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I am Aegis / Origin 2  作者: アジフライ
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第12話【急襲】

「うぅ……重い……」

ウーラの依頼でクーラン・デルタ帝国の王都 キュレーラに来ていたシュラス、 エル、 ルーミの三人は見事依頼を達成し、 ルスヴェラート王国の王都 カルスターラへ戻ろうとしていた。

「だから土産は程々にしておけと言っただろうが……」

出発前、 ルーミは街の土産屋で大量のお土産を買っていた。

……まぁ……自業自得だよね……でも困ったなぁ、 私のポシェットだとせいぜい15メートル四方くらいの容量しか無くてほとんど埋まっちゃってるし……

大量の荷物にルーミとエルが困っているとシュラスはため息をついて言った。

「貸せ……俺が持ってやる……」

「え……でもシュラスさん、 異次元収納魔道具らしい物は持ってませんよね? 」

ルーミとがそう言うとシュラスは何も答えずにルーミの荷物に手を翳した。

すると大量の荷物が一瞬にしてシュラスの手に吸い込まれるように別空間へと収納されていった。

あれは……空間魔法……そうだった、 シュラスさんは空間系の魔法も使えるんだった……

「……今回だけだ……次からは考えて物を買え……」

「あ、 ありがとうございます! 」

そして三人は馬車に乗り込んだ。

カルスターラへ向けて出発して数日……

三人は行きの際に訪れた街を経由しながら順調に帰路を進んでいた。

「……やはり考慮すべきか……」

馬車に揺られているとシュラスがふと呟いた。

「ん? どうかしたんですか? 」

「……いや……そろそろ宿で止まり続ける生活は止めた方がいいかと思ってな……毎回夜を明かすのに三人分の宿代を出していては費用が嵩むからな……」

「でもシュラスさんは伝説の冒険者なんでしょ? お金なんていくらでも稼げるんじゃないんですか? 」

ルーミがそう言うとシュラスはため息をついた。

「……俺は単に伝説と呼ばれているだけであって稼ぎが良い訳ではない……今まで一人で生活ができる分だけしか報酬は貰っていないし、 何より身に余る大金は持ち運びたくはない……」

「え……それじゃシュラスさん……今まで野宿……」

「少なくとも家は持ったことは無い……」

シュラスさん……本当に今まで一人だったんだ……

するとシュラスは金貨袋を取り出し、 所持金を見た。

「……仕方ない……今回は報酬を貰うか……貰わないと言ってしまった後ではあるが何とかなるだろう……」

「! もしかして……家を買うつもりなんですか! ? 」

ルーミが目を輝かせながらシュラスに迫ってきた。

「今の流れで何を買うと言うんだ……それより離れろ鬱陶しい……! 」

シュラスはルーミの顔を押さえつけながら言った。

あぁ……ルーミちゃんはちゃんとした家とかで過ごしたことが無かったのか……まぁあの街で剣狩りをしていたぐらいだし当然か……

「……家……か……」

「パーティで活動する上で拠点は欠かせないからな……早めに買っておく方がいいだろう……」

「早くカルスターラに着かないかなぁ……」

三人がそんな話をしていると突然馬車が急停止した。

「な……何! ? 」

エルとルーミは慌てて馬車から降りた。

外では黒ずくめの人間達が馬車を囲んでおり、 御者は既に殺されてしまっていた。

何この人たち! ?

「よく分からないけど……敵なのは確かだね! 」

そう言ってルーミは戦闘態勢に入った。

「お待ちください……私達は何も集団リンチをしに来たわけではありません……」

謎の青年の声と共に黒ずくめの集団の中から仮面を着けた男らしき人物が出てきた。

仮面には大きく逆さに描かれた星のような模様が刻まれている。

まさか……逆さ星の人……?

「……逃げられると面倒なので先に御者を始末させて頂きました……ですがあなた方に危害を加えるつもりはありません……少なくともそこの『二人』には……」

仮面の男がそう言うと同時にシュラスが馬車からゆっくりと降りてきた。

もしかして目的はシュラスさん……?

