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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第814話:鳥籠の中の戦士たち


「さて……私の術式スキルで外部からの干渉を“封印”しましてっと……。これでこの部屋は外部からは盗聴も盗撮の心配はありません。思う存分、悪巧みができますよぉ、クッククク……!」


「盗聴、盗撮は弊機わたしにお任せください……ジ〜ッ」


「あ~……イレヴンさん、このジブリールという方に盗聴、盗撮はしないように命令していただけますか? これではせっかく部屋に結界を敷いた意味が……」


「すみません、ヘキサグラムさん。うちの馬鹿が……」



 ――――帝都ゲヘナ、メインストリートに建つホテルの一室、時刻は日付けが変わった頃。無事に軍の警備をすり抜けて帝都ゲヘナへと潜入した俺たちタスクフォースⅩⅠ(イレヴン)は、次なる作戦を実行する為の作戦会議ブリーフィングを行なっていた。

 ジブリールのバイザーの“一つ目(モノ・アイ)”からは、帝都ゲヘナの全体像を映した立体映像ホログラムが投影されている。何故か空中へと浮かんでしまった“鳥籠”の街の映像だ。



「まず……この帝都ゲヘナが空中に浮遊した理由ですが……これについて誰か理解できる方は居ませんかね?」


「? 浮かせれるから浮かせただけじゃないの?」


「そんな愉快なことするの、貴女かノアかレメゲトンぐらいですよ、キルマリアさん。えーっと……この帝都の浮遊がスペルビアの企みなら、その目的は『捕獲したノアを逃さない』かつ『帝都の住民を丸ごと人質にする』のが目的ですね」


「どう言う意味だい、ラムダくん?」


「簡単ですよ、ウィルさん……ラストアーク騎士団は殺戮者集団じゃない。ノアの脱走阻止はともかく……帝都ゲヘナに住む住民を全員、人質にすればスペルビアはそれを交渉材料にできる。だから帝都を浮遊させ、都市全体を脱出不可能な“鳥籠”にしたんですよ」


「合理的かつ非人道的な作戦ね。反吐が出るわ」


「俺に倫理観が無かったらそうする……だからスペルビアならそうする。それが俺の推測だよ、ステラ。仮に推測が間違っていたとしても、帝都の人間が逃げれないことに変わりはない……」


「ふむ……実に合理的な判断ですねぇ……」



 まず、帝都ゲヘナが空中へと浮かび上がり、誰も逃げられない“鳥籠”と化した理由、これは捕らえたノアを逃さない、帝都の住民全員を“人質”とする為だ。

 現在の帝都ゲヘナは高度五百メートルの位置で浮遊し、かつ都市全体を“電磁障壁”で覆っている。これならノアが仮に脱出できたとしても、帝都ゲヘナからは逃げられはしない。そして、帝都ゲヘナに住む住民たちも同様だ。



「ラストアーク騎士団やアーカーシャ教団が攻め込んで来た場合、皇帝スペルビアは帝都ゲヘナに住む住民たちを人質にすると?」


「ええ、その通りです、リヒター=ヘキサグラム。皇帝スペルビアが俺……ラムダ=エンシェントである以上、奴はラストアーク騎士団もアーカーシャ教団も警戒する。どちらの組織もアーティファクトを所有している事を知っているからだ」


「アーティファクト【月の瞳】……ですか」


「教皇ヴェーダなら帝都ゲヘナを強行で消すかも知れませんが……そうでないことを祈っていますね、リヒター=ヘキサグラム。そして、ラストアーク騎士団には人質は確実に有効打になる」


「まぁ、普通なら躊躇いますねぇ……これは困った」



 もし、ラストアーク騎士団、アーカーシャ教団が帝都ゲヘナに攻め込んできても、スペルビアは帝都の住人全てを“人質”にして脅しを掛けてくるだろう。教皇ヴェーダがどうでるかは不明瞭だが、少なくともラストアーク騎士団に“人質”は有効打になる。

 ラストアーク騎士団、アーカーシャ教団の内情に精通したスペルビアならでは戦法だ。正直、闇落ちした自分がそんな非人道的な手段を平気で取るものかと、()()()()()()()()嫌悪感を抱いてしまう。スペルビアを通じて、俺は『ラムダ=エンシェント』の“影”を直視させられている。



「どうしたの、イレヴン……顔が暗いわよ?」

「なんでもないよ、ステラ。話を続けよう……」



 自分への嫌悪が表情かおに出てしまったのか、全員が俺に視線を向けていた。何かを察したのか、アリステラは少しバツが悪そうな表情かおをし、リヒター=ヘキサグラムですら何やら俺に憐れみのような感情を抱いた視線を向けている。

