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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第三章:来たれ、汝甘き死の時よ

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第84話:生きとし生けるもののに贈る『メメント・モリ』


「待っていましたわ、ラムダ=エンシェント卿……!」

「げぇ……や、やっぱり……! レ……レティシア姫……なぜ此処に……」



 “享楽の都”【アモーレム】郊外、時刻は昼過ぎ。街を発ってしばらく街道を歩いていた俺たちの前に現れたのは失踪した筈のレティシアだった。


 大きな荷物を提げて木にもたれ掛かって『随分と待っていました』と言わんばかりに俺たちに不満げな表情かおをしながら、麗しき姫騎士は俺たちの行方を阻む。



「あの……トリニティ卿が探していましたよ……レティシア姫……その、お戻りになられた方が…………」

「いいえ、トリニティ卿に連れられて王都に戻る気はさらさらありません! わたくし――――今日から【ベルヴェルク】でお世話になりますので……!」

「うえ……やっぱり……」

「あとこちら、【ケルベロス傭兵団】壊滅依頼(クエスト)の報酬と、貴方たちの“A(ランク)許可証(ライセンス)”になります……どうぞ、お納めください」

「あぁ……どうも」



 トリニティ達の前から姿を暗ましてまで俺たちの前に現れた理由――――それはもちろん、【ベルヴェルク】の加入の為。


 先日の【ケルベロス傭兵団】壊滅の報酬と【ベルヴェルク】宛のギルドの“A級許可証(ライセンス)”の入った大きな袋をコレットに預けたレティシアは、そのまま俺の前に立ちはだかる。



「あの……レティシア姫……?」

「『レティシア』と呼び捨てて頂いて結構です! わたくし……メメントと戦うラムダ卿の騎士然たる姿を見て、自分の浅ましさに気付かされました……!」

「あぁ……うん……」

「貴方こそがわたくしの『理想の騎士』――――どうか、お側にはべらせていただき、わたくしに“本物の騎士”の何たるかを教えて下さい……ラムダ卿!」

「そう来たか~……」

「あぁ~~……ラムダさんがまた女の子を誑し込んだ……」



 そう、レティシアの目的は俺への弟子入り――――かつて、俺がシータ……母さんを『理想の騎士』と思ったように、レティシアは俺を『理想の騎士』と定めたのだ。


 俺の手を華奢きゃしゃな手で強く握り、レティシアは瞳を輝かせながら俺への羨望せんぼうの眼差しを向ける。


 相手が【姫騎士】たる第二王女レティシアなのが非常に重荷だが……まぁ、『理想の騎士』と慕われるのは悪くない気分だ……むしろ気持ちがいい。



「困ったな〜、『理想の騎士』なんて言われても困っちゃうな~あはははは……!」

「めっちゃニヤついてますね、ラムダさん……」

「まぁ、面と向かって『あなたの信者ファンです!』って言われたら誰でも()()()()のではないですか? はぁ……また“恋敵ライバル”が……」

「もしかしてラムダさんって【女難の相】のスキルでも持っているのかなー?」

「ミリアリア様……もしラムダ様が【女難の相】持ちなら、貴女様もその“女難”に入っておりますよ~」

「あら~、御主人様ダーリンってモテモテなのね……。せっかくうちが【魅了チャーム】で御主人様ダーリンの為に酒池肉林しゅちにくりんのハーレムを作ろうって思っていたのに……元から必要無いなんて……うち、ショック……!」



 浮かれていたら後ろから聴こえた女性陣の怪訝な声――――どうやらレティシアの加入に思うところがあるようだ。


 しかし相手は恐れ多くも我がグランティアーゼ王国の第二王女――――下手に粗相そそうを働けばどんな処罰が下ったものか。



「ともかく! わたくしも今日から【ベルヴェルク】に入ります! 入りますったら入ります! 何ならこれは“勅命ちょくめい”です――――よろしくて!?」

「強引だ、この人……!」

「いけません、ノアさん……相手は王族です! シャルロット伯爵令嬢の『上位互換』です……諦めましょう……」

「オリビア様が明後日の方向を見て黄昏れていらっしゃりますね~」



 ノア達の意見を完全に上から押し潰して、レティシアは【ベルヴェルク】への加入を強引に取り決める。流石は王族……最高にわがままでいらっしゃる。



︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻


 名前(NAME):レティシア=エトワール=グランティアーゼ


 年齢(AGE):15 総合能力ランク:Lv.30


 体力(HP):300/300 魔力(MP):300/300

 攻撃力(ATK):230 防御力(DEF):65

 筋力(STR):70 耐久(VIT):20

 知力(INT):90 技量(DEX):130

 敏捷(SPD):200 (LUC):10


 冒険者ランク:B→A 所属ギルド:【ベルヴェルク】

 

 職業クラス:【姫騎士:Lv.5】(HP・MP・技量・敏捷に成長ボーナス)


 固有ユニークスキル:【七天の王冠(イリス・コロナム):Lv.5】


 保有技能(スキル):【剣術:Lv.3】【騎乗(馬・飛竜ワイバーン):Lv.5】【王女のカリスマ:Lv.3】【魔力放出(七天):Lv.5】【聖なる加護:Lv.5】


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「う〜ん、この脳筋……あとどいつもこいつも“運”が低いなー……幸薄さちうすぎだろこのパーティ……!」

「では、改めて――――わたくしの名はレティシア=エトワール=グランティアーゼ! 正義に殉じ悪を滅する……栄光たるグランティアーゼ王国の【姫騎士】――――これから我が“理想の騎士”たるラムダ卿と共に多くのか弱き人々を助ける所存……どうぞ、よろしくお願い致します……!!」



