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I am Aegis / Origin 2  作者: アジフライ
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第23話【長き海の旅】

前回、 シュラスとエルは逆さ星のアジトがあるとされるレムレンソアル大陸へ向かうための船に乗る為、 デフィーラルジェ港へと向かい、 そこでルーミの妹である謎の少女ディア(仮)と出会う。

そして二人はディアを旅に同行させる事にし、 大海原へと旅立った。

「わぁ……! シュラスさん、 凄い景色ですよ! 」

「あまり前のめりになると落ちるぞ」

しばらく船内の客室にいた三人は暇つぶしに船の甲板に出てきた。

エルは一面に広がる海に興奮している。

それに対してディアは至って落ち着いている様子だった。

「そんなに興奮するもんか? 私は海なんて四六時中見てるからあまり分からねぇなぁ……」

「……あの阿保の妹とは思えん性格だな……」

「あんなバカと一緒にすんなっての! 」

するとディアはふとシュラスの剣を見る。

「……なぁ旦那、 そういえばその剣ってどうなってるんだ? 」

「……この剣は生きているんだ……だからこの剣が選んだ者にしか抜く事は出来ないし、 最悪の場合持つことも許されない……」

「へぇ……じゃあ旦那の剣を持てた私って特別な何かが……? 」

「ある訳なかろう……最悪の場合持つことも許されないというだけであって、 抜けないのは普通の事だ……」

「ちぇ~……」

ふてくされるディアを見たシュラスはおもむろに腰の剣を手に取り、 ディアに差し出した。

「……え……? 」

「お前、 剣が好きなんだろう……剣を見せることはできないが持たせるぐらいはさせてやる……」

するとディアは目を輝かせる。

「い……いいのか! ? 」

「この旅は長くなる……ずっと着けておくのも邪魔だし、 かと言って部屋に置きっぱなしにするのも心もとない……だからしばらくお前に預ける」

シュラスがそう言うとディアは喜んだ様子でシュラスの剣を受け取った。

そしてディアに剣を預けたシュラスは海を眺めるエルの元へ歩み寄った。

「……シュラスさん、 優しいんですね」

二人のやり取りを見ていたエルは海を眺めながらシュラスに言った。

「……俺は船長に航路を聞きに行ってくる……ディアの面倒を見ていてくれ……」

「フフ……はい、 分かりました」

シュラスさんって意外と子供が好きなのかな……

エルはシュラスの意外な一面を感じた。

そしてエルはまたしばらく海を眺めているとディアがエルの隣に駆け寄ってきた。

「なぁエル姉さん、 あの旦那は伝説の冒険者なんだよな! 」

「そうだけど……どうしてそれを? 」

「本人が名乗ってたからさ、 それでさ……姉さんは旦那の事どう思ってるんだい? 」

「えっ……! ? 」

唐突な質問にエルは困惑した。

急にそんな事聞かれてもなぁ……

エルが困っている様子を見たディアはニヤついた。

これ……絶対私を困らせようと狙った質問だよね……

「ッ……」

エルは返答に困る。

「どうなのさぁ……旦那との会話を聞く限り結構長い付き合いなんじゃねぇのぉ? ん~? 」

あぁ……ルーミちゃんの妹……恐ろしい……

しかしエルは改めて考えてみた。

……でも……いざ真剣に考えてみると……シュラスさんって……

「……そうだなぁ……普段はちょっと素っ気無くて……何を考えているのか分からない人だけど……心はとても優しい人で……冒険者として憧れの人……ってところかな……」

「ふーん……」

「な、 なにその反応……」

「別に、 ちょっと期待外れだったなぁって……」

やっぱり狙ってたんだ……

するとディアはシュラスから預かった剣を眺めた。

「……そういえばこの剣……本当に旦那以外のやつには抜けねぇのかな……」

「それっていつもシュラスさんが持ってる剣だよね、 私は何回かシュラスさんが剣を抜いてるところを見てるけど……よくは見たことないなぁ」

エルもシュラスの剣に興味があった。

そういえばシュラスさん……この剣に関しては何も語ろうとしないんだよね……

この時エルは過去にもシュラスに剣について聞き出そうとしていたのだが、 シュラスは幾度もそれに関する質問に答えるのを拒否していたのだ。

「どんな見た目の剣だったんだ? 」

「うろ覚えなんだけど……全体的に真っ黒な金属みたいので出来てて……それと……赤い刃をしてたかなぁ……」

「へぇ~……私も一度は拝んでみたいなぁ……私剣が大好きなんだよ! 」

……剣が大好きなのもルーミちゃんに似てる……流石は剣狩りの妹……

するとディアはシュラスの剣を抜こうと手を掛ける。

「フンギギギギギギッ! ! 」

