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I am Aegis / Origin 2  作者: アジフライ
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第25話【新たなる地】

前回、 船旅の中間地点であるシューペリア島にてシュラス達は転生者が残した魔法のサーベルを手に入れた。

「……」

「……」

「……ほら、 出来たぞ」

「わぁ……旦那、 ありがとう! 」

宿に戻ったシュラスはディアのサーベルをしまう為の鞘を作っていた。

魔剣用の鞘は作るのが物凄く難しいはずなのにこんなに早く作っちゃうなんて……シュラスさん凄い……

するとエルが感心しているのを見たシュラスは道具をしまいながら話した。

「……エルも武器の整備の為に鍛治技術を知っておく方がいいぞ……道具とはいつ壊れてしまうか分からん……」

「シュラスさんはその技術をどこで学んだんですか? 」

「……自分で学んだ……学びたければ教えてやる」

……シュラスさん……まだまだ私に隠している事がありそう……いつかジーラさんに聞いてみよう

「さぁ、 明日は早い……さっさと寝るぞ」

「はい……」

そしてその日三人は眠りに就いた。

翌朝……

三人は早朝に船に乗り込み、 シューペリア島を出発した。

「シューペリア島の財宝とは何かと思っていたが……まさか転生者が残したサーベルだったとはな……」

遠ざかっていくシューペリア島を眺めながら話すシュラスにエルはある事が気になって仕方が無かった。

それは……

「……シュラスさん……その仮面、 いつ買ったんですか……? 」

シュラスがいつの間にか仮面を着けていたのだ。

それも真っ白で何も飾りの無い謎の仮面だ。

凄い異様な雰囲気を放ってるし……触れない方が難しいでしょ……あんなの……

「これは俺が作った仮面だ……普段は素性や顔が分からないようにしたい時に着ける」

「どうしていきなり……」

「レムレンソアルには少し厄介な縁があってな……シューペリア島から経由して乗ってくるレムレンソアル出身の客もいるから念のためにな……」

厄介な縁って……シュラスさんあっちで何をやらかしてきたんだ……

少し疑問が残りつつもエルは仮面については触れない事にした。

そんな事をしているとディアがシュラスの背中に跳び付いてきた。

「旦那ぁ! 肩車してくれよ! 」

「ディ、 ディアちゃん……」

「……はぁ……これでいいか……」

シュラスは半ば仕方なさそうにディアの体を持ち上げ、 肩車してやった。

……シュラスさんは子供に甘いのかな……

ディアの要望を次々と叶えるシュラスを見たエルはそんな風に思った。

するとディアは背中に背負っていたサーベルを鞘から抜き、 掲げた。

「旦那、 私いつか旦那みたいなスゲー旅人になってやるからな! 」

「……ディア……」

「何だ? 」

「お前にとっての俺とは……一体どんな人物だ……」

ディアの言葉を聞いたシュラスはふとそんな疑問を投げかけた。

するとディアは迷う様子も無く答えた。

「どんな奴にも負けないくらい強くて、 何でも出来ちまうくらいの天才! 」

「……そうか……お前ならきっとなれるだろう……子供の可能性とは無限だ……」

シュラスは何となく寂しそうな声でそう言った。

そして三人は再びレムレンソアルを目指して船旅を始めた。

三日後……

「旦那……旦那……! 」

「何だこんな朝早く……」

客室で眠っていたシュラスをディアが叩き起こした。

そしてシュラスはディアに手を引かれながら船の甲板に向かうと

「あ、 シュラスさん! 見えてきましたよ」

甲板にいたエルが指さす方向には大きな大陸があった。

そう、 レムレンソアル大陸だ。

「長い船旅だったな……」

「はい、 一時はどうなるかと思いましたけど……」

「やっとバカ姉貴に一歩近づいたって訳か……」

……そうだ……これで終わりじゃない……ルーミちゃん……待っててね……

そして三人はレムレンソアル大陸へ上陸した。

…………

「さて……シュラスさん、 ここからアジトへはどこへ進めばいいんですか? 」

意気揚々と船着き場に降り立ったエルはシュラスに聞くと帰ってきた答えが……

「……分からん」

「え……どういうことですか……? 」

「そのままの意味だ、 カルミスから貰った地図は大雑把過ぎるんだ……だからここからどの方角を目指せばいいのかはまだ分からない……あの地図があれば手っ取り早く逆さ星のアジトは探せたかもしれないが……」