するとシュラスはエルとルーミを後ろに下がらせた。

「……何の用だ……逆さ星の連中に恨みを買われるようなことをした覚えは無いぞ……それとも……あのヌーガという男がそれほど重要人物だったのか? 」

シュラスがそう言うと仮面の男は笑った。

「ふっふっふっ……いえいえ、 あんなのはただの捨て駒ですから……消えようが消えまいが知ったことではありません……ただその件を切っ掛けであなたに興味を持ちましてね……折角なのでご挨拶をしようかと思いまして……」

「ならさっさと済ませろ……その『挨拶』とやらを……」

「……よくお分かりで……」

すると次の瞬間、 仮面の男は周囲に真っ黒なナイフのような物体を出現させ、 竜巻を作るようにシュラスの方へ飛ばした。

シュラスはエルとルーミを馬車の中へ放り投げると地面に手を付き、 目の前に土の壁を形成して攻撃を防いだ。

『シュラスさん! 』

「……案ずるな……そこで見てろ……」

エルとルーミは心配するがシュラスはいつも通り冷静だった。

すると今度は仮面の男が直接シュラスに攻撃を仕掛けてきた。

仮面の男は土の壁を蹴破り、 全身に纏う真っ黒なローブの中から黒い針を飛ばしてきた。

シュラスは自身を膜で覆う形でローブを広げ、 針を防いだ。

不思議にも針はシュラスのローブに当たるとまるで金属に当たったかのように弾き返された。

「ほう……そのローブも防具でしたか……」

仮面の男は感心する様子を見せながらもシュラスに攻撃を続ける。

仮面の男の攻撃はどれも狡猾で不気味な魔道具ばかりを使って来る。

……あの人が使ってる武器ってもしかして全部……呪いが掛かっているんじゃ……

戦いの様子を見ていたエルはふと思った。

その理由は先程シュラスが直接その武器に触れようとしないからだ。

「……このままだと埒が明かないよ……私達も何とかしなくちゃ……」

そう言ってエルは杖を取り出そうとポシェットに手を掛けた瞬間、 仮面の男が先程と同じ黒い針を馬車の方へ飛ばし威嚇した。

黒い針がささった部分は腐り落ちていった。

「っ……! やっぱりこの針は呪針……」

「これは私とシュラスさんの戦いなので……手出しはさせませんよ……」

「くっ……」

エルが手を出せずにいるとルーミがエルの肩を叩く。

「……エルちゃんエルちゃん……これ……使えるかも……」

「え? 」

そう囁きながらルーミが取り出したのは……

「……何これ……石……? 」

「ただの石じゃないよ……衝撃を加えると煙幕を発生させる魔石だよ……煙玉と違って火もいらないんだぁ……」

煙玉のような効果を持つという小さな石だった。

「投げる動作をするとまたあの仮面男が感づいちゃうだろうから……エルちゃんの風魔法で飛ばせないかな? って……」

「なるほど……小石を飛ばす程度なら杖が無くてもできるし……いいかも……」

そしてエルはタイミングを見計らって仮面の男の方へ目掛けて石を飛ばした。

すると仮面の男は飛んできた石に気付き、 持っていた短剣で弾こうとする。