しかし相変わらず剣はびくともしない。

本当に抜けないんだ……シュラスさんの時はあっさり抜けるのに……

「……ッだぁ! やっぱり抜けない……鞘を壊してみるか……」

「えぇッ! そんな事をしたら壊れちゃうんじゃ……? 」

「大丈夫だって! 見たところこの剣は魔剣っぽいし、 鞘を壊したところで傷一つ付かないだろ! 」

そう言ってディアが取り出したのは小さなナイフだった。

そしてディアは床に剣を置くとナイフで鞘を削ろうと振りかざした。

「えぇやっ! ! 」

ナイフが鞘に当たった次の瞬間……

『カァァァァァァン……! ! ! 』

不可思議な金属音が辺りに響くと同時にディアのナイフがバラバラに砕け散ってしまった。

「え……何……」

ディアが困惑しているとシュラスの剣から謎の情撃破が発生し、 ディアを吹き飛ばした。

「危ない! 」

エルは咄嗟に風の魔法を使ってディアを助けた。

……今の……ただの魔力による衝撃波じゃなかった……魔力以外の何か……凄まじい濃さのエネルギーだった……

すると唖然とする二人の元にシュラスが走ってきた。

シュラスは何時になく少し焦っている様子だった。

「今の衝撃波……剣に何かしたのか……! 」

「シュラスさん……実は……」

エルは事の顛末を話した。

「……そういうことか……」

「旦那……済まねぇ……勝手な事をして……」

するとシュラスはディアの頭を撫でる。

「いや……剣に何かされるのは問題ない……問題は他にある……」

「へ……? 」

次の瞬間、 突然船が揺れ出した。

何事かと船員たちは慌ただしく動き始める。

そしてエルはふと遠く海の方を見た。

「……あれって……! 」

エルの視線の先には……

「寄って来てしまったか……面倒な事になったぞ……」

数十キロも離れている先からでも見える程の巨大な海龍だった。

『海の魔神が来るぞぉぉぉぉ! ! 』

船員は叫びながら船を旋回させる。

「海の魔神……私聞いた事があるぞ……! 」

『海の魔神』という言葉はエルとディアも知っていた。

それはすなわち海に潜む巨大な海龍の事である。

この世界の広い海のどこか深く……太古より生き続けているという伝説の古龍であり、 海に生きる者達が最も恐れる存在である。

伝説では海で幾多の災害を起こし、 一万のあろうという軍艦を一瞬にして沈めてしまうという凄まじい強さを持っている。

また……その龍は海に沈められた古代の文明の王が神の怒りを買い、 呪いを掛けられた成れの果てだという噂もある。

「シュラスさん……どうしましょう……あんなの、 勝てっこありません! 」

エルは慌てるがシュラスは冷静だった。

「落ち着け……俺が何とかする……エルはこの船を守れ」

そう言いながらシュラスは剣を手に取り、 海龍の方へ向かおうとする。

それを見たディアはシュラスを止めようとする。

「無茶だ旦那! いくら伝説の冒険者と言えど、 海の魔神を倒すのは無謀だ! 魔神の戦争時代から誰にも倒されず生きてきた怪物だぞ! 」

「……案ずるな……倒しはしない……追い払うのみだ……」

そう言ってシュラスは船から飛び上がり、 海龍の方へ向かっていった。

シュラスさん……何か考えでもあるのかな……

エルはシュラスを心配しながらも船の防御に回った。

…………

一方、 シュラスは海龍の目の前まで来ていた。

「……海龍ベルドルン……お前を不快にした事は謝罪する、 だからここは引いてくれ……」

シュラスは海龍に話し掛けた。

『……その剣は……災いをもたらす……先程の波動……この世界……否、 この世に存在してはならないものだ……』

海龍は怒りに満ちた声でシュラスに言うと周囲に水色に輝く光の玉を発生させ、 そこからいくつもの光線を放ってきた。

シュラスは自身に飛んでくる光線は防いだがいくつかの光線はエル達の乗っている船の方へ飛んで行った。

…………

「まずい、 こっちに飛んできた! 」

船に乗っていた者達は絶体絶命だと思った瞬間……

「~~~~~~……」

エルが謎の言語で何か詠唱し、 海から巨大な氷の壁を形成して光線を防いだ。

……あまり神類文字を使うのは危ないけど……あの海龍の力に対抗するにはこれしか無い……

「シュラスさん……早く終わらせて下さいね……」

…………

「……聞く耳持たず……か……仕方あるまい……」

海龍の様子を見かねたシュラスは遂に剣を抜いた。

「……仲間の命が危ういとなれば……手加減はできん……それでも構わないな……」

シュラスはそう言いながら海龍に威圧を掛ける。

海龍はその威圧感に一瞬引いた。

『……何故……そこまで……その剣に執着する……その剣を消せば済むものを……』

「……その理由を聞くならば……本当にお前を消さなくてはならなくなる……俺は外れた『道』を進む訳には行かない……! 」

すると海龍は黙り込む。

