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I am Aegis / Origin 2  作者: アジフライ
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第20話【その心に在るモノ】

前回の続き……

「エル……あなたの魂には神の魂が混じっている……」

神の……魂……え……?

突然の宣告にエルは困惑した。

「まぁまずは聞いて……あなた、 最近変なモノを感じる事あるでしょ? 」

「……確かにあります……」

「それはあなたの中にある力が表に出たがっているの……あなたが拒絶しているから……」

……

エルにはそのことに心当たりがあった。

と言うより、 以前から氷と炎の力の事については『あの人』からも聞いていた。

「……どうすれば……」

「流石の私もどうすることもできない……でも……あなたの求める答えに導いてくれる者がいる……あなたは何をすべきか……何をしたいのか……」

導いてくれる者……『あの人』も言っていた……でも……分からない……

エルは再びあの感情に苛まれる。

するとそれを見たカルミスはエルの額に指を当てた。

それと同時にエルの中に湧き上がる感情が収まった。

「……今は分からなくていい……じきに分かる時が来る……でも……その時は誰かを傷付けてしまうかもしれない……覚悟だけはしておいて……私にできるのはあなたにそれを伝えるだけ……」

「そう……ですか……」

……覚悟した方が……いい……か……

エルは最悪の結果を思い浮かべた。

「……今考えたって仕方ない……今やるべきはシュラスを待つだけ……」

「……そういえばルーミちゃんは? 」

すっかり忘れてた……

エルはルーミの事を聞いたがカルミスは当然知らない。

「えぇと……そのルーミっていう子は知らないけど……シュラスが何とかしてるでしょ……」

…………

その頃……

街の裏路地にて逆さ星の人間達が集まって話をしていた。

「おい……計画はまだか……」

「分からん……ダリア様の連絡が途絶えた……! 」

「凍てつく炎にある氷樹石を使って街を襲撃するはずだったろ……」

逆さ星は混乱していた。

するとそこに黒いローブを纏った謎の人物が上から降りてきた。

『……ダリアは死んだ……この街での計画は中止だ……』

その声は何人もの人間が混じっているような不気味な声だった。

「なっ……ダリア様が……」

『扉は今シュラスが対処している……奴が扉の傍にいるならもう封印を解くことは不可能だろう……』

「くっ……撤収だ……」

そう言うと逆さ星の人間達は立ち去ろうとする。

すると謎の人物はメンバーの一人を引き止め、 金貨を何枚か渡した。

「……薬物をいくつか買ってきてくれ……私は他に用がある……」

「……次の計画はいつ頃ですか……」

『追って連絡する……時を待ちなさい……』

そう言うと謎の人物は再び建物の壁を登って去っていった。

エルとカルミスがしばらく宿で待っているとシュラスが戻ってきた。

「シュラスさん! 」

「扉の件は終わった、 ここはもう大丈夫だ……」

「それは良かったわ……でも……私も逆さ星に目を付けられたでしょうね……」

「そうだな……ここから離れることを勧める……」

「そうね……」

そう言うとカルミスはエルの方を見る。

「……それじゃ……また会う時があれば……」

「……」

また……か……

そしてカルミスはその場から消えた。

「……体の調子は……」

「大丈夫です……」

……シュラスさん……もしかして全部知っていたんじゃ……

「……あの……シュラスさん……」

エルが自身の事について聞こうとすると

「カルミスから聞いたのか……」

「……知ってたんですか……どうして……」

「お前が気にしていると分かっていたからだ……お前自身が打ち明けない限りは何も聞かないようにしていただけだ」

……シュラスさん……私に気を遣って……

「……シュラスさんはどうしてそこまで……」

「……」

しかしシュラスは答えようとはしない……

「答えて下さい……どうして貴方はそこまで私に気を遣うんですか……」

「……いずれ話す……それまで待ってくれ……」

「シュラスさ――」

「頼む……」

シュラスさん……

二人が気まずい雰囲気になっているとルーミが大量の薬を持って部屋に入ってきた。

「あ、 シュラスさん! それにエルちゃん、 目が覚めたんだね! 」

「ルーミちゃん……その薬は? 」

「あぁ、 シュラスさんがお小遣いくれてね」

するとシュラスはエルの頭を優しく撫でた。

「……許せ……」

「……」

シュラスはエルに静かにそう言うと部屋を出ようとした。

「あれ? シュラスさんどこか行くんですか? 」

「あぁ……少し一人になりたい……飯は二人で楽しめ……」

そしてシュラスは宿を後にした。

「……エルちゃん、 何かあったの? 」

「ううん……何でもないよ」

街の市場にて……

「……」

シュラスは一人で市場を歩いていた。

「……ジーラ……いるだろ」

シュラスはそう呟くと隣にジーラが現れた。

「おぅ、 シュラス」

「……お前がここにいるという事は逆さ星の件だな……」

「まぁそういうこったぁ……ったく、 めんどくせぇ仕事ばかり任されて堪ったもんじゃねぇ」

ジーラは現在、 べラスティアから聞いた逆さ星の計画阻止のためにカルスターラから天星騎士団と共にジュドルアに派遣されていたのだ。

「まぁ、 もうそっちで終わらせたみたいだな」

「あぁ……手柄はお前に渡す……それでいいな」

「おぅ……それで、 本題はあの子娘の話だろ……」

そう言うとジーラはリンゴを出し、 シュラスに渡す。

「まぁ目覚めは早いな……あの様子じゃ数週間で……だな……」

「……お前に協力してもらいたい……」

