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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第799話:タスクフォースⅩⅠ


「ラムダ……お主、まさか儂に逆らう気かの?」

「そのまさかだ。お前の案には賛成できないね」



 ――――“ギルドマスター”の執務室はピリピリとした空気に包まれていた。

 負傷者の回復を待ってから動くべきだと言うグラトニスと、急いでアロガンティア帝国軍を追撃するべきだと言う俺とで主張が真っ正面から衝突したからだ。



「今、こうして此処で喋っている間にも、捕まったノアは酷い拷問に遭っておるかも知れない。お前は仲間を見捨てるつもりか、グラトニス?」


「あの……おふたりとも落ち着いて……」


「ノアの安否が気掛かりなのは儂も同じじゃ、このたわけ。だからと言って無闇にアロガンティア帝国領へと行けば余計な犠牲が増えると儂は言うておるんじゃ!」


「あ、あの……どうします、カルマさん?」


「スペルビアの目的はノアだ、同じ立場なら俺はノアを尋問してでも欲しい情報を吐き出させるだろう。だから、そうなる前にノアを奪還するべきなんだ!」


「やれやれ……これだから青臭い子供ガキは……」


「こぉんのおっろか者ぉ〜っ!! だから、スペルビアの目的がノアな以上、拷問こそされど命までは取られんとなぜ分からぬのじゃ、この阿呆が!!」



 グラトニスは『ラストアーク騎士団の総司令』としての立場から、俺は『ノアの個人的な護衛』としての立場から喋っている。無論、大局的な視点から見ればグラトニスの意見の方が正しい。

 それは重々承知している。だが、それでも俺はのノアをすぐにでも救い出したいと思っていた。



「ノアはきっと俺が助けに来るのを待っている。だから……俺は此処で足踏みはしちゃいられないんだ!!」


「ラムダ卿、それは個人的な感情だぞ」


「んなもん儂も承知じゃ! じゃがな……お主も儂の大事な仲間なんじゃ! 軽率な判断は許さんぞ、ラムダよ!」


「我はラムダ卿に賛成。行動は素早くするべきだ」


「俺が軽率に見えるか、グラトニス? 魔王軍が空中要塞メサイアにノアを連れ去った時、何が起こったか忘れた訳じゃねぇよな?」


「イザヨイ公はラムダさんの味方のようですね」


「あの時、儂はお主がメサイアに乗り込んでくる事を予期しておった。スペルビアも同じじゃ、きっとお主が帝都ゲヘナにのこのこと現れると予測しとるじゃろう!」


「まっ、私もラムダさんに賛成ですがね……」



 カルマたちも意見が真っ二つに分かれてしまった。グラトニス、グロリアス大公、カルマは『立て直しが優先派』だ。組織のおさとしての立場がそうさせているのだろう。

 一方、俺、イザヨイ、タオは『ノア救出が優先派』だ。こちらは“忠義”に重きを置いている。どちらの言い分にも筋があり、お互いに譲る事はしないだろう。



「それでも俺はノアを向かえに行く! ラストアーク騎士団が動けないってなら俺一人でアロガンティア帝国軍のふところに入り込んでやる!」


「潜入作戦ですね。それなら理に適っていますね」


「なっ……お主だけでアロガンティア帝国に乗り込むつもりか!? そんな勝手を儂が許すと思うておるのか!? お主だってな……わた、儂の大事な仲間なんだよ……じゃぞ!!」