 一度は死神に折られた心を再起させ、麗しき姫騎士は正義の為に立ち上がる。


 その心がいまだ未熟な……『正義の味方ごっこ』にふけり、善行を為した快感に身を震わせるだけの上辺うわべだけの正義であったとしても、称賛を見返りにした利的な正義であったとしても――――誰かを救うのであれば、それは偽善では無く紛れもない正義。


 いずれ、大切な、命を懸けてでも護りたいと思えるようなものを見つけた時、レティシアの“薄っぺらな正義”は“真の正義”へと進化するであろう。


 これはまだ未熟な姫騎士の成長の物語――――俺たちにできる事は、彼女の成長を共に歩み見届け、真なる騎士へと覚醒したレティシアと共に善を成すこと。


 だから……俺たちはレティシアを歓迎する。

 彼女の険しい道のりに、幸あれと。



「よろしく、レティシアひ――――いや、レティシア!」

「こちらこそよろしくお願いしますわ、ラムダ卿……! ところで……わたくしとの『結婚式』は何時いつにしますか?」

「はい……………………なんです?」



 何、何ですか?

 いま『結婚式』とか言わなかったか、この姫騎士。



「えっ……何? なんで結婚……?」

「ラムダ卿はわたくしを命懸けで救った…………そんな素敵な殿方にとつぐのは女として当然では?」

「えぇ……」

「それに……わたくし、ラムダ卿を見ていると何だか下腹部がキュンキュンして……もどかしくて///」

「下腹部……ちょうど子宮の辺りですよ、ラムダさん!」

「ノア、余計なこと言わなくて良いから……!」



 なんだ……俺の手を握っているレティシアの顔がどんどん上気して、下半身をもじもじさせてきているぞ?


 何が起きているんだ――――まさか、これがルージュの言っていた『後遺症』か……?



「あれ〜……おかしいなぁ…………普通ならちょっと発情するくらいなのに、あれは完全に御主人様ダーリンの“とりこ”になっちゃってるなぁ……」

「おい、ルージュ!? どうなっているんだ、これは……!?」

「いや~、本来はうちの血を注入された相手は半永久的にうちに対して発情状態になって隷属するんだけど、うち自身が御主人様ダーリンの隷属だから……レティシアへの発情隷属効果が御主人様ダーリンを優先しているみたいで……♡」

「――――ハァ!? じゃあなにか、レティシアはいま俺に発情しているってこと!?」

「ピンポーン♪ 流石は御主人様ダーリン♡ でも〜本来なら、ちょっと発情して『やだ、好きかも♡』ぐらいになる筈なのに、ここまで効果が出ているって事は……もしかしてレティシアってば、もともと御主人様ダーリンには『ほの字』なのかも……♡」



 メメントととの決戦の際に傷付いた身体を無理やり動かす為にルージュの血を注入してもらい瞬間強化ドーピングを行なったレティシア――――その代償がこの状態らしい。


 既にレティシアの瞳の奥にはハートマークが浮かび始め、羨望せんぼうの念から握っていた筈のレティシアの手がなまめかしい動きに変わって俺の手をさわさわと触り始めている。


 まずい…………いかに仲間になったからと言えど、王族ロイヤルに手を出したとなれば俺は間違いなく処断される。


 母さん…………俺はいま非常に不味い状況です。



「ラムダ卿……/// わたくし、身体が疼いて仕方がありません……/// わたくしを今すぐ抱いて……///」

「うぉーーッ!! なに私のラムダさんにいきなり色目使ってるんだこの色ボケ姫がぁーーッ!!」

「わたし達がしっかりと『キス→性行セックス→告白→結婚→ハッピーエンド』の順番を守ってラムダ様と健全プラトニックな関係を構築しているのに、なにいきなり求婚しているんですかーーーーッ!!」

「お、落ち着いてくださいませノア様、オリビア様〜! あと『キス』の時点で“健全プラトニックな関係”では御座いませんー! あと途中の順番も変ですー!!」

「うぉーーッ!? びくともしないーーーーッ!!」

「ちょ……アリアさん、レティシアさんをラムダ様から引き剥がすのを手伝ってくださーーい!!」

「あははははは!! やっぱりラムダさん、【女難の相】持っているでしょー!」



 ノアとオリビアが組み付いても、てこでも動かないレティシア――――あぁ、俺の貞操がピンチだ。



「さあ、ラムダ卿! わたくしと共にたくさん子どもを作りましょう! えぇ、そうしましょう!!」

「ありゃ~、御主人様ダーリン……ご愁傷さま〜♪」

「誰か……助けてーーーーッ!!」



 騒がしい旅路、快楽流天都市の色香いろかに当てられて性が乱れ始めた【ベルヴェルク】――――新たな仲間、かつての強敵【吸血淫魔ヴァンパイア・サキュバス】リリエット=ルージュと、麗しき(※本来は)【七天しちてん姫騎士プリンセス・ナイト】レティシア=エトワール=グランティアーゼを加えて、俺たちの旅は続く。


 次なる目的地は“逆光ぎゃっこう時間(じかん)神殿(しんでん)”【ヴェニ・クラス】――――【死の商人】メメントが『アーティファクト』を掘り当てたと思われる“世界七大迷宮”の一つ。


 そこで待ち受けるのは如何なる困難であろうか――――それでも、俺は生きて、生きて、生き抜いて……ノア達と旅を続けよう。


 人は誰しもいつかは死ぬ――――だからこそ、この“生”に感謝して、今を精一杯生きよう。


 それこそが――――生きとし生けるものに贈る『メメント・モリ』なのだから。

本日はあと2話投稿しますのでよろしくお願いします。

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