あ……もしかして……あの時使った地図が……

そう、 この時シュラスは既に探し物をするための魔法の地図を使いきってしまっていた。

よって三人の行くべき場所が分からなくなってしまったのだ。

「まぁこういった事態には慣れている……一応行く宛はある……まあまあ遠い距離だが……」

「そこまでどのくらいかかります? 」

「ここからだと馬車で一週間近くだな……まずは一番近い街へ行って休息を取ってからになる……そこは馬車で数時間、 徒歩だと二日以上は掛かるな」

「そんなぁ……船旅の後に徒歩だなんて嫌ですよ? 」

エルがそう言うとシュラスはため息を着き、 金貨袋の中身を確認した。

「……三人分だと半分までの距離しか乗っていけない……あとは徒歩になるがそれしかない」

「は……はい……」

船の料金にシューペリア島で使った宿代……そして馬車の料金……どんどん貧乏になっていく……

エルはこの先の旅に思いやられながらもシュラスの後を付いて行った。

そんな二人の様子を見ていたディアは何か決心したようにシュラスに話し掛けた。

「旦那、 金が足りねぇならこのサーベルを売ってくれ! 」

「えっ、 ディアちゃん……」

「シューペリア島の財宝と言われるまでの珍しい魔剣なんだ……きっと高く売れる……」

そう言うとディアは背中からサーベルを下ろそうとする。

しかしシュラスは黙ってディアの手を止めた。

「こんな事でお前の魔剣を売る必要は無い……」

「で、 でも! 私のわがままのせいで……」

「……子供というのはわがままを言って当たり前だ……そしてそのわがままを叶えたのは俺だ……この事態になったのはそんな俺の行動による結果であって、 責任は何もお前にだけある訳ではない」