「おや……グラトニスさんの様子が……??」



 グラトニスは目の前のテーブルをバンと叩いて怒りを露わにしているが、感情が昂ってきているのか徐々に『グラトニス』としての仮面が剥がれてきている。

 眉をひそめて怒ったような表情を作ってはいるが、その金色こんじきの瞳は少しずつうるうるとし始めている。



「継承戦の時だってそうじゃ、なんでも自分ひとりで背負い込もうと無茶ばかり……。お主の身に何かあったら……わし……わ、私はどうしたら良いの?」


「イザヨイ公、これは一体全体どういう……?」


「今だって仲間が大勢死んで……ただでさえいっぱいいっぱいなのに。なんでそんな勝手なこと言うの!? ラムダが居てくれないと……私、不安なんだよ、分かってよ……」


「これは……まぁアレだ、グロリアス大公……」


「お、お願い……考え直して、ラムダ。危険なのよ、分かってるでしょ!? ノアの為なのは分かってるけど、もっと自分を大切にして! 私には必要なの……あなたが……」



 グラトニスは俺の単独行動に強い難色を示している。それこそ、人前であるにも関わらず『ルクスリア』の側面を出して涙ぐむぐらいには。

 彼女の豹変っぷりを目撃したカルマたちは目を丸くして驚いている。だが、どうにもイザヨイとタオは『ははぁ~ん、これ痴話喧嘩だな』みたいな笑みを浮かべている。



「私の為に行かないで、ラムダ」

「俺はノアの為に行く、グラトニス」



 俺もグラトニスもお互いに意見をねじ曲げる気はないらしい。このままでは不毛な言い争いに無駄な時間を割いてしまう。



 そんな焦りを感じた時だった――――


「話は聞かせてもらったわ! 私の出番のようね!」


 ――――不意に部屋の外から声が響いた。



 全員が辺りをキョロキョロと見渡すが誰も居ない。だが、確かに女の声が響いた。執務室に居た全員が慌てて入り口のドアへと視線を向ける。



「アリステラ=エル=アロガンティア参上!!」

「げっ、窓からステラが……!!?」


「なんじゃいきなり……って、なんじゃーーっ!?」


「そしてグラトニスを蹴り飛ばしたーーっ!!?」

「はぁ……ドアから入れよ……」



 次の瞬間、執務室の窓を蹴破りつつアリステラが乱入、そのままドロップキックをグラトニスにかましつつ俺たちの前に颯爽と現れたのだった。



「あ、あんぎゃあああああっ!!? 全身大火傷の重傷を負った儂になにすんじゃこのたわけが〜〜っ!! ちょ、いだだだだだ!? のわあぁぁあああああっ!!?」


「イレヴンの潜入作戦、私も同行するわ!」


「貴様アリステラ〜〜!! そんな報告の為にわざわざ儂を蹴り飛ばしおったのか、こぉんのたわけが〜〜ッ!! あっ、ヤバい! めっちゃ痛い!? 儂のプリチ〜な身体がぁぁぁ!!?」



 ドアの付近までふっ飛ばされビッタンビッタンと跳ねて悶え苦しむグラトニスを無視しつつ、アリステラは俺のアロガンティア帝国領への潜入作戦に同行すると言い出したのだ。



「お、おじさんもラムダくんに同行させてもらうよ。みすみすノアちゃんを奪われまま、病室のベットで寝ちゃいられないってんだ……」


「ウ、ウィルさん!? 普通にドアから入ってきた」


「ウィルだけに良いカッコさせないわ! この世界で最も美しい吸血鬼ヴァンパイア、麗しきレディ・キルマリア様も手伝ってあげるわ! 感謝しなさい、ラムダくん♡」


「おい、そんな勢いよくドアを開けると……」


「止めるのじゃ、キルマリア! 儂がドアの開閉に巻き込まれ……ぬぉぉ〜〜ッ!? 足の小指がぁぁ〜〜〜〜ッ!!? 逝ぐぅぅぅ〜〜〜〜ッ!!」



 さらに、先の戦いでスペルビアに完膚なきまでに叩きのめされた筈のウィルと、彼の付き人であるキルマリアまでもが執務室に勢いよく現れた。

 キルマリアが“バターン”と快音を響かせて蹴り飛ばしたドアと壁に挟まれたグラトニスが誰にも見えないドアの裏側で悲痛な叫びを上げている。そして、カルマたちが憐れな者を見るような視線でドアの陰を見つめていた。



「ウィルさん怪我は大丈夫なんですか!?」


「大丈夫な訳ないでしょ! こいつの内臓は大火傷でボロボロ。だ〜か〜ら〜、この美しいわたしが! ウィルの弛みきった身体の傷を魔法で、わざわざ肩代わりしてあげてんの! どう、気品溢れる気高い慈悲でしょ?」