「そう言うと思ったよ……とりあえず逆さ星の連中を相手してやればいいんだろう? 」

「あぁ……頼むぞ」

すると話が終わった瞬間、 二人の前に一人の女騎士が出てきた。

その女騎士を見た瞬間、 ジーラは顔をしかめた。

「ジーラさん! やっと見つけましたよ! 」

「うぇ……出やがった……」

「何ですか魔物が出たみたいなその反応! 」

その様子を見たシュラスはため息をつく。

「はぁ……悪い、 俺がこいつを呼んだんだ」

すると女騎士はシュラスの方を見る。

「……誰ですかあなたは」

「……お前……紅月の夜を知らねぇのかよ……」

それを聞いた女騎士は青ざめる。

「シュ……シュラス様……? 」

「そうだ……」

すると女騎士は頭を下げた。

「申し訳ありません! まさか伝説の冒険者がここにいるなんて! 」

「構わん……それで、 お前は? 」

すると女騎士はシュラスに敬礼し、 自己紹介した。

「こ、 これは失礼しました……私は天星騎士団所属、 ミュリア・ミルストル軍曹と申します! シュラス様、 貴方にお会いできて光栄です! 」

「こいつは俺の監視役兼世話役として配属されてな……色々うるせぇの何のって……」

ジーラの言葉にミュリアは怒った。

「それはあなたが勝手な行動をするからでしょう! もう少し団体行動をするべきですよ! 」

「はぁあうるせぇうるせぇ……そんじゃシュラス、 俺はこれで失礼するぜ」

「……はぁ……」

するとジーラは猛スピードでその場を立ち去った。

それを見たミュリアは慌てて追いかける。

「こらぁ! ! 待ちなさーい! ! 」

「……騒がしいな……全く……」

二人の様子に呆れながらもシュラスはジーラから貰ったリンゴをかじりながら再び市場を歩き始めた。

…………

一方その頃、 エルとルーミは二人で夕食をしていた。

「いやぁ、 この街は本当に色々あるなぁ……」

「あの薬を一体何に使う気なの……」

「別に何も怪しい事には使わないよぉ……うへへぇ……」

ルーミはとてつもなく悪い顔をしていた。

そんなやり取りをしながらエルはシュラスの事で気になっていた。

……シュラスさん……今どこにいるんだろう……

「……気になるなら行ったら? 私はいいからさ」

エルの様子を見かねたルーミはそう言った。

「……ありがとうルーミちゃん、 探してくる……」

そしてエルはルーミの元を後にし、 シュラスを探しに行った。

しばらく街中を探し回っていたエルは道に迷ってしまった。

「あ……あれ……ここ、 どこだろう……? 」

しまったぁぁ……初めて来る街で下手に一人で歩き回るんじゃなかった……

エルはとりあえず周囲にいる人々に尋ねながらシュラスを探すことにした。

そしてしばらくして……

「……駄目だ……完全に迷子だ……」

エルは更に知らない道へ入ってしまっていた。

どうしよう……何か凄く危なそうな場所に来ちゃった……

その場所は薄暗い路地裏だった。

「うぅ……どうしよう……一度来た道を戻らないと……」

そしてエルは来た道を戻ろうとする。

しかし……

「……ッ! ? 」

エルは何者かに後頭部を殴られた。

え……何が……

そのままエルは意識を失ってしまった。

…………

『……媒体は確保した……運べ……』

エルを殴ったのはあの逆さ星の組織の人間らしき謎の人物だった。

『……悪く思うな……これも我らの計画の為……』




『全ては……魔神……『アルガノーグ様』の為……』

…………

その頃……

「だぁかぁらぁ! ! 勝手な行動は慎んでください! ! 」

「うるっせ! 俺は自由気ままなんだよ! 」

ミュリアはジーラと言い争いをしていた。

(ったく……これだから人間の女は……)

がみがみと叱るミュリアにジーラはうんざりしている様子。

するとジーラは何かを感じた。

「……おい、 女……今すぐ軍を用意しろ……厄介な事になったぞ」

「えっ……いきなり何を言い出すかと思えば……いい加減に……」

「早くしろ、 国一つ……いや、 世界が滅ぶぞ……」

するとジーラの神妙な顔にミュリアは何かを察した。

「……すぐに……」

そう言うとミュリアは急いで騎士団が待機している宿へ向かった。

「……はぁ……シュラスに頼まれた側からこれだ……全く……運命ってのは悉くムカつかせてくれるぜ……」

街の市場で買った干し肉をかじりながらジーラはそう呟いた。

同時刻……

宿に戻ったシュラスも何かを感じた。

「……全く……エルの奴……! 」

そう言ってシュラスは急いで部屋から出ようとするとルーミが扉の前にいた。

「シュラスさん、 戻ってたんですね! ……あれ、 エルちゃんは? 」

「今からそのエルを取り返しに行く……奴らに攫われたぞ」

「……え」

そして二人は急いで宿を飛び出し、 シュラスの言うエルの居場所に向かった。

「シュラスさん、 エルちゃんはどこに! 」

街の建物の屋根を伝いながら二人は会話した。

「この街の外れにある地下深くに続く神殿だ……そこにエルと逆さ星の連中の気配を感じる……」

「えっと……ちなみにその神殿までの距離は……」

「ざっと10キロと言ったところだ……」

それを聞いたルーミは呆れ顔。

「相変わらずの規格外ですね……そんな距離から気配を感じれるなんて……」

そんな事をしながら二人は街外れにある古びた神殿へ向かった。

その二人を追うように天星騎士団の部隊が道を走って神殿の方を目指していた。

部隊の先頭にはジーラがいた。

「おぉ……あのお二人さんも向かってるみてぇだ……」

「え……まさかシュラス様が? 」

「こりゃ案外面白れぇ事になりそうだ……」

そう言いながらジーラは不敵な笑みを浮かべる。

続く……


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