緑色
話は川岸に戻るのだが、私はあの腐ったひねくれ小僧に捨てられてから、ほんと生意気な生き方をしてきたもんだぜ。川岸の雑草を食べては、まずいと口から吐き出してまたお腹が空いては、雑草を食う。そんな生活さ。なんなんだこの世界は、なんて不条理なんだ。私は、人間の言葉を操れる、それも私の心の中だけでだ。犬に心があるわけがないだろう?そう思った輩の一人があなただとしよう。いやいや、犬にもちゃんと心があるのさ。ただそれは、犬の世界では心と呼ばれていないだけで心というのは存在するのさ。そう、人間のあんたらに伝えるためには「心」っていう文字、強いて言えば線の集まりって言った方がわかりやすいだろう?そう思って、心って言ったのさ。私は、人間に支配されたこの世界が大嫌いさ。あのひねくれ生意気小僧のことも大嫌いだ。そして、ガバムマーの奴らも大嫌いさ。だけんど、オートの奴らは私の仲間さ、そう思っていたよ。だけど、驚いたことに私を助けてくれたのはガバムマー出身の人間だったよ。それが、今の相棒、アムホムさ。そう、彼の名は、アムホムというんだ。彼は、川岸で鉄ハイプに繋がれている私を見てこう言ったんだ。
「誰が、こんなことを。今、ほどいてやるからちょっと待ってろよ。くっ、なんだこの紐。頑丈に繋がれてやがる。くっ、どうなってんだこの結び方。待ってろよ、今解いてやるからなぁ、えぇぇぇい!!」
そう言って彼はやっと私の紐を外して、私を自由にしてくれたんだ。私は、礼を言ったつもりだったんだが、どうやら彼には届いていないようだぜ。
”ベギベギ”。
きっと、そう聞こえてたんだろう。そこんところ、ちょっと悲しいぜ。アムホムは、背が高くて若いくせに杖をついてやがる。そして、極め付けはなんと言っても彼の尋常じゃないほど長い髪の毛さ。どうやら、そこらへんにいる女子の髪の毛よりも長い気がするぜ。なんだが、女に見えはするんだけど声はまるきり男の声で、限りなくバイクの発進音に似ている。そう、私の鳴き声と同じくらい変な声なのさ。彼は、元ガバムマーの二十六歳の男で、ベルソノカにあるグランゼユニバル、まあ今の君たちが知っている言葉で言えば大学みたいなもんだけど、で一番理性強化に評判の高いラデケセスグランゼユニバルを主席で卒業するほどの理性の持ち主だったんだぜ。だから、俺の相棒は超天才なんだ。ここからは、私が聞いた限りでの相棒の生い立ちってのを君たちに教えるよ。それから、私たちアムホムとナルンチョスの”本当の”旅は始まるんだ。