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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第795話:招待状 -Calamity weapons-


「受けな、ラムダさん――――“狢ノ神剃(ムジナノカミソリ)”!!」

「見知った攻撃だ、当たるかよ!!」



 ――――“海洋自由都市”バル・リベルタス上空、アロガンティア帝国軍旗艦アウチェプス艦橋ブリッジ。エージェント・ブレイヴ率いる帝国軍と俺とアリステラの戦いは続いていた。

 ラムダ=エンシェントをよく知るエージェント・ブレイヴは俺の攻撃をことごとく捌き続け、俺は決定的な攻め手に欠いていた。



「アハハハ、どうしたのさラムダさん! いつものような攻撃の苛烈さが無いね? 手加減してるのかな?」


「…………」



 エージェント・ブレイヴが俺を知っているだけが理由じゃない。先の魔王継承戦で魔王装甲アポカリプスを失った俺は戦闘服での戦闘を余儀なくされていた。

 装甲アーマーは完全に壊れ、殆どの武装もアラヤ=ミコトの汚染を除去する為に使えない。自覚はしているが、アーティファクトという“虚飾”を失った俺は途端に弱体化してしまう。



「テメェこそ俺に手加減してんじゃねぇか、アリア? 生前の戦法のまま俺に戦いを挑むなんて、俺に倒してくださいって言ってるようなもんじゃねーか?」


「なんだと……?」


「例え並行世界の別人だったとしても、愛するラムダ=エンシェントには本気は出せねぇか? ふっ、可愛い奴だな」


「黙れ……黙れ、黙れ、黙れ!! 僕をアリアと呼ぶな! 僕はエージェント・ブレイヴ、スペルビア様の忠実な下僕しもべ! もう貴方に恋する女じゃない! スペルビア様の願いを叶える優秀な兵士だ!!」



 だが、攻め手に欠いているのはエージェント・ブレイヴも同じ。戦法は生前の、俺がよく知る『ミリアリア=リリーレッド』と同質、固有ユニークスキルによる“瞬間強化レベルアップ・ブースト”と“再世の聖剣”リーヴスラシルによる座標指定斬撃の使用だ。

 種も仕掛けも分かりきっている。例えアーティファクトが無くとも、“第十三使徒”の因子で基礎能力の向上した俺なら容易に対処できる。なにより、エージェント・ブレイヴの攻撃には“迷い”があった。それを指摘された瞬間、エージェント・ブレイヴは激情を露わにする。



「スペルビア様の願いの為には貴方が邪魔だ!」

「同感だ、俺の願いにはスペルビアは邪魔だ!」



 エージェント・ブレイヴは『過去は捨てた、ミリアリアは死んだ』と言うが、実際には彼女は過去を断ち切れていない。戦闘前、俺の呼びかけに呼応して仮面を外し、正体を現したのが何よりの理由だ。

 だが、それをエージェント・ブレイヴは自覚していない。自分が無意識の内に『ミリアリア=リリーレッド』に縋ろうとしている事に彼女は気が付いていない。



「イレヴン、手加減は不要です! 早くトドメを!」

「分かってる……分かってるさ……!」



 後方で漆黒の兵士トルーパーを相手取るアリステラが叫ぶ、エージェント・ブレイヴと早く決着を付けろと。彼女に急かされるように俺は手にした二丁拳銃をエージェント・ブレイヴへと向ける。



「…………」



 しかし、エージェント・ブレイヴの顔を見ると途端に指が重くなる。快活で可憐だった顔は無残に傷付き、健康的な素肌も鮮やかなピンク色の髪も生気の無い真っ白へと変色し、かつてのミリアリアが死人ゾンビになっている。

