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I am Aegis / Origin 2  作者: アジフライ
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第14話【動き出す逆さの星】

前回、 シュラス達は新しい家にでの生活を満喫し、 久々の休暇を楽しんでいる時、 突然街中に謎の魔物が大量発生した。

三人はそれぞれ分かれ、 行動する事となった。

「だ、 誰か助けて! ! 」

「クッソ……国の衛兵は何やってんだ! 」

一般人を守ろうと冒険者達が謎の魔物と戦闘をしていた。

「魔法も効かない、 剣も通らない……一体どうなってるのよこれ! 」

冒険者達が謎の魔物に苦戦し、 殺されかけていた時……

「……」

シュラスが上空から姿を現し、 謎の魔物の頭上からパンチを放った。

謎の魔物の体は液体のように弾け、 潰れてしまった。

「あ……貴方は……! 」

「シュラスさんだ! シュラスさんが来てくれたぞ! 」

冒険者達は歓喜する中、 シュラスはその場の一同に指示をする。

「さっさと民間人を連れて逃げろ……お前らが戦っても死人が出るだけだ……」

「は、 はい! 行くぞ……」

冒険者達がその場から去った後、 シュラスはバラバラになった魔物の方を見た。

すると謎の魔物の体が見る見るうちに一点に集まり出し、 元の姿に戻ってしまった。

「……やはり物理では無理か……なら手っ取り早い方法で……」

そう言うとシュラスは剣の柄に手を掛ける。

次の瞬間、 シュラスは目にも留まらぬ速さで謎の魔物の背後へ通過した。

辺りには金属音が鳴り響き、 魔物の動きがぴたりと止まった。

「……」

するとシュラスは黙ってその場を去った。

謎の魔物は動きが止まったまま動かず、 次第に灰のように消滅してしまった。

「……随分と苦戦しているな……グラス……」

シュラスが向かった先はグラスの喫茶店だった。

グラスは店を破壊しようとしてくる二体の魔物を空気砲や空気の刃で攻撃し、 食い止めていた。

「苦戦しているように見えるなら早くこいつを何とかしてよ、 店が潰されちゃう! ! 」

「はぁ……そう慌てるな……」

するとシュラスは剣を使って二体の魔物を同時に斬り刻んだ。

「はぁ……はぁ……待ちくたびれたわよ……シュラス」

「それより例の場所は突き止めたか……」

「あんたこんな状況でもブレないのね……まぁいいわ、 頼まれた事はしっかりやっておいたわ……」

そう言うとグラスはポケットから一枚の地図を取り出し、 シュラスに渡した。

シュラスは数日前、 グラスにあることを依頼していた。

「にしても理解できないわ……あんたならそんなもの、 一瞬で見つけられるでしょうに……『扉』の一つや二つ……」

そう、 闇の一族を封印している扉の捜索だ。

グラスは物探しの技術も長けており、 一部の冒険者からも『物探し探偵』とも呼ばれているのだ。

シュラスはそのグラスの技術を見込んで封印の扉の場所を突き止めて貰っていたのだ。

「俺は必要最低限の物で何とかできるなら力を使わないようにしている……前から言っているはずだ……」

「そうだったわね……あんたはそういう奴……」

「……ご苦労だった……報酬はこれで足りるだろう……」

そう言ってシュラスはグラスに金を渡し、 その場を去ろうとした。

「ちょっと、 この店を守るくらいの結界を張って行ってよ! 」

グラスは図々しく言った。

シュラスは深くため息をつき、 グラスの店の方に手を向けた。

すると店の周囲に透明な膜のような物が張られた。

「これでいいだろう……お前はその中で大人しくしてろ……」

「サンキュー! 」

そしてシュラスは建物の屋根に上り、 走り去った。

「……中央区の地下水路か……そこに奴もいるな……」

地図を見ながらシュラスはそう呟き、 街の中央区に向かっていった。

…………

その頃、 エルは……

「ルーミちゃーん! 」

相変わらずルーミの捜索をしていた。

ルーミちゃん……どこまで行っちゃったの……?

エルがルーミの捜索に手間取っていると……

『……』

「ッ! 」

エルの前に魔物が立ちはだかった。

まずい……さっきの煙玉、 使い切っちゃった!

