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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第846話:希望を紡ぐ決戦


「馬鹿な……ラムダ=エンシェントが復活した……!?」

「どうやら……“希望”は潰えていなかったようじゃの……!」



 ――――“星騎士セイクリッド”ラムダの復活は帝都ゲヘナに、戦場全域へと届けられた。“絶望”を演出したいと考えたスペルビアの()()が祟り、ラムダ=エンシェントの復活を全域に“証拠(映像)”として流してしまったのだ。

 戦艦ラストアークの甲板上で戦っていた者たちも同じだ。ラムダの帰還に一喜一憂している。エージェントたちは明らかに動揺し、グラトニスたちの表情は明らかに活気付いていた。



「そんな……あり得ないです! ラムダ=エンシェントには、スペルビア様のようなわたくしたちの“加護”は存在しない筈……なのに……!」


「自分の主人を信じていないのかしら、貴女?」

「――――ッ! 黙れ、口ごたえをするな!」


「彼は……ラムダ=エンシェントはいつだって“希望”を求める。それこそ……全てに絶望して“死”を切望していたわたくしを救ってしまう程には……」


「うるさい、うるさい、うるさい……!!」


「貴女たちの“加護”だとのたまう感情は()()()()……その感情はスペルビアを苦しめる“呪い”だと自覚なさい、コレット=エピファネイア!!」



 ラムダ=エンシェントの“死”と共にラストアーク騎士団は絶望する。そうスペルビアもエージェントたちも考えていた。だが実際は違う……ラムダの退場をものともせずに騎士たちは奮起していた。



「私たちの想いが“呪い”ですって……!」


「そうさ、“呪い”だよ……それは。ラムダくんは誰よりも他者の幸福を望み、『護りたい』と無償の愛を注ぐ。そんな彼の“愛”につけこんで君たちは彼を失墜させた」


「違う……違うわ!! だって私たちは……」


「死した筈の君たちが、死人ゾンビになってでも庇護ひごを求めている。ならば……ああ、ラムダくんは死ぬ訳にはいかない、()()()()()()()()()。それが君たちの“罪”だ、リリエット=ルージュ」


「そんな筈ない……だってそうじゃないと……」



 そして、ラムダ=エンシェントが復活した事で、ラストアーク騎士団の団結はより強固になった。一度死した騎士が蘇ったのだ、さながら“救世主メシア”のように。もはやラムダ=エンシェントは“()()()()()()であり、彼が存在している限りラストアーク騎士団の誰一人として絶望する事はない。



「ラムダ殿が立ち上がり続ける限り、どんなに傷付こうがそれがしたちも立ち上がり続ける。ラムダ殿が頑張り続ける限り……それがしたちも頑張ろうと思うのでござる……!」


「それはスペルビア様とて同じですわ!」


「いいや……まったく違うでござる。スペルビアは破滅しかもたらさないでござる……破滅をもたらす再起を許容してはならない。それがしはラムダ殿からそれを教わった」


「わたくしたちは……許されないと言うの!」


「そうでござる。貴殿たちの感情がささやかな“愛”に基づくものだったとしても……それは『免罪符』にはならない。アロガンティア帝国を攻め滅ぼした時点で、貴殿たちは斬られなければならなくなった!」



 一方で、エージェントたちの支配は揺らぎ始めていた。自分たちが信奉する、()()()()()()()()()()()スペルビアが否定され、ラムダ=エンシェントに倒されること……それはエージェントたちの“罪”を告白するような事だったから。

 エージェントたちは認めてはならない、ラムダ=エンシェントの存在を。スペルビアという“傲慢の魔王”こそが正しいのだと彼女たちは胸を張って言わねばならなかった。だが、それはもう叶わない願いだ。



「イレヴンは剣を握るのは()()()()()()()()……たったそれだけ。彼は見返りは求めない……無論、私たちが差し出した報酬を拒みもしませんが」


「だったら何なのだ!」


「イレヴンの理念は“救済”を……我々に“赦し”を与えること。だから私は彼を信頼するのです。彼こそが、私が求めていた“理想”の存在なのだと……今なら胸を張って言える」


「そんなのは……そんなのは……!!」


()()()()()()()()()()()()()()……アウラ=アウリオン。だけど貴女たちはその理想を()()()()()()()()。自分たちの“死”で彼が諦めないようにした……彼を死ねない身体にして」



 エージェントたちはラストアーク騎士団の猛攻に押され始めている。ラムダ=エンシェントという精神的な“支柱”を取り戻したグラトニスたちと、スペルビアの絶対性という“支柱”を失ったエージェントたちの間で“差”が生まれるのは必然であった。



「そなた達がせねばならなかったのは……敗北したラムダを慰め、その絶望を赦す事じゃった。じゃが……そなた等はあろう事か孤独になったラムダに()()()()()()を強要した。それはアヤツ、スペルビアにとっては“地獄”以外のなにものでもない」


「…………僕たちが悪いとでも言うのか?」


「そうじゃ、よく分かっているの。儂が宣言しよう……()()()()()()()()()、エージェントどもよ。ラムダ=エンシェントを唆して“悪”へと染め上げ、スペルビアにアロガンティア帝国を滅ぼさせた“罪”……ここで贖うが善いわ!!」


「黙れ……いつからお前たちは“正義”になった!」


「これは“裁判”ではない……儂等がやっているのは“復讐”じゃ! そなた等に蹂躙された、殺された人々の無念……死者に代わり儂等が果たさせて貰う!!」


おごたかぶり……傲慢が過ぎるぞ、グラトニス!」


「それは自己紹介かの……ミリアリアよ? そして儂等は決して驕っておらん……真の傲慢とは、自らを“正義”だと信じて疑わんそなた等のような者を言うのじゃ、このたわけめが!!」



