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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第804話:輝跡書庫 -Rekha Kāśa-


「スペルビア様、ノア=ラストアークを連行してきましたのだ。さぁ、とっとと歩くのだ!」


「わ、分かっています……」



 ――――帝都ゲヘナ、インペルティ宮殿。スペルビアさんとの、トネリコとの一件の翌日、私はエージェント・アウルに連れられて宮殿の地下へと連れられて来ていた。

 地下区画へと続く巨大な扉の前にはスペルビアさんが立っている。傷だらけのラムダ=エンシェントの顔を仮面で隠し、怯えさせるように私の事をジッと見つめている。



「…………っ」


「どうした、怯えているな? 昨日さくじつ()()がよほど身にみたのか? クククッ……」


「うるさい……黙っててください……」


「私を悦ばすのもお前の役目だ、ノア。誠心誠意奉仕せよ……その為に“女”として設計されたのだろう?」


「…………っ」



 スペルビアさんを見ると足が竦む。昨日の出来事が脳裏にフラッシュバックして、勝手に身体が震えてしまう。まだ彼が怖い。

 そんな私を見てスペルビアさんは愉快そうに声を上げている。私を萎縮させ、逆らえないようにしていく過程を愉しんでいるのだろう。心底性格が悪い。正直、同じ『ラムダ=エンシェント』とは思いたくない。



「お前……スペルビア様に不敬なのだ!」


「まぁ、待て、エージェント・アウル。この程度の反抗は十分に予測できた。なぁに……野良猫を躾けるようなものだ。じっくりと愉しもうではないか……」


「しかし、あまり悠長には……」


「分かっている、ラムダ=エンシェントの事だろう? すでに第一皇女ディクシアの部隊を帝都防衛に回させた。奴に侵入経路は無い……」


「根拠は、スペルビア様?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。故に、私が侵入しそうな経路をあらかじめ潰しておいた。抜かりは無い……」


「分かりましたのだ、スペルビア様」



 けれど、スペルビアさんは紛れもなく『ラムダ=エンシェント』だった。彼はどうやらラムダさんが帝都ゲヘナに潜入するのに使いそうな経路を、第一皇女ディクシアの部隊を使って抑えたらしい。



(どうにかラムダさんに警告しないと……)



 この情報をラムダさんに伝えなければならない。だけど今の私は捕虜、簡単に行動する事はできない状態だ。両腕は身体の前で腕輪に拘束され、首には電流が流れる仕掛けの施された首輪が付け入られている。



「首輪の性能をチェックするのだ……ポチッと」

「ちょ、んぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーっ!!?」



 ちょっとでもスペルビアさんの機嫌を損ねれば電流が流される。そうじゃ無くても気紛れで流される、いま流された。

 今は大人しくスペルビアさんの従順な“所有物”に徹するしかない。屈辱的だが、また電流を流されるよりはマシだ。このままでは私は電流を流される快感に目覚めてしまいそうだ。



「そ、それで……どうして私を地下に?」

「スペルビア様には敬語を使えなのだ!」


「気になるか? あぁ、そろそろお前に見せてやろうと思ったんだ。私がアロガンティア帝国を攻め落としてでも手に入れたかった物をな……」


「手に入れたかった物……?」


「エージェント・アウル、此処からは私とノアだけに許された空間だ。お前は入口で待機せよ。首輪の制御装置は私に預けよ」


「イエス、ユア・マジェスティなのだ!」


「ふっ……よく覚えておけ、ノア。お前は私からは逃げられん。常に私の三歩後ろを歩け……ん、四歩後ろになっているぞ、スイッチオン」


「んぎゃああああ!? んな理不尽なぁああああ!」



 首輪の制御装置をエージェント・アウルから取り上げたスペルビアさんは、そのまま彼女を地下に続く扉の前に残して奥へと歩き出す。

 私ができるのはスペルビアさんの後ろを付いて歩く事だけ。逆らえば電流を流されて……逆らってないのに流されている。どうやら徹底的に私から抵抗の意志を奪うつもりらしい。



「それで……見せたい物とは?」



 電流で痺れる身体を労りつつ、長い長い地下へと続く螺旋階段を降りながら私はスペルビアさんに『見せたい物』の正体を尋ねる。

 私たちはインペルティ宮殿から真下の帝都そのものの基礎部分に向かって階段を下っていた。吹き抜けの螺旋階段を微弱に光る電灯だけが照らしている。聞こえるのは私とスペルビアさんの足音。



「足音が大きいぞ……スイッチオン」

「んぎゃーーーーッ!!?」



 それと電流の流れる音と私の悲鳴だけだ。スペルビアは時折、難癖をつけて私に電流を流す。完全に私を痛めつけているだけだ。そして、彼の思惑通り、私は少しずつスペルビアさんに対しての恐怖を増幅させていっていた。



(逆らうのが怖い。無意味な暴力が怖い……)



 スペルビアさんが気紛れに振る暴力が私から反抗心を削いでいく。いっそ従順になれば、痛い目に遭わないで済むだろうかと考えてしまう。

 首輪から流れる電流は私の肉体よりも、精神に深いダメージを負わせていた。早くこの地獄が終わって欲しい。早く、早く、早く、助けて欲しい。



「さぁ、着いたぞ……此処が帝都ゲヘナの下層区画。歴代の皇帝にのみ立ち入りを許された祭壇だ」


「…………」


「どうした、減らずぐちは叩かないのか? あぁ、そんなに怯えた表情かおをするな。お前らしくないぞ……ノア?」



 そして、階段を下り始めてから十数分後、私とスペルビアさんは大きな空間へと到達した。曰く、そこはアロガンティア帝国の歴代皇帝にのみ立ち入りを許された神聖な祭壇らしい。



「あれは……?」



 私の視線の先にはある物が在った。スペルビアさんが私に見せたがっていた物だろうか。

 それは、淡く発光する全長十メートル程の真っ黒なモノリスだった。長方形状の黒い板のような物体が高くそびえている。そして、モノリスの正面には、まるで断末魔を叫んでいるような悲痛な表情をした天使の彫像スタチューが埋め込まれている。



「これはアロガンティア帝国が代々隠してきたアーティファクト。俗に“機神きしん”と呼ばれる至宝……」


「機神……」


「正式名称を『輝跡書庫きせきしょこレーカ・カーシャ』……遠い昔、この世界に在ったとある世界の記録を保管した情報集積体アーカイブだ」


「それって……まさか……!?」


「そう……この輝跡書庫レーカ・カーシャには滅びた筈の超文明……『古代文明』の情報が詰まっている。お前が生まれた時代の記録がな……」



 そのモノリスの名は“輝跡書庫きせきしょこ”レーカ・カーシャ――――アロガンティア帝国が隠し持つ、“機神”と呼ばれた秘宝のアーティファクト。十万年前に私が滅ぼしてしまった、今は亡き古代文明の記録を保存した超巨大情報集積体。

 それが、スペルビアへと失墜した並行世界のラムダさんが求めたアーティファクトの正体だった。

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