第5章 さよならPear社
その後Pear社の代表取締役になった俺は、My Podに電話機能をつけたMy Phoneをアメリカのみ販売したが、孫マサキが経営する通信会社、ハードバンクにより売り出す。
またWacと呼ばれるジョヴズが過去に作ったパソコンの売り上げも好調で、ハード事業ソフト事業でも多くの売り上げを誇ったPear社を前に、俺は旅に出ることを宣言した。
「多分もう戻らないかもしれない。
ジョヴズ世話になったよ」
ジョヴズは、俺に「いつでも帰ってこい」と言った。
そして、荷物を詰め旅立ちの準備をしていると、突然電話がかかってきた。
「どうした」
「ジョヴズが亡くなった」
時が止まったような感覚に襲われた。
脳裏にトラウマがよぎる、唯一愛した人の死のトラウマが。
俺は、涙を流しながらも荷造りをやめなかった。
何度も何度もお礼を言いながら、俺は荷造りを終え、そして手紙を書いた。
翌日、俺はアメリカを出て、新天地へ向かうことにした。
長い長い旅の始まりであった。
これを読んでくれているだろうか。
旅立つ3日前に俺は林いちかに手紙を書いた。
このような内容である。
「林いちかへ
前の会社で一緒に仕事してくれてありがとうね。
あの時、ふと、本当に愛していた人の面影を感じて、その時人の優しさに気づいた気がする。
林さん、俺は君に対してきちんと礼も言えてなかった。
ただそばにいるだけで俺はとても嬉しい気持ちになれたし、Teamsで返信があるだけで俺は、涙を流すほどには嬉しかった。
多分俺が死んでも、これが永遠の別れになっても君は泣かないと思う。
寧ろ泣かないでくれ。
あと、仮に俺が死んだら、遺産は全部君に譲渡しようと思う。株も全部、経営権も。
本当に愛していた人に、それができなかったから、
だから・・・林いちかに全部託す。
君は女神じゃないかもしれない。
だけど、君は誰よりも価値のある人間だ・・・だから、だからさ・・・幸せになってね」
俺は振り返らない。
ただ、前を向くだけ、アジア、アフリカ、ヨーロッパ諸国・・・とにかく色んな地域を旅しよう。
・・・さようなら 林いちか。