王を一瞬で殺せるような状態だった。
優しく向かい入れてくれた魔王の首を、戦士は切り落とした。
そして、僕はザンベルトを統治し、ザンベルトは、その後ランズワール公国の領土となり、先住民である魔物の80%を虐殺。
そして20%を奴隷にした。
魔王を殺したが、少なくともまだ僕の物語を終える気は無い。
むしろこれから始まるのだ。
そして僕は、パロス大陸をいつか手中に収めたい。
そう考えたわけだ。