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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第827話:それぞれの戦い


「イレヴン、私が援護するわ!」

「分かった、頼りにするぞ、ステラ!!」



 ――――尋常ではないちからを内から放出するスペルビアに対し、俺とアリステラは連携攻撃を選んだ。両手に持った魔銃から弾丸を連射し、アリステラはスペルビアを牽制していく。



「小賢しい……逃げるしか能のない負け犬が……!」



 スペルビアはアリステラの射撃をいなす為に、浮遊する十本の短剣ダガーを出現させた。アーティファクト『光量子自在推進フォトニック・式駆動斬撃刃セイバービット』――――使用者の思考とリンクし、自律して駆動するビット型斬撃兵装。

 俺が用いるのとまったく同じ“駆動斬撃刃セイバービット”を操り、スペルビアはアリステラが撃ち出した弾丸を次々に斬り落としていく。アリステラの攻撃に対し、スペルビアは意識を集中させている。



「ステラばかりに気を取られるなよ、スペルビア!」

「貴様に言われるまでもない、私を舐めるなよ!」



 その隙に俺はスペルビアへと飛び掛かり、左手に握った魔剣と右手に新たに転送した聖剣で一気に斬り掛かった。だが、スペルビアは右手の魔剣を振り上げて、聖剣と魔剣による斬撃を軽々と受け止めてみせた。



「くっ……膂力が違いすぎる……!?」


「私はお前とは違う……全身のほとんどをアーティファクトに換装し、常人では考えられぬ程の圧倒的なちからを手に入れた。我が身かわいさに未だに左腕と右眼しか換装していない軟弱者と同じと見るなよ……!」


「この……!!」


「アリステラは私とお前が違うと言ったな……それは半分正解だ。私はお前よりもさらに上の領域に居る! もう二度と負けない為に、私は自分自身をアーティファクトへと進化させたのだ!!」



 スペルビアは自らの身体の大部分を機械へと換装し、自分自身をアーティファクトへと変貌させていた。本来は生身である筈の右腕も、スペルビアはアーティファクトに置き換えている。それが俺以上の膂力を発揮している理由だった。



「邪魔だ、退け……!!」

「ぐっ……!?」



 スペルビアがちからを込めて右腕を振り上げたと同時に、俺は勢いよく弾かれ、十数メートル後方の礼拝堂の壁に叩きつけられてしまった。

 今の打ち合いではっきりとした、スペルビアはの実力は今の俺よりも圧倒的に高い。アーティファクトの比率を増やした分、俺よりも出力が上がっている。おそらくだが、単独で勝つことはほぼ不可能だろう。



(けれど……ステラたちと連携しても勝てるかどうかは怪しい。もっと決定的な打開策が必要だ……)



 しかし、アリステラやノアたちと連携して、“絆”のちからで勝てるかと言われればそれも怪しい。現状でも、俺とアリステラの二対一でも押し込めていない。仮にウィルたちが加勢しても“五分”に持っていけるかどうかだ。

 加えて、スペルビアにはエージェントたちやアロガンティア帝国軍が控えている。その兵力を加えられれば、俺たちには万が一の勝ち筋すら無くなってしまう。



「まずは貴様から死ね、アリステラ……!!」

「――――ッ!! させるかァ!!」



 アリステラを狙おうとしたスペルビアを斬撃波を飛ばして牽制しつつ、壁を蹴って俺は再度スペルビアへと突撃する。そのかんにも、思考をフル回転させて状況を打開する方法を考える。



(このままスペルビアとだらだら戦っていたら状況はさらに悪化する。ここは当初の作戦通りに……)



 ここでもたもたと戦っていては、本来の目的である『アリステラと“機神”との再接続によるアロガンティア帝国軍の指揮系統の奪還』は果たせない。そうなれば、いつまで経っても状況は良くならない。



