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I am Aegis / Origin 2  作者: アジフライ
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第24話【過去からの贈り物】

シュラス達が船旅を始めて三日が経ったころ。

シュラスは船の客室で一人、 置かれていた机に向かって座っていた。

すると……

「……シュラス様」

シュラスの背後に全身真っ黒な装束を纏った謎の人物が現れ、 その場で跪いた。

その人物の声からして女性だった。

「奴らはどうなっている……」

「依然として大きな動きはありません……恐らく、 あの少女を攫う準備をなさっているのかと思われます……」

シュラスはこの時、 謎の人物に逆さ星のアジトを調査してもらっていたのだ。

「そうか……だとすればまだ猶予はありそうだな……ご苦労だった」

そう言うとシュラスは謎の人物に向かって金貨袋を投げ渡した。

謎の人物は金貨袋の中身を確認するとシュラスに聞いてきた。

「……本当に奴らを始末しなくてよろしかったのですか……本来、 調査だけならこれ程の金額を貰わなくてもよろしかったのですが……」

「暗殺業が本職であるお前達の一族は本来、 暗殺の依頼しか受け付けない……本来受け付けていない依頼を受けてくれているお前に対するその金額は正当なものだと思うが……」

「……一体何が目的なのですか……」

「それは聞くな……」

「……失礼致しました……ではこれで……」

すると謎の人物はその場から姿を消した。

「……厄介な事にならなければいいのだが……エルの方は油断できないからな……」

部屋で一人になったシュラスはボソッと独り言を呟いた。

数分後、 シュラスは甲板に出ると……

「シュラスさん、 あれを見て下さい! 」

エルがシュラスを引っ張り、 甲板の端に連れて行った。

そして二人の視線の先には

「旦那、 あれってあの島だよな! 」

「あぁ……ようやく一休みできそうだ……」

一つの小さな島があった。

あれが……『シューペリア島』……

シューペリア島、 今回シュラス達が航海中に泊まる中間地点である。

その島ではアルドーラ大陸、 レムレンソアル大陸には無い文化が発達しており、 普段では味わえない酒や料理を楽しむことができる。

アルドーラからレムレンソアルまでの距離は船で約一週間、 しかし船に積める物資は船員や乗客の数から考えて四日分が限界である。

よって船は一度シューペリア島に停船し、 物資を補給する必要があるのだ。

「確かシューペリア島には海底に沈んだ財宝伝説があると聞きます、 もしかしたらシュラスさんなら見つけられるかもしれませんね」

「……財宝……か……そうだな……もしあるなら生活費には困らなくなるだろうな……」

「は……はは……」

シュラスさんは本当にブレないなぁ……

そして三人はシューペリア島に上陸した。

島には小さな町があり、 沢山の船乗り達で賑わっていた。

「旦那ぁ! 早く早く! 」

「ディアちゃん、 この前の事なんてすっかり忘れちゃってますね」

「まぁ元気そうで何よりだ……三日ぶりの地面だ、 俺達も羽を伸ばすとしよう……」

そしてシュラス達は宿に荷物を置き、 島の観光をすることにした。

…………

「……凄い……デフィーラルジェ港とは違う雰囲気がある……」

市場には見たことも無い果物がある……それにあのお面は先住民のかな……

町の市場にはエルが見たことが無いものに溢れていた。

「シュラスさん、 あの果物はなんでしょう? 」

そう言うとシュラスは市場に向かい、 謎の果物を一つ買ってきた。

「……テュレリアの実……この島原産の果実だ……」

そう言ってシュラスは実を半分に割り、 エルに渡した。

……何て言うか……凄くグロテスクな実をしてるなぁ……

赤くグジュグジュとした中身を見たエルは若干引いた。

しかし何の抵抗も無く食べるシュラスを見たエルは覚悟を決め、 果実を口にした。

「……ッ! 」

これは……甘酸っぱくてドロドロのジュースみたいな食感……美味しい!

エルは初めての味に夢中になって果実を貪った。

「ん……ディアはどこだ……? 」

シュラスは辺りを見渡すと……

「旦那ぁ! こっち来てくれよ! 」

そうシュラスを呼ぶディアの前には巨大な石板があった。

そこには謎の文字が刻まれており、 神類文字を知っているエルでも解読不可能なものだった。

何だろうこの文字……所々曲線があったり……角ばった部分があったり……単純な形から複雑な形まで色々あるけど……

するとディアはシュラスにこんなことを頼んできた。

「なぁ旦那、 この文字……読めたりできるか? 」

「えぇっ! ? 」

いくら何でもシュラスでも読めないんじゃ……

するとシュラスは黙って石板の前に立ち、 石板を眺めた。

「……『海』……『箱舟』……『竜の心臓』……『財産をそこに残す』……」

「え……シュラスさん読めるんですか! ? 」

「ところどころ文字が潰れていて読めんがな……これはお前達は絶対に知る機会が無い文字……」




「『日本語』だ……」




その石板に書かれていたのは日本語だったのだ。

二……ホン……語……?