短剣が石に接触した瞬間、 石は小さな爆発を起こしながら辺りに煙幕を張った。

「これは……魔石でしたか……! 」

「シュラスさん今! 」

ルーミが叫ぶとシュラスは煙幕で視界を奪われた仮面の男に回し蹴りを放った。

仮面の男は勢いよく突き飛ばされ、 後方にいた仲間に激突してしまった。

「……もういいだろう……さっさと帰れ……」

「……油断しましたか……あの子娘二人にも十分な警戒をすべきでしたね……」

そう言うと仮面の男は素早く立ち上がり、 ローブの中から謎の黒い玉を取り出し地面に投げつけた。

すると瞬く間に辺りは黒い煙に包まれた。

「今回は私の負けを認めましょう……シュラスさんも本気では無かったようですし……またいつか、 闇の中でお会いしましょう……」

黒い煙の向こうから仮面の男の声がし、 その言葉を最後に黒ずくめの集団と共に姿を眩ました。

「……行ったか……」

「やったぁ! 撃退成功! 」

「シュラスさん、 大丈夫でしたか! ? 」

煙幕が晴れるとエルとルーミは馬車から降り、 シュラスの元に駆け寄った。

「……どうやら恐れていた事が起きてしまったようだ……」

「やっぱりあの集団……逆さ星ですよね……」

「……ごめんなさい……やっぱり私のせいで……」

ルーミが申し訳なさそうにするとシュラスはルーミに軽く拳骨を入れた。

「アデッ! 」

「いちいち過ぎた事で考え込むな……」

そう言うとシュラスは殺された御者の死体の方へ寄り、 手を合わせた。

「……御者がやられてしまったか……ここから歩いて帰るにしても二人にとっては道のりは長いしな……」

「どうします……? 」

するとシュラスは何かを決めたように二人の方を向いた。

「仕方ない……不本意だが使うとしよう……二人とも俺の側に寄れ」

「え? 」

そう言われるがままにエルとルーミはシュラスの側に寄った。

するとシュラスは指を鳴らした。

次の瞬間、 三人はいつの間にかカルスターラの街の入り口前まで移動していた。

「え……えぇ! ? 」

「何が起きたんですか! ? 」

「空間を切って繋いで戻しただけだ……」

空間を切って繋いで戻すって……転移の魔法ですらなかった……一体何を……

エルとルーミには何が起きたのか理解が出来なかった。

しかしシュラスはそんなこともお構いなしにカルスターラの方へ向かっていった。

「あ、 待って下さい! 」

二人もシュラスに続いた。

…………

カルスターラのギルドにて……

シュラスは拠点を買うための資金を受け取れないかクレイに相談した。

「……なるほど……確かに三人分の宿代を毎回支払っていては生活費も持たんな……」

「自分勝手な願いだと言うのは承知の上だが……俺が良くてもこの二人を金銭関係で苦労はさせたくない……」

シュラスの頼みにクレイは少し悩む様子を見せたが……

「……いいだろう、 シュラス殿には今まで世話になっているしな……今回の遠征の件も含めて資金を提供しよう」

「感謝する」

これでいよいよ私達の拠点が手に入る!