『……もう良い、 理由は聞かぬにしても……お前をその剣と共にここで消すしかない! 』

次の瞬間、 海龍は口から巨大な光線を吐き出し、 辺りを吹き飛ばそうとした。

「ここで災害を起こす気か……」

そう言うとシュラスは凄まじい速さで海龍の頭の下へ潜り込み、 下からアッパーを入れた。

衝撃で海龍の頭は空を向き、 そのまま光線が空へ放たれた。

光線は空高くまで上がってゆき、 空中で大爆発を起こした。

爆風はシュラスの所まで届き、 海を揺らした。

「……いい加減ここを引いてくれ……海を守るお前を消すのはこの世界に損失が大き過ぎる……頼む」

シュラスは再び海龍に語り掛ける。

『……ッ……仕方あるまい……他でもない貴公が言う事だ……だが、 また先程のような事が起こるのであれば……その時こそは……』

「分かっている……待っていてくれ……この剣が……『この世』の全てを守り抜く時まで……」

すると海龍は大人しくなり、 海の底へと戻っていった。

その様子を見ていたエル達は呆然としていた。

「……凄い……あの海龍を……たった一人で撃退するなんて……」

ディアはシュラスの実力に驚いている。

……シュラスさん、 あの海龍と何か話してるみたいだった……一体何を……

エルはシュラスが海龍と会話している様子が何となく分かった。

そしてシュラスは船へ戻ってきた。

「何とか撃退はできた……船に問題は無かったようだな……」

「はい、 光線が飛んできた時は危なかったですけど……」

「……まぁ、 今回はやむを得なかったんだ……よく守った、 エル」

そう言うとシュラスはディアの元へ歩み寄った。

ディアは気まずそうな雰囲気でシュラスを見る。

するとシュラスはディアの額に軽くデコピンを入れた。

「アタッ……」

「……好奇心は時として身を滅ぼす……これを機に学べ……」

「は……はい……ごめんなさい……」

シュラスはあまり怒る様子は見せなかった。

そしてシュラスはディアの頭を撫でると船の中へ入っていった。

「……旦那……やっぱり怒ってるか……? 」

エルと二人っきりになるとディアはエルに聞いた。

……こういう時なんて言うのが正解なんだろう……

「……シュラスさんはあれで怒ったりはしないよ………………多分……」

そんな事がありつつも三人の船旅は続行する事となった。

…………

その頃、 ジーラは……

「……シュラス達がレムレンソアル大陸へ向かったそうだ……丁度デフィーラルジェ港にいたギルド職員から連絡があった……」

ウーラがカルスターラの王城でキューサス将軍と話していた。

実は街での逆さ星による事件以来、 世界中の国々がシュラスの動きを監視していたのだ。

もしもまた同じような事態が起こった時、 シュラスに連絡ができるようにと……

「うーむ……何故彼は突然レムレンソアルへ……まさか……逆さ星のアジトそこにあるのか……」

「あいつのお仲間のルーミって子が逆さ星に寝返ったって報告があるということはそういう事だろう……それしか辻褄の合う理由が思い浮かばない」

すると二人の元にジーラが現れた。

「面白そうな話をしてるじゃねぇか……俺にも聞かせてくれよ……」

そう言いながらジーラは馴れ馴れしくキューサスの背中をポンポン叩く。

「貴様! 私の恩師に何たる! 」

ジーラの態度にウーラは怒り出し、 ジーラに向かって蹴りを放った。

しかしジーラはあっさりとウーラの蹴りを片手で受け止めた。

「ハッ、 流石は世界最強の格闘家と名高いウーラサマだ」

「くっ……貴様ぁ……! ! 」

「やめんか! どの道ジーラ殿にはレムレンソアル大陸へ向かってもらうつもりだ」

それを聞いたジーラは不敵な笑みを浮かべる。

「とにかくレムレンソアル大陸へ向かえばいいんだろ? そんで逆さ星を一気にぶっ潰しちまえば解決……だろ? 」

「うむ……まぁその通りだ……」

するとジーラはにやりと笑みを浮かべ、 その場から立ち去った。

去り際、 ジーラはキューサスに言った。

「あぁそうだ……俺に対する態度は少し弁えた方がいいぞ……俺はいつだってこの街、 いや……この国をぶっ壊せるんだ……」

そう言うとウーラは怒る。

「貴様……いい加減に――」

次の瞬間、 ジーラはウーラの目の前まで瞬間移動し、 ウーラの顔面に向かって蹴りを寸止めした。

ウーラはその風圧に吹き飛ばされ、 壁に激突し気絶してしまった。

「……爺さんよ……俺を敵に回したくねぇんなら……多少は待遇を改めてもらわねぇとな……」

そしてジーラはその場から姿を消してしまった。

「……あのウーラをいとも簡単に……やはりただ者ではない……か……」

キューサスはジーラの強さに戦慄を覚えた。

続く……


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