「ノア、ジブリール、ステラ! スペルビアは俺が一人で食い止める! みんなは“機神”の所へ向かってくれ!」


「イレヴン……あなた何を言っているのですか!?」


「このままみんなで戦っても、勝てるかどうか分からない。だったら……この状況をひっくり返す手を打つべきだ! それができるのはステラとノア、君たちだけだ!」


「ラムダさん……」


「大丈夫、死にやしねぇよ。悪党に成り下がった自分に負けるほど、俺は弱いつもりはねぇ。だから……みんなはみんなの戦いを頼む! こいつを倒すのは俺の戦いだ!!」



 スペルビアと剣を斬り結びながら、一か八かの賭けに出る覚悟を決める事にした。スペルビアを俺単騎で抑え込み、その隙にノアとアリステラの手で“機神”の奪還を果たす。そうしなければ、“鳥籠”と化した帝都ゲヘナを解放する事は出来ないと判断したからだ。

 当然、アリステラたちは俺の決定に反発している。俺だけではスペルビアに敵わないのを薄々は察しているのだろう。それでも、俺が戦わなくてはならない。



「ふっ……まさか私を一人で相手取るつもりか、ラムダ=エンシェント? 打ち合って理解できているだろう……貴様では私には勝てん!」


「だから諦めろと? 冗談じゃねぇ! 俺にだってなぁ、護りたいものがあるんだよ! 背負っている想い、背負っている“覚悟”ならテメェにも負けちゃいねぇ!!」


「笑止!! 覚悟だけで勝てるとおごるなよ!」


「驕っちゃいねぇ……勝つんだよ!! ステラから故郷を奪ったこと、ノアを傷付けたこと、全部償わせてやる! テメェの“罪”をそそぐのが、俺が果たすべき責任だ!!」



 たとえ“違う”と否定されても、スペルビアが『ラムダ=エンシェント』の“IF(もしも)”なのは間違いない。だから、スペルビアの犯した罪は償わせなければならない。他でもない、俺自身の手で。



「ノア……“機神”のことは任せるぞ……!!」

「ラムダさん……」


「だから……スペルビアの事は任せてくれ……!」


「…………ッ!」

「私の前でノアと馴れ馴れしくするな……!!」



 ノアは心配そうに俺を見つめている。彼女は分かっている、俺が如何に無茶な事をしようとしているかを。けれど、俺の判断に賭ける事が現状の打開に繋がる事もきっと分かっているだろう。

 スペルビアと斬り合う俺を少し見て、それからノアはほんの数秒、眼を閉じて思考を張り巡らせる。俺を信じるか、違う方法を模索するか。



 そして、ノアは決断した――――


「ラムダさん……私は貴方を信じます」


 ――――俺を信じ、自分の戦いをする事を。



 ノアはきびすを返し、礼拝堂から“機神”の眠る地下へと向かおうとする。スペルビアと一騎打ちに臨む俺を信じて、自分にしか出来ない戦いをする為に。

 護衛に就いていたジブリールもノアへと続く。スペルビアに荷電粒子砲の砲身を向けたまま、彼女もノアの戦いに殉じようと決めたのだ。



「ステラ、俺の代わりにノアを護ってくれ!」

「イレヴン……くっ、一つ“貸し”ですからね!」



 “機神”へと続く道には、まだ帝国兵が大勢居るだろう。それを分かっているから、アリステラも俺に食い下がるような事はせず、断腸の思いを抱きながらではあるが“機神”へと向かうノアについて行く事を決めてくれた。



「逃がすか、ノア=ラストアーク……ぬッ!?」

「良いや、テメェは俺に付き合え、スペルビア!!」



 地下へと向かうノアたちを制止しようとしたスペルビアを妨害するように、俺は聖剣と魔剣を振りかぶってスペルビアへと挑みかかる。

 絶対にスペルビアを自由にはさせない。何がなんでも喰らいついて、ノアたちが“機神”を奪還する迄の時間を稼ぎきる。それが俺の戦いだからだ。



「此処は狭いだろ? 場所を変えるぞ、付き合え!」

「この……私の邪魔をするな!! ぐぉぉ……!?」



 そして、スペルビアをノアたちから引き離すべく俺は『光の翼(ルミナス・ウィング)』を展開して一気に上空へと加速、そのままスペルビアを打ち上げながら礼拝堂の天井へと激突し、天井を突き破りながらスペルビアを相応しい戦場へと連れて行くのであった。

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