「旦那……」

「まぁ……お前にはしばらくわがまま禁止だがな……」

そう言うシュラスにディアは笑った。

「分かったよ……ありがとう、 シュラスの旦那……」

やっぱり……シュラスさんは子供に甘いなぁ……

そんな事があって三人は目的地までの半分の距離まで馬車に乗ることにした。

道中、 馬車の御者が三人にこんな話をしてきた。

「アンタら、 この先の街を目指してるんなら用心した方がいいぞ」

「何かあったんですか? 」

エルが聞くと御者はため息をつきながら話した。

「最近ここら一帯が物騒なってきてなぁ……この先の街が盗賊団に占拠されたって話だ……」

えぇ……やっと宿で休めると思ったのに……

エルが心底がっかりしている間にも話は続く。

「ホントかよ! ? 国の騎士団は何をしてんだよ! 」

「闇の一族が湧いててそれどころじゃないんだとよ……全く……最近の世の中はどうなっちまってるのやら……」

闇の一族……逆さ星による被害がここにも出ているって事か……早くアジトを見つけないと……

「俺はもう何十年とこの馬車で客を運んでいるが、 こんな物騒な情勢の中で馬車を使ってくれる旅人はアンタらが初めてだよ。 一体何が目的なんだい? 」

「……仲間がこの大陸に来ていてな……迎えに行かなければならなくてな……」

「そりゃあご苦労なこったぁ……仲間のためにわざわざ海を渡ってくるなんてなぁ、 相当仲間想いなんだなアンタ」

御者がそう言うとシュラスはローブを深く被り、 黙り込んだ。

シュラスさん……案外ルーミちゃんの事が心配なんだ……

そんな事をしていると……

「そこの馬車、 止まれ! 」

馬車の外から突然声が聞こえた。

すると馬車は急停止し、 御者が何者かに馬車から降ろされた。

「中にいる奴も出てこい! 」

野蛮な声が聞こえ、 三人は馬車から降りた。

外にいたのは盗賊団らしき集団だった。

盗賊団は御者を人質に馬車を占拠しようとしていた。

「貴様ら冒険者か」

野蛮な声と共に集団の中のリーダーらしき男が三人の前に出てきた。

うわぁ……御者のおじさんが言ってた盗賊団だ……まさかこんな所で出くわすなんて……

「ど、 どうする……旦那……」

「案ずるな……俺に任せろ」

不安がるディアにシュラスは冷静な様子を見せる。

そしてシュラスはエルにディアを任せ、 リーダーの男の前に立った。

「何だ、 俺とやるつもりか? 」

「あまり立ち往生している暇は無いんだ……さっさと御者を開放しろ」

「何だとこの野郎! ! 」

怒り狂った男はシュラスに向かって剣を振りかざした。

するとシュラスは仮面を相手に目が見える位置まで外した。

次の瞬間、 男は何をされたか剣を地面に落とし、 その場で倒れてしまった。

それだけでなく他の盗賊達もバタバタと倒れ、 気絶してしまった。

な……何が起きたの……?

何が起きたのか理解ができないエルとディアは唖然とした。

「……大丈夫か? 」

驚く二人を余所にシュラスは御者を助け出した。

「あ、 アンタ……何者だい……? 」

「戦闘経験が豊富なただの旅人だ……」

驚く御者にシュラスは言葉を濁らせた。

「……まぁいいか……とにかく助かった、 礼と言っちゃ何だがこのまま街まで運んでやるよ」

「本当ですか! ? ありがとうございます! 」

そして三人は街まで馬車に乗せてもらえる事となった。

「シュラスさん、 さっきのは一体何をしたんですか? 」

途中、 エルは先程のシュラスがやった事について聞いた。

「魔眼の魔法だ……視線に魔力を込めてそのまま波動として放っただけだ……調整が難しく危険な魔法でもあるがあの状況では手っ取り早い」

「魔眼……って……シュラスさん魔眼も使えるんですか! ? 」

この世界においての魔眼は使えるのはごく一部の魔術師だけであり、 扱いがとても難しい魔法でもある。

魔眼を使える者は先天性のものか才能がある者と二種類存在しており、 才能に恵まれて習得する者が殆どである。

魔眼はその視線に様々な魔法の術式を込める事で様々な効果を発揮し、 普段の魔法よりも威力が高くなるという効果を持っており、 詠唱や複雑な術式を組まなくて済む分使い勝手がいいとされている。

今回シュラスが使ったのはただの魔力波であり、 何の効果も持たないが下手をすると相手の内臓を破裂させるなどをして誤って死亡させてしまう危険がある。

そのことを知っていたエルは当然驚いたがシュラスは呆れ口調で言った。

「もういい加減慣れたらどうだ……神類文字を使える時点で俺にできない事が無いのは分かりきっているだろう」

まぁ……確かにそうだけど……

そんな話をしているとディアが馬車の外を眺めながら二人を呼んだ。

「二人とも、 よく分かんねぇ話をしてないで見てみろよ! 」

そう言うディアが指さす方向には小さな街が見えていた。

あれが御者のおじさんが言ってた街かぁ……何だか嫌な雰囲気……

すると馬車は止まり、 三人は街の手前で降ろされた。

「悪いなぁ、 この先は盗賊団の見張りやらがいるからおっかなくて……」

「いえ、 半分の料金でここまで連れてきてくれただけでもありがたいですよ」

そして三人は御者と別れ、 街へ向かう事にした。

……レムレンソアルに来て最初の街……一体何が待ち受けているのやら……

エルはこの先の旅に不安を感じていた。

三章へ続く……


ここまで読んで下さりありがとうございます。

新しい仲間、 ディアを加えて新大陸へ到着したエルとシュラス、 そこで三人は何を見て何を経験するのか……

今後のお話にもどうぞご期待ください。

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