「全身大火傷の儂もいたわれ〜傲慢吸血鬼〜〜!」


「皇帝スペルビアには借りがある。それを返さないとおじさんは自分を許せない。お願いだ、ラムダくん……おじさんも連れて行ってくれ。足手まといにはならないと約束するよ」


「先にグラトニスをなんとかしてあげて……」


「あんなゾンビどもに我が祖国の威光を失墜させられるなど看過できません!! 亡き母上や兄妹たち、我が友の無念に代えてでもアロガンティア帝国の威信は護らねばならない! 帝国皇女である私が!!」


「なんで儂がこんな目に……むぎゅうぅぅ……」


「グラトニス……あっ、気絶した。それよりも……ステラもウィルさんも、俺と一緒にアロガンティア帝国領に乗り込むつもりなんですね? 危険は承知の上で?」


「グラトニスさんをついに放置しだしましたね……」



 どうやらアリステラやウィルたちも俺のアロガンティア帝国領潜入作戦に乗じたいらしい。アリステラは帝国の名誉を護る為に、ウィルはノアを拐われた汚名をそそぐ為に、キルマリアは明らかに愉快犯だ。

 それでも、例え深い傷を負っていたとしても、彼女たちは確固たる意志で危険な任務に赴く覚悟を固めている。もう、俺やグラトニスが説得してもきかないだろう。そもそも、気絶したグラトニスに有無を言う余裕はないが。



「分かりました。協力をお願いします、ウィルさん、キルマリアさん、ステラ。構わないですね、グロリアス大公、ヴァンヘルシングさん?」


「我は異論なしだ」


其方そなたには訊いとらんぞ、イザヨイ公。だが……そうだな、儂もラムダ卿たちの作戦を支持しよう」


「グロリアス大公! ありがとうございます!」


「やれやれ……どうやらあたしが言っても聞かなさそうだねぇ? はいはい、分かった分かった。なら四人で勝手にやんなよ」


「た〜わ〜け〜……儂を無視して勝手に〜〜……」


僭越せんえつながら……弊機わたしも同行します、マスター。機械天使ティタノマキナジブリール、ノア様からの『アロガンティア帝国領に私を追いに来るラムダさんを援護せよ』の指令オーダーに従い、これより任務に付きます」


「ちょ、またドアを開くな……んぎゃああああ!!」


「ジブリール……その言い方じゃ、どうやらノアは最初から自分がどうなるか、俺がどうするか分かってたみたいだな。おぉ……またグラトニスが気絶した……」


「やれやれ、騒がしい連中だこと……」



 そして、遅れてやって来て再びグラトニスをドアで押し潰しながら、機械天使ティタノマキナジブリールが同行を宣言したのだった。

 ジブリールの手には俺の“魂”が納められた蒼いペンダントが握られている。どうやら、ノアはスペルビアに襲われた自分がどうなるか見越して、あらかじめ策を打っていたらしい。



「ヴァンヘルシングさん……俺はアリステラたちと一緒にアロガンティア帝国領へと潜入し、囚われたノアを救出します。グロリアス大公とイザヨイ公はその間にラストアーク騎士団とバハムート軍の準備を整えてください」


「先にグラトニスをなんとかしてやれよ……」


「これより俺たちはノア=ラストアークを救出する特殊部隊『タスクフォースⅩⅠ(イレヴン)』を結成する! 目標は帝都ゲヘナ! そこにノアが居る……よな、ジブリール?」


弊機わたしに聞かれても困るのですが……」


「どうしようもなく不安だが……良いだろう。あんたたちに任せようか、タスクフォースⅩⅠ(イレヴン)。ノア=ラストアークの救出はあんたらに任せるよ」



 ラムダ=エンシェント、アリステラ=エル=アロガンティア、ウィル=サジタリウス、“レディ”キルマリア=ルージュ、ジブリールの五名で結成されたノア救出部隊――――その名は『タスクフォースⅩⅠ(イレヴン)』。

 囚われたノアの救出に燃える復讐者たちは立ち上がり、過酷なミッションに臨もうとしていたのだった。



「先に儂を助けてたもれ〜〜(泣)」

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