当然日本語を知らないエルとディアはきょとんとしていた。

「シュラスさん……その二……ホン……語……というのは……? 」

「……」

「教えてくれよ旦那! 気になるじゃねぇか! 」

シュラスはしばらく黙っていたが意を決したように話し始めた。

「お前達……転生者という存在を知っているな……」

「はい……歴史書の中だけなら……でもそれはおとぎ話の中だけですよね……? 」

「おとぎ話だけの存在ではない……と言ったら? 」

「えっ! ? まさか本当に存在するんですか! ? 」

転生者、 それはエルの住む世界をは異なる世界から舞い降りた異質な能力を持った人間達……

その人間達は強力な力を持っており、 街一つは吹き飛ばせる程の大魔法を扱うことができる人間もいたという。

でも話ではその人間達は何百年かに一度しか現れないから詳しい記録が無い……だからみんなはおとぎ話として語り継がれている。

「でも……そんな人間が本当に存在するとしたら……この訳の分からない文字の存在に説明がいく……」

「この文字も転生者が何百年も前に書き残したものの一つだろう……そして日本語は転生者が住んでいた世界に存在した文字だ……お前達が知らないのも無理はない……」

なるほど……にしても……どうしてそんな文字をシュラスさんが……まさかシュラスさん……!

「シュラスさん……もしかしてあなたは……」

「言っておくが俺は転生者ではない……それだけは覚えておけ……」

……シュラスさんは転生者じゃない……だったら一体何者なの……私以外に知らないはずの神類文字を知っていたり……実在しないと思われている転生者について詳しいし……

そんな事を考えているとディアはシュラスに言った。

「難しい話は私には分からねぇけど……今の旦那の解読が正しければ……財宝は本当にあるって事じゃねぇのか! ? ……お宝だよ! ! 」

「阿保……文字が潰れていて読めないと言っただろう……情報が極端に少ないと探そうにも探せん」

するとエルはある方法を思いつく。

「ならシュラスさん、 いつも探し物をしている時に使っている地図を使えば探せるんじゃ……」

「……あれは一度使ったら使い物にならない……安物ではないんだ……そう易々と使う訳にはいかん……」

「できないと言わないということは……不可能じゃないって事だな? 」

ディアがそう言うとシュラスはしまったと言わんばかりに顔に手を当てた。

一時間後……

「はぁ……」

「よっしゃぁぁ! 地図は手に入れたんだし早速宝探しだ! ! 」

話し合いの結果、 結局シュラスはディアに魔法の地図を渡すことにした。

地図を貰うまで島から一歩も出ないって言われたら……流石のシュラスさんでも断れないよね……

「全く……面倒な事になったものだ……」

「はは……」

そして三人はシューペリア島の財宝を探しに行くことにした。

地図によれば財宝の場所は島の遥か北側、 海のど真ん中を指していた。

「いくら何でも海のど真ん中は……まぁ……シュラスさんならあるいは……」

「……」

エルとディアがシュラスを見つめているとシュラスは深くため息を着いた。

「仕方ない……」

そう言うとシュラスは指を鳴らした。

するとエルとディアの体の周りに透明な膜が包み込んだ。

「環境適応の呪文だ……これで海底の低温や空気も問題ない」

「これって……あの時のですよね」

そう、 この呪文は『凍てつく炎』の時に使われた呪文と同じものである。

この魔法……便利だなぁ……後でシュラスさんに教えてもらお……

「……さぁ、 さっさと行くぞ……」

そして三人は海の底へと潜っていった。

…………

海底へ潜っていく間、 エルはシュラスにある質問をした。

「シュラスさん……シュラスさんって、 一体どこから来たんですか? 」

それを聞いたシュラスは一瞬だったが顔色を変えて答えた。

「……お前の知らない『場所』からだ……詳細は教える事は出来ない……それは禁じられているからな……」

禁じられて……って……一体どんな場所だったんだろう……

「まぁ……俺の口からは答えられんというだけだ……ジーラに聞けばあるいは答えてくれるかもな……」

「えっ、 いいんですか? 聞いちゃっても……」

「聞く覚悟があるのなら……だがな……その答えを聞いてお前に何をもたらすのか……それは俺でも知る由もない……」

なんか……恐いんだけど……

エルはシュラスの意味深な言葉に恐怖を抱いた。

「あっ、 おい! 何か見えてきたぞ! 」

そんな事をしている間にディアが何かを発見した。