エルが一瞬戸惑った瞬間、 魔物は腕を剣のように変形させ、 エルに斬りかかった。

しかしエルの体は斬られることは無く、 そのまま突き飛ばされた。

「うわぁぁぁ! 」

シュラスさんの防御魔法凄い……全然斬られてない……けど……

「ぶつかる! 」

勢いで建物の壁に激突しそうになった瞬間……

「うおぉらぁ! 」

物凄い雄叫びと共に何者かがエルをキャッチした。

「大丈夫かね? お嬢ちゃん! 」

「あ……貴方は……」

エルを受け止めたのはたくましい男騎士だった。

その男は片目が黄金の瞳となっており、 中年くらいの年齢に見えた。

「まさか突然こんなことになろうとは……お陰で対処が遅れてしまった……」

「キューサス将軍! ? 」

「いかにも! この街を危機から守る為に参上したぞ! 」

そう言いながらキューサスはエルを下ろす。

キューサス将軍とはルスヴェラート王国の軍団を率いる者である。

その実力は世界で一番とも言われており、 年でありながら豪快な剣技を扱い、 多くの魔法も扱えるという。

「という事はあの騎士団も……」

「その通り! 見たところ人を探しているのだろう? ここは我らが引き受けようぞ! 」

そう言うとキューサスは合図を出した。

すると周りから何人もの騎士達が現れ、 魔物に攻撃を仕掛けた。

「あれが……天星騎士団……」

天星騎士団、 キューサスが独自に訓練し、 鍛え上げたルスヴェラート随一の勢力を持つ軍団である。

その力はドラゴンが数百匹掛かってこようと退ける事ができるという。

「さぁ、 早く行きたまえ! 」

「あ、 ありがとうございます! 」

そしてエルはルーミを探しに行った。

「さて……このデカブツをどうしてくれようか! 」

キューサスは背中に背負う大剣を抜き、 構えた。

「街をこれ以上壊させはせんぞ! ! 」

そう言ってキューサスも加勢する。

…………

「ルーミちゃーん! 」

エルが街の中央区まで走っていくと……

「……」

ルーミが一人、 中央区の広場で立ち尽くしていた。

「ルーミちゃん! 良かった! 」

エルはルーミの側に寄った。

するとルーミは突然短剣をエルの首元に突き付けてきた。

「え……ルーミちゃん? 」

「……あっ、 ごめんごめん! また変な魔物が寄ってきたのかと……」

「びっくりさせないでよぉ……」

今のルーミちゃん……何か変な感じがしたけど……気のせいか……

エルはルーミの態度に違和感を感じたがあまり気にしなかった。

「そういえばシュラスさんは? 」

「あぁ、 多分一人で封印の扉の所に向かったと思うけど……」

「だとしたら私達にできることは一つだね……」

「……そうだね……民間人を守らなきゃ……」

そしてエルとルーミは街に蔓延っている魔物達の方へ向かっていった。

…………

その頃、 シュラスは街の中央区にある地下水路を進んでいた。

「……ここか……」

シュラスが足を止めた場所には何ら変哲の無い壁があった。

するとシュラスは壁に向かって正拳突きを放った。

壁は一瞬にして破壊され、 そこに隠された地下へ続く階段が現れた。

「お手柄だな……グラス……」

シュラスはそう呟くと階段を降りて行った。

シュラスはしばらく階段を降りて行くと……

「おや……予想より早い到着でしたね……」

聞き覚えのある声と共に暗闇からあの仮面の男が現れた。

その後ろには禍々しいオーラを放つ黒い扉があり、 そこから謎の黒い液体が溢れ出し、 天井の隙間に上っていっている。

「扉を閉めに来た……そこをどいてくれ……と言ってもどく気は無いか……」

「フフフ……もう言わずともお分かりでしょう? 」

そう言うと仮面の男は周囲に無数の黒い短剣を出現させ、 竜巻のように舞い上がらせる。

「そう言えば自己紹介がまだでしたね……私は逆さの星第一の頂点……ルーリアル・べラスティアでございます……以後、 お見知りおきを……」

「ご丁寧なものだ……まぁ、 覚えておこう……」

するとべラスティアは舞い上がる黒い短剣の竜巻と共にシュラスの方へ突っ込んできた。

それと同時にシュラスはローブを広げ、 中からルーミお手製の魔石をばらまいた。

辺りは一瞬にして煙に包まれ、 何も見えなくなった。

「……あの子娘の使っていた石ですか……最初は手を焼きましたが……もう通用しませんよ! 」

そう言うとべラスティアは黒い短剣をより高速に舞い上がらせ、 強い風を生み出して煙を払った。

次の瞬間、 シュラスがべラスティアに向かって真正面から突っ込んできた。

「……背後に気を取られたか? 」

そう言いながらシュラスは剣を抜き、 振りかぶった。

すると無数の黒い短剣はシュラスの剣が抜かれた瞬間、 力を抜かれたように次々と落ちて行った。

それに驚いたべラスティアはシュラスの剣を避け、 距離を取った。

「……その剣……ただの魔剣じゃありませんね……この部屋は呪術以外の魔法は全て封じられる結界が張ってある……いかに強い魔剣でも力が失われるはず……」

「悪いな……俺はあまり魔法は使わない……こういった場面では役に立たんからな……何よりも、 魔法は単なる武器ではないからな……」

「……より興味が湧きました……もっとその力を見せて下さい……! 」

するとべラスティアは仮面を外した。

次の瞬間、 べラスティアの目が突然不気味な光を放ち、 シュラスに視線を向けた。