 まるで俺の知るミリアリアの“未来”を暗示するように。エージェント・ピースの時にも感じた『自分の行動が愛する人を傷付ける』、そんな錯覚に俺は襲われていた。



「ええい、なんて甘い! 私がやります!!」

「アリステラ、僕の邪魔を……ぐあっ!?」



 そんな俺に業を煮やしたのか、アリステラは素早く引き金を引き、露わになっていたエージェント・ブレイヴの脳天に銃弾を一発撃ち込んだ。

 弾丸はエージェント・ブレイヴの額から後頭部ヘと突き抜け、彼女の後頭部からは脳髄と脳漿のうしょうがぶち撒けられる。



「これで……」


「くっ……やってくれたな、アリステラ=エル=アロガンティア!! よくも……よくも僕の顔に傷を!! これじゃあスペルビア様に捨てられる……あぁぁぁ!!」


「――――ッ! まだ動けるの……」


「ゾンビ化ってそういうものさ、ステラ。エージェント・ブレイヴはもう脳や心臓を動かして、血を巡らせて、魂を輝かせて生きてる訳じゃない。全身に染み込んだ魔素マナと生前の“未練”だけで動く『生きるしかばね』になってしまったんだ……」



 だけど、額を撃たれてもエージェント・ブレイヴは倒れない。ほんの少し仰け反っただけだ。そして、顔に傷を負ったエージェント・ブレイヴはさらなる激情を発露し始めた。



「僕はスペルビア様の駒だ、スペルビア様のご期待に応えるのが僕の使命なんだ! 邪魔をするなぁぁ!!」



 傷を負った痛みには悶えていない。彼女はスペルビアに捨てられる事を何よりも恐怖していた。エージェント・ピースにも見られた行動だ。艦橋ブリッジに絶叫を響かせ、エージェント・ブレイヴは手にした折れた聖剣を握りしめ、俺とアリステラに怨念の籠もった強い怒りの表情を覗かせる。



《はい、アロガンティア帝国軍に通達〜。当空域に於ける作戦は達成、我が軍はノア=ラストアークの捕縛及びラストアーク騎士団の無力化に成功したよ〜》


「この声……トネリコ!? それに今の内容は……」


《全エージェントは残存勢力を率い速やかに撤退せよ。繰り返す、全エージェントは速やかに撤退を開始せよ》



 その時だった、不意に艦橋ブリッジに聞き覚えのある女の声が響いた。天空大陸上陸直前、戦艦ラストアークから脱走して行方不明になっていたトネリコ=アルカンシェルの声だ。

 彼女は言う、アロガンティア帝国軍はバル・リベルタスでの目的を達成、ノア=ラストアークの拉致とラストアーク騎士団の無力化したと。ノアは“天空神機エリュシオン”の整備で格納庫に居たはずだ。なら、ノアが出撃していない限り、戦艦ラストアークが襲撃を受けた事になる。



「まさか……俺をこの旗艦に誘き寄せたのは……」


「その通り、その隙にノアを連れ去る為さ。迂闊だったね、ラムダさん。護りたい人は常に側に置いておかないとさぁ!」


「…………っ!! お前等ぁぁ……!!」



 戦艦ラストアーク内なら安全だと、仮に何かあったとしても最後の砦になると思っていた。そんな俺の心理を突いて、アロガンティア帝国軍はまんまとノアを誘拐したのだ。



《エージェント・ブレイヴ、旗艦アウチェプスに搭載した“核ミサイル”の使用を命じる。バル・リベルタスに向けて発射し、ラストアーク騎士団を街もろとも消し去れ》


「なっ……!? この旗艦に……核兵器が……!?」


「イエス、マイ・ロード。エージェント・ブレイヴの権限にて命ずる、バル・リベルタスに向けて核ミサイルを発射する! 砲手、発射シーケンスを開始せよ!!」



 そして、ノアの誘拐だけに飽き足らず、アロガンティア帝国軍は“禁忌”の使用をエージェント・ブレイヴに命じた。古代文明の悪意を結集した悪魔の発明『核兵器』、それをバル・リベルタスに放とうとしていたのだった。

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