「ほう……あれは……」

「あれが……『箱舟』……? 」

そこにあったのは黒く細長く巨大な物体だった。

それは正しく『潜水艦』なるものであった。

しかし潜水艦を知らないエルとディアにとっては初めて見る『箱舟』だった。

「でも入り口がどこにあるのか分からねぇぞ? 」

ディアはそう言いながら潜水艦の周囲を探り回った。

「あまり下手に触るな……不発弾がある可能性もあるんだ」

「え……フハツ……ダン……? 」

「お前達に分かり易く言うなれば何十年も放置された火薬の塊だ……それに強い衝撃が加わると火が付くというおまけ付きのだ……」

「え……じゃあ……下手すれば大爆発が起きるって事ですか! ? 」

「まぁかなり古くて長年水に晒されていたものだからそうそう爆発はせんとは思うが……」

そんな物が……これもあの石板に二ホン語を書いた転生者が残したものだよね……という事は異世界にはあんな危ない物が存在しているのか……異世界の技術……恐ろしい……

そんな事を考えながらエルもディアの後に続いて入り口を探した。

しばらくエルとディアが潜水艦の入り口を探していると……

「二人とも、 こっちだ……」

シュラスが入り口を見つけた。

そこには謎の紋章が刻まれており、 シュラスが手を触れるとそこに穴が開いた。

「これは……空間魔術……」

「かなり古いがな……」

「こんな技術を使っている奴らなら財宝も期待できるぜ! 」

するとディアは真っ先に潜水艦の中へと入っていった。

二人も後に続いて潜水艦の中へ入ると

「シュラスさん……これって……」

「これが奴らの言う財産だろう」

見たことも無い機械が埋め尽くす空間……その奥にはガラス張りの箱に厳重にしまわれている一本の剣があった。

置かれている機械は全て浸水していて使い物にはならなかったが飾られている剣だけは何故か新品同然のまま残されている。

「旦那、 あれがお宝じゃないか? 」

「宝かどうかはさておき、 あれが財産で間違いない」

「……壁の至る所に石板と同じ文字が書かれてますね……機械も初めて見る物ばかりだし、 転生者の力は末恐ろしいですね……」

そんなやり取りをしながら一同は剣の前に来た。

飾られていた剣は剣というよりもサーベルの形をしており、 いかにも海賊が使うような見た目をしていた。

「……これはサーベルだな……凄まじい力を感じる……」

「刃には魔法文字が刻まれていますね……これは……水の刻印ですかね……」

「恐らくこのサーベルは海水に触れていたから劣化しなかったんだろう……水の魔剣は水さえあれば自己再生ができるからな……」

二人がサーベルの分析をしているとディアがガラスケースを取り外し、 無造作にサーベルを手に取った。

「あっ、 ディアちゃん! 危ないって! 」

「大丈夫だって! 」

まるで新しいおもちゃを手にしたようにサーベルを掲げるディアを見てシュラスは何かに気付いた。

「……そのサーベル……ディアを必要としているな……」

「えっ、 ディアちゃんを必要としてる……? 」

「魔剣とは主がいる事で初めて存在意義を持つ……持ち主のいない魔剣に存在する意味がないからな……そのサーベルは長年新しい持ち主を探していたのだろう……それが例え幼い獣人の娘であっても……そのサーベルは持ち主が欲しかったのだろう」

新しい持ち主……ディアちゃんが……

「……っという事は……この魔剣はもう私の物って事か! ? 」

「お前がサーベルに触れた時点で主は確定した……もうそれはお前の物でいいだろう」

シュラスがそう言うとディアは大喜びした。

転生者の言う財産って何だろうって思ったけど……このサーベルだったんだね……てっきり金銀財宝の事かと思ってた……

そんな事がありつつも三人は転生者の残した財産と思しきサーベルを手に入れた。

「さぁ、 宝探しは終わりだ、 さっさと陸に戻るぞ……」

そう言ってシュラスは二人を潜水艦の外へ出るよう促した。

「……ん? 」

シュラスに言われて先に潜水艦の外へ出ようとしたエルはふとシュラスがサーベルが置かれていた台座を見つめているのに気付いた。

「シュラスさん? 」

「……すまん、 何でもない……文字が書かれていたからついな……」

「また二ホン語ですか? 」

「そうだ……」

そして三人は数百メートルの海底からシューペリア島へと戻っていった。

続く……


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