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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第834話:VS.【傲慢の魔王】スペルビア② / “Immortal”


「喰らえ――――“アストラル・フルバースト”!!」



 ――――スペルビアが俺に向けて放ったのは、複数のアーティファクト武装から繰り出される無慈悲な“一斉射撃フルバースト”。帝都ゲヘナの街を眩く照らす“死”の光が俺に向かって迫りくる。

 憤怒兵装ラース、暴食冥道グラトニー、傲慢竜撃砲プライド、強欲相転移砲グリードからの砲撃、さらに空中に展開された戦輪チャクラムからも大量の光弾が撃ち出されている。



(あれは捌ききれない……回避しないと!)



 目視で確認できるだけでも弾幕はたったの数秒で数百発も発射されていて、なおもスペルビアは射撃を続けている。とてもではないが俺一人で全ての弾幕を捌き、躱し、防ぐきる事は不可能だ。



「ルミナス・ウィング、加速開始……!!」



 棒立ちしていてはスペルビアの“一斉射撃フルバースト”の圧倒的な物量に圧し潰されてしまう。俺は少しでも迫りくる攻撃への被弾を抑える為、スペルビアから距離を取るように加速して飛翔を開始し始めた。

 同時に、さっきまで浮遊していた場所が光弾によって覆われ、周囲に建物が被弾とともに爆発崩壊していく。それを尻目に見ながら、俺を追ってくる攻撃をなんとか回避しながら、俺は市街地を飛び続ける。



「躱すのか? 無関係な人間が巻き込まれるぞ」



 俺の行動はスペルビアに読まれていて、回避行動すら“罠”であるとも気が付かずに。スペルビアが嘲笑うように語り掛け、俺はふと視線を背後に向けてしまった。



「あっ…………」



 俺の背後に広がっていた光景は“地獄”だった。さっきまで俺を狙っていた狙撃手たちが建物ごと砲撃に巻き込まれて死んでいった。インペルティ宮殿へと向かっていた義勇軍たちが砲撃に巻き込まれて死んでいっている。



「やめろ……」



 帝都ゲヘナからの脱出を目指し、戦場に背を向けて走り続けている市民たちが砲撃に巻き込まれて次々と命を落としていく。スペルビアが狙ったのは俺だけじゃない、視界に映る全ての人間を攻撃対象にしていた。

 降り注ぐ弾幕が市街地を次々と爆撃し、阿鼻叫喚あびきょうかんの悲鳴と何もかもを燃やす焔が至る所から響き渡る。ほんの一瞬の間に、数え切れない程の人命が奪われた。



「やめろ……やめろォォーーーーッ!!」



 気が付いた時には、俺は空中で反転してスペルビアに向かって飛んでいた。迫りくる弾幕を手にした剣で無我夢中に斬り裂きながら。

 今すぐにスペルビアの攻撃をやめさせないともっと多くの、死ななくても良い筈の人命が失われる。それだけはどうしても許せなかったからだ。そんな俺の行動を待っていたかのように、スペルビアはインペルティ宮殿の真上から動かずに俺が突撃するのを待っている。



「スペルビアーーーーッッ!!」

「そうだ……お前は“罪”からは逃げられん」



 大きく空中へと飛び上がって弾幕を躱し、狙いを上空に向けさせて少しでも市街地への被害を減らさせ、俺はそのままインペルティ宮殿の真上を陣取るスペルビアに向かって急降下していく。

 そんな俺の浅はかな、衝動的な行動を待っていたかのようにスペルビアは狙いを上空に向け、無数の弾幕を俺へと向ける。



「――――ぐッ!? ……あぁぁーーーーッ!!」



 迫りくる弾幕を聖剣と魔剣で弾いていたが、戦輪チャクラムから放たれていた光弾の一発に被弾してしまった。皮膚と肉を灼くような高温と爆風が襲い掛かり、全身に激痛が駆け巡る。

 着込んでいた戦闘服はボロボロになり、右腕は焼け焦げ、生命いのちの灯火が弱まっていく。それでも、死んでいないだけマシだと、まだ戦えると歯を食いしばって痛みに耐え、スペルビアへと距離を詰める。



「やめろ、テメェーーーーッ!!」

「なら私を止めてみろ」



 剣の間合いまでスペルビアへの距離を詰め、射撃を躱すように背後の瞬間移動ワープして、俺はスペルビアの背後から斬り掛かった。

 だが、俺の動きを読んだスペルビアは即座に真上に跳躍して俺の斬撃を回避する。



「フッ……!!」

「――――オォッ!!」



 スペルビアが右腕に装備していた、砲撃機構に変化させたいた憤怒兵装ラースの砲身を俺へと向け、俺はその砲身を魔剣を素早く振り抜いて弾いた。次の瞬間、砲身から放たれた砲撃が脇を掠めて飛んでいき、射線上に在った教会を破壊していく。



「なら次は……」

「させるかァ!!」



 攻撃を弾かれたスペルビアは続けざまに左手に装備した暴食冥道グラトニーを動かそうとした。だが、スペルビアが攻撃に入る前に俺は飛び上がって攻撃を仕掛け、聖剣と魔剣を振り上げてスペルビアが両腕に装備していた武装を斬り裂いた。



「――――チィ!!」



 憤怒兵装ラース、暴食冥道グラトニーを斬り落とされたスペルビアは悪態をつきつつ両武装を放棄、再び右手に“神殺しの魔剣(ラグナロク)”を装備して俺の追撃に備える。



「うぉぉ!!」

「ふん……!!」



 両腕を振り上げた勢いを利用して、スペルビアの顎に向かって俺は右脚を勢いよく蹴り上げる。だが、俺の攻撃を読んでいたのか、スペルビアは顎を上げて俺の蹴り上げを紙一重で躱して見せていた。