 自分は高潔に生きてきたつもりだ。誰かを護るために誠実に生きてきたつもりだ。なのに、些細な“きっかけ”で俺は人質を使う事も、核兵器を用いる事も辞さない“悪”に堕ちるのかと、そう思わずにはいられない。



「人質を解放する為には……帝都全体を覆う“電磁障壁”を解除する必要がありますねぇ。さてさてどうしましょうか? アリステラさん、サジタリウスさん、何か妙案はありますかぁ?」


「う〜ん……おじさんはただの一兵卒だしなぁ……」


「電磁障壁の管理はおそらくはアロガンティア帝国軍にあります。そして、軍の指揮権の一部は皇帝、皇族たちに与えられています。もし、私の指揮権が無効化されていないのなら、私の手で電磁障壁を解除できるかと……」


「その指揮権はいますぐ確認できますか?」


「いいえ……実は私、帝都ゲヘナが陥落した時から“機神”との接続が切れたままで……。ですので、まずはインペルティ宮殿で“機神”との接続を回復させないといけないわ」



 スペルビアが『ラムダ=エンシェント』の“IF(もしも)”である以上認めざるを得ない、ラムダ=エンシェントにはどうしようもない“闇”の部分が存在する。そして、スペルビアの存在が認識された以上、ラストアーク騎士団の全員が俺の“闇”を観ている事になる。

 それが内心、不安だった。俺は俺を捨てた父親よりも、傍若無人に振る舞っていたゼクス兄さんよりも、卑怯上等だったネビュラ=リンドヴルムよりも、相手の尊厳を踏み躙るリティア=ヒュプノスよりも、遥かに邪悪な“悪”を内包している。



「マスター、今は作戦会議ブリーフィング中です。意識が乱れていますよ。ちゃんと話を聞いていましたか?」


「あっ、ごめん、ジブリール……ちゃんと聞いてるよ」


「なら良いのですが……ひとまず作戦は固まりました。我々タスクフォースⅩⅠ(イレヴン)はリヒター=ヘキサグラム様と皇帝スペルビアの謁見の最中、インペルティ宮殿へと潜入、ノア様の奪還とアリステラ様の機神再接続による指揮権の奪取を目指します」


(めっちゃ話進んでるぅぅ〜〜!?)


「わたしが調べた限り……アロガンティア帝国兵のほぼ全員が強力な“催眠”のたぐいを施されているわ。わたしはウィルと協力して、帝国兵に掛けられた催眠をわたしの“魅了チャーム”で上書きする」


「それなら……!」


「そっ、スペルビアに支配されたアロガンティア帝国軍をアリステラちゃんの手に取り戻せる。そうすれば帝都の住民を避難させる事ができる筈だよ」


「では……これで話は纏まりましたねぇ」


「私、イレヴン、ジブリールの三名でノアと機神の奪還を。ウィルとキルマリアの二名でアロガンティア帝国軍の指揮系統を乱すわ。リヒター=ヘキサグラム、異論はありませんね?」


「ええ、もちろん。お好きにどうぞ……」



 どうやら俺が物思いに耽っている間に、作戦会議は大幅に進んでしまっていたらしい。タスクフォースⅩⅠ(イレヴン)は明日の正午、リヒター=ヘキサグラムとスペルビアの謁見の間に作戦を実行する。

 俺、アリステラ、ジブリールはインペルティ宮殿に囚われていると思われるノアの奪還と、“機神”と呼ばれる謎のアーティファクトとアリステラの接続を回復する為に動く。その間に、ウィルとキルマリアはアロガンティア帝国兵たちに掛けられている催眠を“上書き”という形で解除していく。



「作戦決行は私とスペルビアの謁見に合わせて。それまで各位、このホテルにて待機し、十分に英気を養っておいてください。あっ、くれぐれも迂闊な行動はしないようにお願いしますね〜」


「そっちこそ裏切るなよ」


「いえいえ、今の我々は言わば運命共同体……死ぬ時は諸共ですよぉ、イレヴンさん。では……私は教団に偽装した報告をしてきますので一旦失礼させて頂きます。あぁ、ジブリールさん……私の潔白の証明の為にご同行、お願い致します」



 こうして、タスクフォースⅩⅠ(イレヴン)の作戦は決まった。決行は明日のリヒター=ヘキサグラムとスペルビアの謁見に合わせて。

 それまで俺たちは、しばしの休息を与えられたのだった。

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