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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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第789話:堕ちた勇者


「いてて……フラヴンアース、壊れないかな?」

「なんて無茶な操縦を……呆れてものも言えないわ」



 ――――アロガンティア帝国艦隊、旗艦アウチェプス格納庫。“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”の影に隠れていた帝国軍の旗艦へと突撃し、俺とアリステラは飛空艇フラヴンアースから降りて戦闘準備を整える。

 かなり無茶苦茶な突入をして格納庫の中央に転がるように停止したが、飛空艇フラヴンアースはまだ動ける状態にある。頑丈な飛空艇を設計してくれたノアに感謝しなければならない。



「イレヴン、トルーパーが押し寄せてきたわ」

「フラヴンアースを壊されちゃ堪らない! 攻めるぞ!」



 俺たちの侵入に気が付いたのか、格納庫にブラスターを装備した帝国軍の兵士トルーパーが何十人もなだれ込んできた。装甲に空いた穴からは旗艦に電磁障壁タルタロスが張られている光景が見える。



「敵の動きも早いし、突入された後なのに電磁障壁タルタロスを貼った……。これはまさか……」


「どうしたのです、イレヴン?」


「通信装置もジャミングされて使えない。俺たちが乗り込んでくるのは想定の範囲内だったのか……」


「イレヴン、連中が撃ってきたわ!」


「分かってる、こっちも反撃だ! このふね艦橋ブリッジを制圧して帝国軍の指揮系統を無茶苦茶にしてやる!!」



 電磁障壁タルタロスが張られた事で内部からの脱出は困難になってしまった。まるで戦艦という名前の“檻”に閉じ込められた気分だ。

 単にアロガンティア帝国軍が新手が旗艦に乗り込むのを防ぎたいと思ってるのかも知れない。だが、何か別の思惑も感じるような、何か嫌な予感がするのも事実だ。



「“ヴァリアブル・トリガー”! オラオラァ、んな豆鉄砲みてぇなブラスターで俺を止めれると思うなよッ!」


「ちょ、イレヴン……いきなりオラつきすぎでは……」


「なんだか嫌な予感がする。さっさと艦橋ブリッジを制圧してみんなの所に戻らなきゃ! 急ごう、ステラ!」



 魔弾を撃ってくる兵士トルーパーに対抗するべく、俺も可変銃ヴァリアブル・トリガーを両手に装備して弾丸を撃ち続ける。急いで艦橋ブリッジを制圧し、ラストアーク騎士団が戦う空域に戻る為だ。

 アリステラも二丁拳銃を装備すると俺に合わせて射撃を開始、迫りくる帝国兵を退けつつ艦橋ブリッジに向かって移動し始めるのだった。



 〜〜〜〜



「此処が艦橋ブリッジだな……」

「少し広い空間ですね。ふねの規模が大きいからかしら?」



 侵入から十分後、俺とアリステラは大勢の兵士トルーパーを蹴散らして旗艦の艦橋ブリッジへと辿り着いた。

 艦橋ブリッジへと続く昇降機エレベーターを破壊し、隔壁を魔剣の高熱で溶接したので、しばらくは追っ手に追いつかれる心配はしなくても良い。俺たちは広々とした艦橋ブリッジの中を警戒心を強めながらゆっくりと進んでいく。



「やぁ、三日ぶりだね、ラムダさん。ようこそ、旗艦アウチェプスへ、歓迎するよ。こんなに早く再開できて僕、嬉しいよ……」


「エージェント・ブレイヴ……!」


「そしてアリステラ=エル=アロガンティア……スペルビア様に背を向けておめおめと逃げた臆病者。今さらよくそのつらを出せたね?」


「…………ッ!!」



 そして、俺たちは艦橋ブリッジで悠然と佇んでいた帝国軍将校と対峙した。

 黒い装束を纏い、素顔を仮面で隠した女、エージェント・ブレイヴ。先の魔王継承戦の際に現れ、“マザー”を殺害して『地神炉心テラ・ドライヴ』を奪っていった人物だ。



「ラムダさんと遊べってスペルビア様からご命令を頂いているんだ。悪いけど付き合ってもらうよ。“デストロイ・トルーパー”……出ろ」


「…………」


「こいつら、前に見た上級兵……! 最初から艦橋ブリッジに待機させていたのか……!」



 エージェント・ブレイヴが指を鳴らした瞬間、物陰に隠れていた漆黒の兵士トルーパーがブラスターを構えながら、俺とアリステラを包囲するように現れた。

 “デストロイ・トルーパー”と呼ばれる上級兵たちだ。数は十人、最初から俺とアリステラが来ることを前提に、艦橋ブリッジで待機していたのだろう。



「最初から俺たちが来ると見越して……」


「そうだよ。僕は君が此処に来るのを待っていたんだ、ラムダさん。まっ、まさかグロリアス=バハムートが軍を送ってくるなんて予想外だったけどね……」


「…………」


「突入する時、電磁障壁タルタロスを張ってなかっただろ? アレ、わざと。ラムダさんたちをこの旗艦アウチェプスに誘い込んで、そこから電磁障壁タルタロスで閉じ込めるのが僕の本来の目的さ」