エルとルーミは心を躍らせる。

「話は以上かね? 」

「いや、 実はもう一つある……エル、 ルーミ、 ホールで待ってろ」

「え……はい……? 」

さっきの仮面の男の話かな? にしてもどうして私達を外に……

エルは疑問に思いながらもルーミと共に部屋から出て行った。

「……それで、 二人を追い出してまでする話とは……一体何だ? 」

「実はさっき、 逆さ星と思しき連中に絡まれた……カルスターラから十数キロ離れた場所だ」

それを聞いたクレイは表情が変わる。

「逆さ星だと……確かに奴らだったのか? 」

「親切にも連中のシンボルマークであろう逆さの星が描かれた仮面を着けて登場したんでな……間違いは無いだろう……」

するとクレイ考え込む様子を見せる。

世界でも有名な裏組織となればギルドマスターであるクレイが食いつくのも当然の事であろう。

「それで……君が撃退したのか? 」

「いや、 あの二人が協力して俺に手を貸した……そのお陰で撃退できたと言ってもいいだろう……何なら本人たちから詳しい話を聞いても構わん……」

シュラスがそう言うとクレイはフッと笑った。

「そんなこと言って……本当はあの二人の手柄になるように仕向けたんだろう? 無駄に称賛されるのも君は嫌うからな……」

「どうだろうな……」

シュラスは真相を曇らせるように言った。

「まぁいい……そういう事にしておこう……遭遇した場所もそう離れている訳でもない、 警備体制を強化しよう……報告感謝する」

そしてシュラスは席を立った。

「……せいぜい気を付けろ……奴らは俺を狙っているように話していたが……どうやら狙いは他にあるようだ……」

去り際、 シュラスはそう言い残して部屋を出て行った。

クレイの元を後にし、 シュラスはギルドのホールへ向かう途中……

「……まさか奴ら……あれを起こそうとしているのか? ……全く……面倒な……」

呆れた様子で独り言でそう呟いた。

そしてシュラスはエルとルーミに合流し、 拠点を探しに街に出た。

「……エル、 ルーミ……お前ら二人で適当な空き家を見つけてこい……俺は別の要件がある……」

「え……分かりました」

「私達で決めていいんですか! ? 」

別の要件って……シュラスさんさっきから何か様子が……

エルは何かに引っ掛かりながらもルーミに連られて拠点を探しに行った。

…………

「あっ、 エルちゃん! この館はどうかな? 」

ルーミはボロボロの館を指さして言った。

その館からはおどろおどろしい気配が漂ってきている。

……絶対怨霊とか潜んでるよね……これ……

「いやぁ……シュラスさんが何て言うか……悪霊とかいそうだけど……」

「悪霊なんてシュラスさんならチョチョイのチョイだよ! 」

「いや……シュラスさん絶対断ると思うよ……立地だってそんなに良くないし……」

「むぅ……なら仕方ない……次行こう! 」

そんな調子で二人は物件探しを続けた。

数十分後……

二人は物件探しに手間取っていた。

「んなぁぁぁ! いい物件が見つからないよぉ! 」

「いや……ルーミちゃんのチョイスが悪いだけなんじゃ……」

エルがそう言うとルーミは怒った。

「じゃあエルちゃんが決めてよ! さっきから私ばっかり提案してるじゃん」

「わ、 分かったよぉ……」

そう言ってエルはルーミと共に物件を探しながら街を歩き回った。

そしてしばらく歩いて数分……

「……ん? あの家は……」

エルは一軒の家に目が留まった。

それはレンガ造りの小さな館のような物件だった。

……辺りはあまり密集していない住宅街……それでもって市場とギルドに近い……あまり大き過ぎず丁度良さそうな規模……

「ねぇ、 あれは……どうかな? 」

エルはその物件を差した。

「あれ? うーん……良さそうだけどもう契約済みなんじゃ……」

そう言いながらルーミはその物件の玄関に貼ってある張り紙を見た。

そこにはまだ未契約を表す文が記載されていた。

「やった……まだ買い取られていない! 」

「早速地主に話をしに行こう! 」

喜びを顕わにしながら二人は契約をしに向かった。

その後、 二人は無事契約を終わらせ、 晴れて新しい拠点を手にした。

「絶対気に入りますってシュラスさん! 」

ルーミは早くシュラスに見せたいと言わんばかりにシュラスの手を引いた。

「お前が言うと期待できんのだが……」

シュラスは少し不安そうにルーミに付いて行く。

まぁ……確かに……

そして……

「じゃじゃーん! 」

シュラスはエルとルーミが買い取った物件に着いた。

「……どう……でしょう……シュラスさん」

エルは不安そうにシュラスの顔を見た。

「……ほう……悪くない……」

シュラスの一言にエルは安心した。

「エルが決めたのか? 」

「そうだよ! エルちゃんが見つけたの! 」

何でルーミちゃんがドヤ顔するんだろう……

するとシュラスはエルの頭を軽くポンっと叩いた。

「ルーミにだけに任せなくて正解だったな……」

そう言いながらシュラスはフッと笑った。

「えぇ何か私のイメージ酷くないですか! ? 」

「イメージを良くしたかったら言動と行動を弁えろ……」

そう言ってシュラスは玄関を開けた。

「とにかく……これで俺達の拠点は決まりだ……」

「……そうですね! 」

そして三人は新しい拠点の中へ入っていった。

続く……

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