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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第828話:Jūpiter


「もうすぐ地下区画への入口に着くわ!」

「知っています、アリステラさん!」



 ――――インペルティ宮殿、地下区画連絡口。スペルビアとの無謀な一騎打ちに臨んだラムダ=エンシェントと別れ、ノア、ジブリール、アリステラの三名は“機神”が安置された帝都ゲヘナの地下を目指していた。



「侵入者を地下へと向かわせるな! 撃て撃てェ!」


「くっ……目を覚ましなさい、アロガンティア帝国の誇り高き兵士たちよ!! 真なる敵は我が母を殺めた大罪のスペルビアの筈! 今こそが廻転かいてんの時の筈なのに……!」


「トルーパー、射撃を確認。迎撃します」


「無駄ですよ、アリステラさん。帝国兵のほとんどはスペルビアさんが持つアーティファクト『エクスギアス』による“絶対催眠”に支配されています。言葉だけで彼等を目覚めさせれるなら誰も苦労なんてしないですよ……」


「おのれ、スペルビア……どこまで卑劣なの!」


「今は帝国兵たちを気絶させて無力化するのが精一杯でしょう。ジブリール、攻撃は全て“非殺傷スタンモード”に設定。もう誰も殺しては駄目……次の“布石”を打ちなさい」


「命令受理……全武装を“非殺傷スタンモード”に設定します」



 前から迫りくる、背後から追いかけてくる帝国兵たちを気絶させつつ、ノアたちは地下へと続く扉を目指して駆け抜けて行く。

 ノアとアリステラは言いようのない焦燥感に駆られていた。無論、たった一人でスペルビアに戦いを挑んだラムダを案じての事だ。



(ラムダさんがスペルビアさんに勝てる可能性は……ハッキリ言って“(ゼロ)”。実力、精神力……どれをとってもスペルビアが上手。それに……スペルビアさんはラムダさんが忌み嫌う“禁じ手”を躊躇なく使う可能性が極めて高い……)



 ノアはラムダが言った『大丈夫』が()()()()()()()()()()()()()()である事を察していた。今のラムダ=エンシェントではスペルビアには絶対に勝てない、それが人智を超える頭脳を持つノアが出した『結論』だった。

 全身をアーティファクトに換装したスペルビアの方が出力は上、護るものを全て失い自暴自棄と化したスペルビアの精神の方が厄介度は上、高潔さを捨て去り禁じ手を容赦なく使うスペルビアの方が危険極まりない、そうノアは判断していた。



(ジブリールやアリステラさんが束になってもスペルビアさんは止められない。私に至っては……恐怖で身体が竦むただの“足手まとい”。ラムダさんの言う通り、私たちは私たちの成すべき事をするのがもっとも最善の道……)



 ラムダの決断はもっとにかなった判断だった。それをノアも理解している。問題はラムダ自身が“避けられない死”という負担を一人で背負ってしまっている事ぐらいだ。

 だからノアたちは息切れも辞さず、ただがむしゃらに走り続ける。自分たちが愛した男を無駄死にさせない為に、強情を張って『大丈夫』だとうそぶいた男の“嘘”を“真実”の言葉にする為に。



「ノア様、前方に巨大な鉄扉が見えてきました」

「地下への扉だ……って、もう開いてる!?」



 そして、数多の帝国兵を薙ぎ倒し、ノアたちは遂に地下区画へと続く鋼鉄製の扉の元へと到着した。そこで彼女たちを待っていたのは驚きの光景だった。

 本来、アロガンティア帝国の皇帝にしか開く事の許されない扉がすでに開かれている。“機神”の眠る地下へと続く螺旋階段は露わになって、ノアたちを手招きするかの如く大きくくちを開けている。そんな扉の入口で、ノアたちを待っている人物が一人いた。



「おねーちゃん、待っていたよ!」

「パーノちゃん、無事だったんですか!?」


「ふっ、ディクシアお姉様に遅れを取るパーノではないのです! 上手に逃げ切り、おねーちゃんが戻ってきてくれたタイミングで扉を開けておいたのでした! パーノ偉い!」


「パ、パーノ……本当に生きて……!?」


「むっ、アリステラ……やっと帰ってきた。わたしを待たせるなんて情けないお姉ちゃん。けどもっと喜んでいい。パーノは生きてる、だからアリステラはなにも悪くない」


「幽霊? いえこれは……“電子体”でしょうか?」



 そこに居たのはパーノ=ユゥ=アロガンティア、アロガンティア帝国第三皇女だ。囚われの身だったノアを救助し、第一皇女ディクシアの足止めを買って出た少女が再び姿を現していたのだった。