「何のために……」


「ふふっ、すぐに分かるさ。でもその前に……僕と遊んでもらうよ、ラムダさん。その為にこんなつまらない場所に旗艦を配置して待っていたんだから」



 エージェント・ブレイヴは最初から俺を旗艦におびき寄せるのが目的だったらしい。電磁障壁タルタロスを展開し、空中の鳥籠と化した戦艦で彼女は俺と戦うつもりのようだ。

 腰に携えた刀身が折れた剣を握りしめ、エージェント・ブレイヴは殺意を俺へと放つ。同時に、俺たちを包囲する漆黒の兵士トルーパーたちも一斉にブラスターの銃口を俺とアリステラの頭部に合わせる。



「簡単に死なないでよ? 僕はずっと君と戦いたいと思っていたんだ、ラムダさん。僕に君の凄いところ、見せてほしいなぁ……」


「どうしてスペルビアに従うんだ?」


「なんでって……決まってるだろ。もう僕はスペルビア様に縋るしかないんだ。この死んだ身体を動かして、みっともなく現世に留まるにはね……」


「なにがあったんだ、アリア……」


「…………。へぇ、僕の正体に気が付いたんだ。まっ、エージェント・ピースのつらを見たんでしょ? あの顔を見たら嫌でも答えにたどり着けるよね……」



 エージェント・ブレイヴは俺が本当の名を当てた瞬間、一瞬だけ何かを考えたような間を置いてから、頭部を覆う仮面を取り外して素顔を晒した。

 死人ゾンビ化の影響で髪は白くなり、瞳も魔性を示す金色こんじきに変わってしまっている。だが、間違うはずもない、其処に立っていたのはミリアリア=リリーレッド本人だった。



「僕は貴方の為に戦い、そして最後には無残に殺されて死んだ。見てよ、この胸……心臓の所にポッカリと孔が空いてるんだ。左腕と左脚も造り物だし、聖剣リーヴスラシルもご覧の通りポッキリさ……」


「アリア……」


「あれは痛かったなぁ……。血がどくどくって流れて、ちょっとずつ身体が重くなって……あっ、僕死ぬんだって実感させられて……。オリビアさんもアウラさんもその時点ではもう死んでたから、誰にも僕は救えなかった……そう、ラムダさんもね」



 エージェント・ブレイヴがおもむろにボディースーツをはだけて胸元を晒せば、そこには大きな孔がポッカリと空いていた。ちょうど心臓の位置、彼女がどうやって死んだのかは想像にかたくない。

 左腕、左脚も義手義足、なんなら顔にも酷い傷跡があった。激しい戦闘の末に、エージェント・ブレイヴが死んだことを物語っている。彼女の無残な姿を見て、思わず吐き気がこみ上げてきそうになった。



「こっちの僕はまだ元気なようだね。けど……悪いけどこっちの僕も、この僕と同じ目に遭ってもらわないとね」


「アリア……」


「ミリアリア=リリーレッドはもう死んだ。僕はただの“抜け殻”さ。僕の名前はエージェント・ブレイヴ……スペルビア様の忠実な下僕しもべにして、スペルビア様の復讐を果たす者!」



 折れた聖剣リーヴスラシルを振って、エージェント・ブレイヴは俺たちを威圧する。彼女の中の『ミリアリア=リリーレッド』はすでに死んでいる。今の彼女は皇帝スペルビアの忠実な下僕、エージェント・ブレイヴだ。

 それを理解しなければ俺は負けるだろう。たとえ彼女がミリアリアの成れの果てだしても、心を修羅にして彼女を討たねばならない。



「なら……お前に安らぎを与えるのが俺の使命だな、エージェント・ブレイヴ。俺はスペルビアとは違う、死んだ君に重荷は背負わせない」


「一緒だよ……どうせ君も絶望に堕ちるんだ」


「確かめてみろ! ステラ、エージェント・ブレイヴを倒して艦橋ブリッジを制圧する! この馬鹿を止めるのを手伝ってくれ!!」


「それぐらい安いお願いよ!!」


「トルーパー、こいつらを殺せ!! スペルビア様の復讐を邪魔だてする連中は皆殺しだ!! 殺せ、殺せ、殺せーーッッ!! ハハハハハハァ!!」



 エージェント・ブレイヴの怒りが籠もった命令と共に漆黒の兵士トルーパーは一斉にブラスターを発射した。

 迫りくる魔弾を身を屈めて躱しつつ俺はエージェント・ブレイヴに向けて飛び掛り、アリステラは周囲に立つ漆黒の兵士トルーパーを相手取る。



「目を覚ませ、アリアーーッ!!」

「いいや、君が堕ちなよ……ラムダさん!!」



 そして、俺は振り下ろした二丁拳銃とエージェント・ブレイヴが斬り上げた折れた聖が激突し、旗艦アウチェプスを巡る戦いが幕を上げたのだった。

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