3、ラブ...違った、テンプレストーリーは突然に。
俺は今ダンジョンの入り口に来ていた。
ダンジョンの見張りをしている衛兵のジョンにギルドカードを見せて中に入る。
ここも2年間来ているからお手のものだ。
「クロさん。
ソロなんだから気を付けて行ってきてくれよ!帰ってきたら一杯やろうぜ!」
「あぁ!そうだな。でも割り勘だぞ!」
「冒険者の癖にケチくせー事言うなよ!まあ、わかった。割り勘な!」
「万年Cランクの俺にたかるなよ。公務員様。じゃあ、後でな。」
俺は衛兵のジョンに挨拶をしてダンジョンに潜った。
何百回と行き慣れているダンジョンだから俺は迷わずにグイグイと進む。
1階層から5階層までは、ゴブリンやウルフやスライムっていうモンスターが出る。
無視してもいいんだが、何かドロップするかもしれないから相手をしていた。
今は金がないからな...。
換金率が安いドロップ品でも数があればそれなりなる。チリ積も作戦である。
でも、ここら辺のモンスターは弱すぎてあくびが出るほど暇だ。剣を使うまでもない。
デコピンで大体のモンスターは絶命する。
俺は次々と襲いかかってくるモンスターを小さな虫を払うように相手をし、絶命させていった。
そして、6階層に来た時にダンジョンの空気が変わった。
「あぁ...。
これはどこかでモンスターが大量に沸いてるな。
どこかのバカな冒険者が罠にでも引っ掛かったか。まぁ、俺には関係ないが...。」
俺は気にせずダンジョンを進んでいく。
すると前から冒険者達が焦った様子で走ってきた。
「ハァハァ!!この先はヤバイ!
ドジっちまってモンスターが溢れ出しちまった。アンタも逃げた方がいいぞ!!」
「ご親切にどうも...。俺は大丈夫だ。」
そう言いながらドジをした冒険者達が俺の横をよぎろうとしていたのだがあることに気付いた。
あれ...?ちょっと待て。
こいつらどこかで...。
あぁ...。ギルドで胸くそ悪い事をしていた奴等か。俺はやつらの異変に気づく。
「おい、お前ら。
連れていた新人の冒険者はどうした?」
「知らねーよあんな使えない奴!!
お、俺達は逃げるからな!!」
冒険者達は逃げていった。
あの新人冒険者は囮にでも使われたか...。
これだからパーティーっていうのは嫌なんだ...。
その行為に胸が締め付けられる。
「糞が...。死ぬなよ...。」
俺は夢中で走り出した。
猛スピードで駆け抜けるとモンスターに追い詰められて腰が抜けている新人冒険者を見つけた。
「畜生、畜生ォォ!!
騙された...。こんなところで、こんなところで死ぬなんて...。」
新人冒険者が絶望の愚痴を涙ながらこぼす。
「大丈夫。お前は死なないさ。」
「え?」
俺は新人冒険者に一声かけて、モンスター達に一閃。
鞘に付いたままの剣を一振りするとモンスター達は吹っ飛んでいった。
怯えるモンスターに追撃をし、次々と倒していく。
物の1分もしないうちに100匹近いモンスターを殲滅した。
俺はホクホク顔で倒したモンスターのドロップ品を収納していき、新人冒険者にキメ顔をかます。
「ほら、死ななかったろ?」
圧倒的強者の戦いに呆然とする新人冒険者。
ハッと意識を取り戻し、
「あ、あの...。命を救っていただきありがとうございました。」
「あぁ。
ってかお前さ、パーティーはちゃんと選んだ方がいいぞ。
あんな糞なパーティーに入っているとろくな人間にならないぞ...。って聞いてる?」
新人冒険者はうつむき細々とした声で話す。
「は、はい...。そうですよね...。
でも僕弱くて...。
足手まといだから荷物持ち位しか出来なくて...。」
「ならなんで、冒険者なんかしているんだよ?弱いの自覚しているなら止めて違う仕事をするって選択肢もあるだろう。」
新人冒険者は涙目になりながら真っ直ぐ俺を見てきた。
「冒険者は僕にとって夢なんです。
子供の頃から...。僕の父も母も冒険者でした。
そして、両親の冒険の話を子供ながら聞いていて僕も冒険者になりたいって...。
でも現実は厳しかった。」
新人冒険者は顔を下げた。
「少年。顔を上げろ。冒険者になるのが夢だったんだろ?
そんな簡単に夢を諦めていいのか?」
「諦めたくない...。諦めたくない!!」
新人冒険者は拳を強く握った。
「そうだ!その意気だ!少年、一緒に来るか?」
俺は新人冒険者に手を伸ばした。何か放っとけなかった。
「トーマス...。僕の名前は、トーマス・ポビタです。」
「そうか...。俺の名前はクロム。宜しくな、トーマス。」
「はい!宜しくお願いします!」
2人は固く握手を交わした。
握手をしたクロムは悪い顔をする。何故なら彼はただただ便利な荷物持ちが欲しかっただけだったのだ。
しかしこれが運命の出会いの一つなった事は、今のこの2人は知らなかったのだった。