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黒の剣鬼  作者: 一ノ瀬 遊
20/21

20、スラムの最後。


外れた顎をはめ直した俺は、


「ほ、人造人間(ホムンクルス)なんて本当にいるんだな。」


「まあ、まだまだ未完成ではあるんじゃがな...。」


シャルルはどこか不満そうな顔をする。これで未完成って完成品はどうなんだろう?疑問は尽きないがシャルルは話を戻した。


「それでギルちゃん。大丈夫と言うのはどういうことかの?」


「それはですね。人々を欺いてモンスターを飼っていた事が問題なんですよ。法律で決められてるので。」


「いやいや、それなら農業用やら工業用やらで飼っているモンスターはどうなるんだ?それも一緒だろ?」


「モンスターを飼う事自体は悪いことではないんだよ。ちゃんと届けは必要なんです。

大事なのは欺いたって事。それは隠していたという事なんだ。

それも人間の姿で。

モンスターを人間の姿に変えて使役するなんて重犯罪だよ。

それにちゃんと証拠もあるしね。

良かった、良かった!」


証拠の書類を高々と掲げてご満悦なギルドマスターであった。


「ならドンパッチーニの件はこれでしまいだな。」


「うん、ご苦労様。僕はこれから領主様の所に行って報告してくるから報酬はリリーから貰ってね。ではお母様行ってきます!」


「うむ、気をつけてな。」


「はい。」と言うとギルドマスターは書類を持って転移の魔法を使いその場から消えた。


「ギルドマスターも行ったし、俺達も報酬を貰って帰るか。」


「そうですね。」「そうじゃの。」と俺達は受付に行きリリーから報酬を貰って宿に向かった。そして、無事にシャルルの食事代を払い俺達はそれぞれ部屋に入り休んだ。

さすがに今日はバタバタして疲れた俺は深く眠りについた。

深く眠りについてしまったのだ。

警戒もせずに...。

深く眠りについたまま夜が明けた。



▼▼▼▼▼▼


夜が明けた同時刻。スラム街の教会があった場所では、


「ここここ、これはどうなっている?ワシは夢でも見ているのか?」


装飾をジャラジャラ着けて太った男が馬車から降りて建物があった場所で膝をつく。

そして、怒りでプルプル震えていた。その様子を見ていた馬車で同行していた従者は怯えた。


「....誰だ。こんな事をしたのは誰だ...?ワ....ワシをドンパッチーニと知っての狼藉か?」


「ド、ドンパッチーニ様、落ち着いてください!!」


従者が怒りに狂いそうになっているドンパッチーニを宥めようとするが、


「うるさぁぁぁい!!誰だぁぁ!!誰がやったぁぁぁ!?探せぇぇ!!今すぐ探せぇぇ!!」


「ははは、はいぃぃぃ!!!」


怒り狂ったドンパッチーニを抑えることが出来ずに従者はその場を散って情報を探した。

暫くすると従者はスラム街の住人をドンパッチーニの前に縄で縛って連れてきた。


「ド、ドンパッチーニ様!!この住人が何かを知っているみたいです!!」


「ほぉぉぉぉ!!」


眉間にシワを寄せてドンパッチーニは住人に近づく。


「は、は、話しますから!!どうか、どうか命だけは....!!」


住人は恐怖でブルブル震えている。その物陰からは他のスラムの住人達や元Bランク冒険者のガラームも固唾を飲んで見守っていた。


「....話せ。誰がやった?ワシの家を壊したのは誰だ?嘘をつけば命はないと思え。」


「ははは、はい!!ド、ドンパッチーニ様の屋敷を吹き飛ばしたのはさ、3人組の冒険者でした。」


「冒険者だとぉぉ?」


「ははは、はい!!なんか書類のような物をドンパッチーニ様の屋敷から持って出て来まして、その後にその出てきた1人の冒険者が建物を吹っ飛ばしました...。これが全てです...。」


「そうかぁぁ...。」


「わ、私は全て話しました!!どうか命だけは!!助けてくださぁぁい!!」


事の顛末話した住人は泣きながらドンパッチーニに懇願している。


「...なるほどなぁぁ。ワシの屋敷が壊されてた時お前ら住人は何をしていたのだぁ?あぁ?」


「い、いや、そそそそ、それは...。」


「もうよい...。

どうせ書類を持っていかれた時点でワシは終わったんだ...。

どうせ終わるなら....どうせ終わるならぁぁ!!こんな街全て焼き尽くしてやるわぁぁぁ!!」


ブチキレたドンパッチーニは魔力を帯びた装飾を叩きつけて溢れた魔力を吸収していく。そして吸収した魔力を暴発させた。


暴発させた結果、ドンパッチーニを中心に大きな爆発が起きた。

目の前にいた住人や自身の従者や見守っていた住人や元Bランク冒険者のガラームも爆発に巻き込まれて命を落としてしまった。

爆発の影響でスラムは焼け野はらに変わってしまったのだ。


そしてドンパッチーニは姿形が変わり大きな翼を羽ばたかせて街の中心部に向かうのだった。



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