 グラトニスの猛攻を前にエージェント・ブレイヴは苦戦を強いられていた。彼女の左腕、鋭利な刃物へと変化した“喰魔ベルゼブブ”による強烈な斬撃、小さな躯体からは考えられない強烈な“武芸マーシャルアーツ”を前に、エージェント・ブレイヴの折れた聖剣だけでは抵抗できなかった。



「そら、そらそらそらそら! どうじゃーーッ!!」

「うっ……このぉ……! この僕がこんな事で……」



 “喰魔”ベルゼブブの斬撃を防いだ瞬間、華奢な右脚から強烈な蹴りが繰り出される。蹴りをバックステップで躱したと思った矢先、今度は踏み込んで距離を詰めつつ身体を回転させての左脚からの回し蹴りが放たれる。



「ぐっ……!? くそ……こののじゃロリが!」

「儂を童女と侮るなよ、クハハハハハ!!」



 脇腹にグラトニスの蹴りを喰らい、エージェント・ブレイヴは苦悶に満ちた声を上げながら吹き飛ばされる。

 その隙をグラトニスが逃す筈もなく、彼女は甲板を強く蹴って加速しながら“喰魔ベルゼブブ”を怪物の頭部へと変化させた。そのままエージェント・ブレイヴの頭部へと喰らいつき、彼女の頭部を貪ってトドメを刺すために。



「これで終いじゃ、ミリアリアよ!」


「くっ……旗艦アマテラス!! 今すぐに支援砲撃を実行せよ!! 僕たちを守れ、今すぐにだ!!」


「――――ッ!? そなた正気か!?」


《命令受諾……これより戦艦ラストアークに向けて砲撃を開始します。全武装、ラストアークに照準合わせ》


「僕たちが死んだら……誰がスペルビア様を支えるんだ! 僕たちは勝つ……僕たちが存在する限り、スペルビア様は()()()()()()()()()()!! ハハハ、アハハハハハハハッ!!」



 だが、そんなグラトニスを阻むように旗艦アマテラスから砲撃が放たれた。旗艦アマテラスは戦艦ラストアークとの距離をさらに詰めて電磁障壁の“孔”を拡大させ、その“孔”を縫うように砲撃を撃ち込んでいく。

 戦艦ラストアークの甲板上に旗艦アマテラスから撃ち出された砲撃が降り注ぎ、爆発が巻き起こっていく。砲撃に巻き込まれた帝国兵たちが呆気なく死んでいく。



「味方もろとも……正気か、そなた!?」


「アハハハハハハハ! 構うものか、僕たちが無事ならそれで良い! 僕たちさえ残っていればスペルビア様は永遠に不滅だ! アハハハハハハハ!!」


「それが“呪い”じゃと言うとろうに……このたわけが!」



 降り注ぐ砲撃は敵味方区別なく爆撃していく。砲撃を防ぐ手段を持たない帝国兵たちは次々と倒され、エージェントたちやグラトニスたちは魔力障壁を張って砲撃を耐え凌ぐしかなかった。



「このままではそなた等も全滅じゃぞ!」

「それがスペルビア様の勝利に繋がるなら本望だ!」



 エージェントたちは爆撃で諸共死ぬことをいとわない。それは自分たちが仮に倒されても、スペルビアを復活させる蘇生術式の“かなめ”としての存在、エージェント・スペスが健在であるからだ。

 自分たちの存在と引き換えにラストアーク騎士団を葬れればそれで良い。そんな考えの元、エージェントたちは相討ち覚悟の自爆を仕掛けていた。



「このままでは儂等もやられるのじゃ……!」

「――――ッ! 何をする気、シリカ!?」


「――――グォォオオオオオオオッ!!」


「――――ッ!? “黙示録の竜(アルテリオン)”が奴等の盾に……!」

「やめんか“黙示録の竜(アルテリオン)”! そなたが死ぬぞ!」



 そんな切迫した状況の中で、帝国兵の足止めを続けていた“黙示録の竜(アルテリオン)”が決死の行動に出た。赫き竜は甲板上に舞い上がると、その巨体を“盾”にしてグラトニスたちを護り始めたのだ。

 胴体で、尻尾で、翼で、その頭部で砲撃を受け止めて仲間たちを護り通している。その光景にエージェントたちは竜の“死”を期待して、グラトニスたちはその身を案じて、“黙示録の竜(アルテリオン)”の献身を固唾を呑んで見守る。



「――――ッ! ォォォオオオオッッ!!」

「シリカ……そなたは……!!」


《“黙示録の竜(アルテリオン)”、撃破しました》


「――――よし! 良いぞ、そのまま攻撃続行だ」

《イエス、マイ・ロード。攻撃を続行します》



 そして、数百発もの砲撃を受けた“黙示録の竜(アルテリオン)”は爆発に飲まれてその姿を暗ませた。戦艦ラストアークの甲板上を大爆発が覆い、誰もが“黙示録の竜(アルテリオン)”の死を覚悟した。



 その次の瞬間だった――――


形態変化モード・チェンジ……シリカ=アルテリオン、出撃」

「な……“黙示録の竜(アルテリオン)”が人型になっただと!?」


 ――――黒煙の中から“彼女”が現れたのは。



 現れたのは、メイド服を着こなし、紅き髪を風になびかせ、紅き翼で宙を舞う、金色こんじきの瞳をした“竜人ドラグニュート”の少女。それはかつてラムダ=エンシェントに仕え、一度は天空大陸で死した竜の化身。



「わたし……復活……!!」



 その名はシリカ=アルテリオン――――アーティファクト“黙示録の竜(アルテリオン)”より生まれし“偽りの姿”。ラムダ=エンシェントに“希望”を見出した少女が帰還した瞬間だった。

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