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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第三章:来たれ、汝甘き死の時よ

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幕間:貴女が残した形見は、大輪の花となりて


「やぁ、久しぶりだね……シータさん。墓参りに来るのが遅くなって済まない……」



 辺境の街【サートゥス】、エンシェント邸共同墓地――――シータ=カミングの墓標にて。


 晴天の穏やかな日差しの中、この墓標の下に眠る黒い髪と蒼い瞳の天使に語り掛ける青年が一人。煌めく金髪は夕日に映える小麦が如く、透き通る碧い瞳は高純度の翡翠エメラルドが如く、その背に美しく輝く剣を携えしは白銀はくぎんの鎧を纏いし絶世の美男子。


 その姿はさながら“星の王子様”――――あらゆる女性を虜にする色気の化身。グランティアーゼ王国が誇る最強の騎士。



「君の美しい蒼い瞳に似合う花を探していたんだ……気に入っていただければ嬉しいな……」



 青年が今は亡きシータ=カミングの墓標に添えるは一輪の蒼い花――――竜の棲む霊峰に咲くと謳われる伝説の花。



「本当はラムダに会いに来たのだけれど、どうにもすれ違ってしまったらしい……父に訊いても『知らん』の一点張りだし……さてさて、どうしたものか……」



 顎に指を掛けて青年は思案する――――彼が探している『ラムダ』は既にサートゥスを離れ冒険の最中さなか


 闇雲に探せば時間だけが悪戯いたずらに過ぎてしまう。それだけは、青年は絶対に避けたい事態であった。



「ふぅ……あぁ、そうだ! シータさんにも報告しようか……実は、国王陛下からラムダ宛の親書を預かっていてね……こっそり中をあらめたんだけど…………どうやらラムダは近いうちに王都に招集されるらしい」



 懐から取りだしたラムダ宛の親書を片手にシータの墓前に語り掛ける青年。ラムダを語るその表情はとても自慢気で、とても誇らしそうに――――青年は遠い地で名を馳せる“アーティファクトの騎士”に想いを寄せる。



「思えば……貴女が居なくなってからラムダは強くなった…………それこそ、ゼクスよりも……ね。そう言えば、しっていたかい? ゼクスは貴女の事をいていた…………それこそ、貴女が亡くなった時に……一番泣いた程にね」



 青年は遠い思い出に想いを馳せる――――今は亡き朗らかな天使、ラムダを支え続けたかつての騎士、ラムダの本当の母親、その遠い残影に懐かしさを感じながら。



「――――卿、出立しゅったつの準備が整いました。急ぎ屋敷の外までご足労願います」

「あぁ、ご苦労……すぐに向かうよ」



 そんな青年に語り掛ける女騎士が一人。青年と同じく白銀の鎧を纏った騎士――――王立ダモクレス騎士団最強の部隊、第一師団【聖処女せいしょじょ】に席を置く精鋭中の精鋭。


 末端の騎士ですらS級冒険者を軽く凌ぐ第一師団を納めるこの青年こそが、グランティアーゼ王国の“誉れ”と名高き【聖騎士パラディン】の男。



「それと、第三師団の長……トリニティ卿より緊急伝令――――【死の商人】メメントが討ち取られました!」

「――――ッ! あの【死の商人】を……! トリニティ卿が倒したのかい?」

「いいえ、【死の商人】を討ち倒したのは……“アーティファクトの騎士”ラムダ=エンシェント――――()()()()ですよ……アインス=エンシェント卿……!」

「――――ラムダ……!!」



 彼の名はアインス=エンシェント――――王国最強の騎士、グランティアーゼ王国でただ一人の【聖騎士パラディン】。



「聴いたかい……我が麗しき聖剣【救国の聖剣(ジャンヌ・ダルク)】――――いよいよ、我々が再びまみえる時が来たようだ……!」



 背に携えた“聖剣”に微笑み、アインスは歓喜する――――愛しき弟の名乗りに、あるいは間近に迫った再会の時を待ちわびて。



「シータさん、もうすぐこのグランティアーゼ王国に十一番目の【王の剣】が誕生する――――貴女が残した形見が、いま大輪の花を咲かす時が来た!」



 シータ=カミング――――麗しき“魂剣こっけん”の騎士。その忘れ形見……ただ一人の息子。



「共に祝おう! 我が愛しき弟の……貴女が愛した()()の栄光を!!」



 一度は『ゴミ』として捨てられた少年は、苦難と困難を乗り越えて力強く花を咲かせる。たとえ其処が、がらくたに塗れたゴミの山であったとしても――――愛を知り、生をたっとび、正義に燃える“アーティファクトの騎士”は……決して諦めない。


 それ故に少年は至る――――最強の騎士への道へと。



「アインス卿、そろそろ……!」

「あぁ、では……名残惜しいが、私は行くとするよ――――我が愛しき妹……ツヴァイが“逆光時間神殿”の件で困っているみたいだからね……さようなら、シータ=カミング。次は……ラムダ本人から吉報きっぽうを聞くと良い……!」



 アインスはシータの墓標に煌めくばかりの笑顔を送り懐かしき自宅を後にする。


 彼が向かう先は“逆光時間神殿”――――“アーティファクトの騎士”ラムダ=エンシェントの旅の一つ目の終着点。


 そこに待ち受けるは――――“希望ぜつぼうの光”。



「ところで……あの、アインス卿…………ラムダ様はツェーン様のお子ではないのですか……?」

「あっ、しまった! さっきの聴かなかった事にして? お願いー、今度私の大好物の『お子様ランチセット』奢るからさ〜!」

「お子様セットは結構です! 貴方はいつもそれですね……結婚出来ませんよ?」

「ぐすん……慰めて欲しいな〜(チラッチラッ)」

「はぁ……ツヴァイ卿の胃が毎日キリキリしている訳だ……私も胃薬が欲しい……」

次話が3章のラストになります。

よろしくお願いします。

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ママプレイが好きそうなお兄様だこと。
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