シュラスは視線から外れるように避けると……

「……石化の呪いか」

先程までシュラスのいた場所が白く変色し、 灰のように崩れてしまった。

「その通り……私にはバジリスクの血が混じっておりましてね……その目に見つめられた物は全てが石となり、 崩れてしまうのです……」

「不便なものだな……仮面をしていなければ制御ができないのか……」

「私は感情が高ぶるとどうも制御が利かなくてですね……仮面を着けていなければ安心できないのですよ……」

そう言いながらべラスティアはシュラスに視線を向ける。

シュラスは回避しながらローブの中に潜ませている短剣を飛ばす。

しかしべラスティアの周りには無数の黒い短剣が竜巻のように舞い上がっており、 すぐに弾かれてしまう。

「大きな飛び道具は無効化されてしまうか……やはりあれしか無いな……」

するとシュラスは片手に何本もの針を出し、 べラスティアの方へ飛ばした。

針は黒い短剣の間を縫うように通り抜け、 べラスティアの腕に刺さった。

「これは……呪針ですか……残念ながら私は呪術師、 呪いの類は一切効きませんよ? ましてや毒なんて……ッ! ? 」

次の瞬間、 べラスティアの腕に刺さった針は小爆発を起こし、 べラスティアを吹き飛ばした。

「グゥ……これは……一体……」

吹き飛ばせれたべラスティアは腕を大きく損傷し、 無くなるとまではいかなかったが今にもちぎれそうになっていた。

「ルーミの戦い方からヒントを得てな……お前たちは意外性を持つ攻撃に弱い……特にこういった一見無力そうな針だとかな……」

「まさか……爆裂系の魔法を……! ? 」

「少し違う……お前が払ったあの煙……ただの煙ではない……」

「! ? まさか……」

「あれは『火薬』を混ぜたものだ……あの石に少し細工させてもらった……」

そう、 シュラスの使ったあの煙幕……実はただの煙ではなく、 可燃性を持つ粉だったのだ。

それを全身に浴びたべラスティアの体にはその粉が付着したのだ。

そしてシュラスの飛ばした針には油が塗られており、 シュラスが針を飛ばした時、 舞い上がっている黒い短剣を利用して摩擦を生み出して発火させたのだ。

それを成功させるにはコンマ単位の至難な技だ。

「まさかそんな事が……流石伝説の冒険者と言ったところでしょうか……」

「……さて……お前の始末はギルドに任せるとして……さっさとこの扉を閉じるか……」

「そう簡単にはいかせませんよ……」

べラスティアは不気味な笑みを浮かべると辺りに溢れていた黒い液体がべラスティアの方へ集まってきた。

「……そんな事をすればお前は死ぬぞ……」

「覚悟の上ですよ……私の望みは破壊のみ……それ以外は何を投げ打ってでもいい……それが私の命でもね……! 」

すると集まってきた黒い液体はべラスティアの体を包み込み、 見る見るうちに大きくなっていった。

その黒い塊は部屋の天井を突き破り、 地上にまで到達した。

シュラスは防御結界で扉を守り、 その場から離れた。

その時、 街を襲う魔物と戦闘していたエルとルーミは中央区に現れた巨大な黒い塊見つけ、 駆け付けた。

「シュラスさん! 」

「それ以上近付くな、 瘴気で精神がやられるぞ……」

瘴気! ?

その黒い塊からは禍々しいオーラが溢れ出ており、 中央区の広場一帯を覆い尽くしていた。

そしてその黒い塊は次第に人の形へと変形し、 悪魔のようなおぞましい怪物へと変貌した。

もしかして……あれって……

その怪物の顔部分には逆さの星が刻まれていた。

「……仮面の男……? 」

「お前らは下がってろ……今回ばかりは俺がやる……」

『は、 はい! 』

そしてエルとルーミはその場を離れるとシュラスは剣を抜いた。

シュラスは怪物の頭上まで飛び上がり、 剣を振り下ろした。

しかし怪物は腕を剣のように変形させ、 防御した。

次の瞬間、 怪物の足元から黒い液体が流れ出て無数の槍のようにシュラスの方へ飛んできた。

シュラスは瞬間移動で攻撃を回避し、 再び剣で斬り付ける。

その戦いは激しく、 辺りにはシュラスの剣が放つ激しい金属音が鳴り響いた。

「……はぁ……面倒な化け物だ……仕方あるまい……」

しばらく戦っていたシュラスはキリが無いと判断し、 剣を収めて柄に手を添えるように構えた。

「……少しばかり力を使うか……」

シュラスがそう呟いた瞬間、 怪物は周囲に黒い液体をまき散らしながらシュラスに襲い掛かってきた。

するとシュラスは踏み込み、 残像が残る程の速さで怪物の方へ向かっていった。

そしてシュラスが剣を抜き、 怪物の体を斬ろうとしたその時……

『面白そうな事をしてるじゃねぇか……』

ふと不気味な男の声が辺りに聞こえた。

次の瞬間、 何かが怪物の頭を潰すように空から降ってきた。

シュラスは瞬時にその場から離れ、 回避した。

「……まさかお前が来るとは……」

そしてシュラスの前に現れたのは……

「久しぶりだなぁ……シュラス……何年ぶりだぁ? 」

白い髪に赤い瞳を持ち、 右目には眼帯を付けており、 左目には三本の引っ搔き傷が付いている男だった。

その男からは先程の怪物とは比べ物にならない程の禍々しいオーラが出ていた。

続く……


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