 霊体となって浮遊している第三皇女パーノの姿を見て、ノアは安堵の表情を、アリステラは面を食らったような表情かおをしている。一方でジブリールは第三皇女パーノを興味深そうに観察していた。



「アリステラ、早く“機神”と再接続する。その為のコード、フィリアから預かってわたしが持っている」


「あなたが……フィリアのコードを……!?」


「フィリアは信じてた。アリステラが戻って来る事を。アリステラにしかできない……兄様たちの死に、フィリアの死に意味を持たせれるのはアリステラだけ」



 第三皇女パーノは失われたアリステラと“機神”を再接続する為のコードを所有している。霊体である彼女の右のてのひらに、白い片翼を模した紋章エンブレムが輝いている。第三皇女パーノがアリステラの騎士だったフィリア=プロスタシアから預かっていたものだ。

 その紋章コードをアリステラに見せながら第三皇女パーノは語る、死んでいった家族の、道半ばにして倒れたフィリアの死に意味を持たせれるのはアリステラだけだと。



「私が……みんなの死に意味を……」



 差し出された紋章コードにアリステラが手を伸ばす。失われた筈の無二の親友の遺した“意志”を受け取ろうとしていた。もう一度、共に在り続ける為に。



 だが、アリステラが“紋章コード”に触れようとした瞬間――――


《へぇ……なるほど、通りで探しても見つからなかった訳か、第二皇女の“紋章コード”は。テメェが持っていたんだな、第三皇女パーノ=ユゥ=アロガンティア……!!》


 ――――地下へと続く空間に、突如声が響いたのだった。



 まるで拡声器で拡散するように、空間中に響く加工された何者かの声。明らかに敵意が混じったその声に反応し、その場に居た全員が一気に警戒心を高めて周囲を見渡す。



「誰……!? 何処にも居ない……!?」

「この声……まさか……!」


「ジブリール、声の出処を解析スキャンしなさい!」

「命令受理、スキャン開始…………」



 周囲を見渡すも誰の姿も見当たらない。しかし、名指しでパーノを指名した以上、敵対者は直ぐ側まで近付いている。それを察知してノアはジブリールに命じて広域索敵を開始させ始めた。



「これは……! ノア様、上空から高速で何かが接近してきます。大きさは十メートル、鋼鉄の巨人……」


「な、何が近付いているのですか!?」


「少なくとも、何か途轍もなくヤバそうなのが近付いているのは間違いないですよ、アリステラさん。全員、戦闘準備を……敵の狙いは私たちです」



 そして、ジブリールの索敵によって、ノアたちの元に迫りくる“脅威”はすぐに発見された。彼女たちがいま居る空間よりさらに上空、インペルティ宮殿のはるか上から高速で迫りくる十メートル超の鋼鉄の何か。

 その存在が伝えられた瞬間、インペルティ宮殿全体を強い衝撃による揺れが襲い掛かった。ジブリールが感知した何かがインペルティ宮殿の天井を撃ち抜いて、内部へと突撃してきたのだ。その何かは幾層もの天井を貫通しながら、ノアたちの元へと真っ直ぐに迫ってくる。



 そして、最後の天井を打ち砕いて――――


《起動しろ……“天空神機エリュシオン”ユピテル!!》


 ――――その“兵器”はノアたちの前に現れた。



 大量の土埃と瓦礫を伴いながら現れたのは、全長十五メートル程の人型の戦闘兵器だった。淡い金色と朱いフレームで構築された駆体、あおく輝く頭部のツイン・アイ、背部に装着された“翼”を模した巨大な推進器スラスター、両手に全長七メートルを誇る大型のライフルを装備した女神を模した決戦兵器。



《オレの名はエージェント・スペス。スペルビア様に遺された最後の“希望”だ! ノア、悪いがテメェはここで叩き潰す……このオレの“天空神機エリュシオン”ユピテルでなァ!!》


「エージェント・スペス……“天空神機エリュシオン”ユピテル……!?」



 その兵器の名は“天空神機エリュシオン”ユピテル――――ノアが開発した“天空神機エリュシオン”ウラヌスと同型の人型決戦兵器。そして、その兵器を駆るのはスペルビアの副官エージェント・スペス。

 “機神”への到達を目指すノアたちの前に、最後の将校であるエージェント・スペスと、未知なるアーティファクトの兵器が立ちはだかったのだった。

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