「お前の攻撃なぞ読めている……」



 蹴りを躱したスペルビアは魔剣の刀身に魔力を込め、俺の胴体を狙って大きく魔剣を振り被る。腕は振り上げたまま、このままではスペルビアに一刀両断されてしまうだろう。



「まだまだァァ!!」

「――――ッ! 宙返りを……!」



 だが、俺はさらに背部の翼から推進力を得て加速し、瞬きよりも疾く動いてスペルビアの斬撃を紙一重で躱してみせた。

 そして、そのまま弧を描くように空中で素早く宙返りをし、そのまま聖剣と魔剣を突き立ててスペルビアへと突撃をする。



「ふん、狂犬が……!!」

「死んでも喰らいついてやる!!」



 スペルビアは手にした魔剣の刀身で俺の魔剣による刺突を受けて防ぎ、聖剣の刀身を右手で掴んで無理やり防いでいた。そのまま俺とスペルビアは空中で膠着状態になる。



「喰らえ――――“視閃光コンタクト・ビーム”!!」

「なっ……!? ぐぅ!?」



 膠着状態に陥った瞬間、俺は右眼の義眼からビームを発射してスペルビアを攻撃、頭部のヘルメットにビームを受けたスペルビアは小さくうめき声を上げながら僅かに仰け反っていた。

 ヘルメットの一部が破損し、スペルビアの生気の無い素顔が、堕ちた『ラムダ=エンシェント』の左眼が俺を睨みつける。



「諦めが悪いぞ……貴様ァァ!!」



 スペルビアが怨嗟に満ちた絶叫を響かせる中、俺はもう一度右脚を振り上げて攻撃を仕掛ける。今度の狙いはスペルビアの左腕だ。

 そして、蹴り上げた右脚は思惑通りにスペルビアの左腕を弾き、頭部と左腕に攻撃を加えられたスペルビアは姿勢を大きく仰け反らせて姿勢を崩した。



固有ユニークスキル【煌めきの魂剣ヴィータ・フルジェント】――――発動!!」



 スペルビアに受け止められた聖剣と魔剣から手を離しながら俺はその場で素早く宙返りをしつつ、左手に自身の“魂”を形成した蒼いつるぎを握り締める。



 そして、スペルビアが反撃しようと首をもたげた瞬間を狙い――――


「悪を断ち斬れ――――“蒼炎刃そうえんじん”!!」

「ぐっ……おぉッ!!?」


 ――――素早く剣を振り抜いてスペルビアの首を斬り落とした。



 蒼い一閃はスペルビアの首を切り裂き、同時にスペルビアの頭部が胴体から切り離されていく。反応が遅れたのだろう、スペルビアは信じられないような驚愕の表情かおをしたまま絶命していた。



「やった……!!」



 スペルビアの首は空中に投げ出され、スペルビアの胴体はそのままちからなく真下へと落下し始める。手応えはあった、圧倒的な力量の差を覆してスペルビアを倒すことができた。

 切断された頭部が黒い灰になって消滅し、インペルティ宮殿の屋上に落下したスペルビアの胴体が動かない事を確認し、俺は自身の勝利を確信した。



「後はエージェント達を倒して、アロガンティア帝国軍の催眠を解除すれば戦いは終わる。ステラが祖国を取り戻せる……俺の過ちを償える」



 スペルビアの胴体の側に着地し、息を整えながら俺はこの後の事を考えていた。残すエージェント達を倒し、アリステラの祖国奪還の願いを叶える事を。



《スペルビア様……起きて。まだ諦めないで……僕たちが付いているよ。あなたは……こんな所で諦める人じゃないはずだ》


「なんだ……この声? アリア……?」



 だから俺は見落としてしまった。スペルビアという男の、もう一人の『ラムダ=エンシェント』の恐るべき“執念”を。

 突如、ミリアリアの声が幻聴のように聴こえ、周囲に白いもやのような煙が立ち込め始める。だが周囲には誰も居ない、在るのは頭部を失ったスペルビアの胴体だけだ。



《スペルビア様……起きてください、スペルビア様》

《私たちが付いています。さぁ起きて……》


「なんだよこれ……!? なにが起きて……!?」


《まだ死ぬには早いのだ、スペルビア様……》

《わたくしたちがいます。さぁ、立ちあがって……》



 白いもやが霧のように濃くなって立ち込めてくる。視界は完全に覆われ、俺は霧の中に閉じ込められてしまった。

 霧の中でコレットの、リリィの、アウラの、レティシアの声が木霊こだまする。全員がスペルビアに立ち上がるように囁いている。その光景に俺は僅かに動揺してしまった。



 そして、そんな俺の背後に――――


「そうだ……私はまだ諦めない。死ぬ訳にはいかない」

「――――ッ!? この声……まさか……!?」


 ――――死んだ筈の男が立っていた。



 振り向いた先にはスペルビアが立っていた。切断された筈の頭部はいつの間にか復活し、割れた装甲から禍々しい金色こんじきの左眼が俺を凝視している。

 右手に握った魔剣が地獄の亡者たちの嘆きのような怪音を響かせて、刀身からおぞましい魔力を放っている。あり得ない、確かに倒した筈の男が、まるで()()()()()()()()()()()()その場に佇んでいた。



 そして、目が合った次の瞬間――――


「死ぬのは貴様だ、ラムダ=エンシェント……!!」


 ――――スペルビアが勢いよく振り抜いた魔剣が、俺に襲い掛ってくるのだった。

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