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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十五章:ラムダ=エンシェントの復讐

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帝都崩壊の日④:スペルビア来襲!!


「帝都ゲヘナ……初めて訪れたが、どうという事はない。すぐに制圧して終わらせようか……」



 ――――帝都ゲヘナ、東側防壁。グランティアーゼ王国方面に面する区画は襲撃者による破壊活動によって全ての対空砲が破壊され、外周部に建てられた多くの建物が崩壊炎上していた。

 燃え盛る炎と立ち込める黒煙の中で、一際高いの監視塔の上に立ち、帝都ゲヘナを一望する男が一人。



《どういうつもりだい、スペルビア? 私が設計した対空砲を破壊するなんて……》


「貴様の都合など知ったことか、アルバート。対空砲ならまた後で卸せば良いだろう……」


《ふん……野蛮人が。それで……本当に帝都ゲヘナを陥落できるんだろうね? その為に私は君の計画に乗ったんだよ》


「安心しろ……今日中に片を付ける……」


《良いでしょう……そら、君の装甲アーマーに帝都ゲヘナの地図とインペルティ宮殿の設計図を送るよ。君が良い取り引き相手になる事を願っているよ……スペルビア》



 全身を機械仕掛けの黒い装甲アーマーで覆った男、その名はスペルビア。通信機で共犯者であるアルバート=ファフニールから帝都ゲヘナやインペルティ宮殿の地図を受け取った男は、眼下に広がる帝都の様子を眺め静かに作戦を練る。



「住民は宮殿方面へと避難……代わりに兵士たちが大挙して押し寄せるか……。まぁ定石だな……」



 市民たちは混乱しながらも軍人の指示に従って帝都中央区画に建つインペルティ宮殿へと避難し、スペルビアの元には武装した兵士たちが押し寄せて来ていた。

 兵士の数は三千人、六つの大隊からなる大戦力。帝都ゲヘナの防衛にあたる防衛部隊と、第一皇子ケント及び第二皇子ブロスタ指揮下の精鋭部隊である。だが、そんな大勢力を前にスペルビアは動じる事はなかった。



「目標は皇帝カルディアの首……だが、皇族連中も始末する必要がある。さて……どう動こうか?」


「監視塔に不審者発見! 撃ち方用意……!!」


「とりあえず目に付くもの全て皆殺しにしようか。ああ、それが良い……俺を“脅威”とすれば、民を守る義務のある皇族どもは出張らざるをえんだろう……」



 兵士たちの持つライフル銃のレーザーサイトに照らされながら、スペルビアは静かに殺気を研ぎ澄ましていく。

 彼の目的は皇帝カルディアの抹殺。その目的を果たす為、スペルビアは自らをアロガンティア帝国への“脅威”であると認定させ、皇族たちを釘付けにしようと企んでいた。



 そうとは知らず、先遣隊が侵入者に向けて発砲しようと引き金を引こうとした瞬間――――


「ライフル構え! 撃ち方ぁ……」

「“駆動斬撃刃セイバー・ビット”……展開」

「……始、待て……なんだアレは!?」


 ――――スペルビアによる無慈悲な虐殺は始まった。



 先遣隊三十名がライフルを放とうとした時、スペルビアの周囲に十本の浮遊する短剣が何処からともなく現れ、兵士たちは引きかけた引き金から指を思わず離した。

 スペルビアの周囲を短剣はぐるぐると旋回している。その謎の武装をスペルビアの固有術式ユニーク・スキルだと判断した兵士たちは、反撃や不測の事態を恐れて攻撃を停止していたのだ。



「撃った弾丸が跳ね返される事を恐れたか……正解だ。だが結局、死ぬことには変わりない……死ぬ瞬間が数秒延びただけだ……」



 しかし、兵士たちが攻撃しようが様子見しようが、スペルビアにとっては大差なかった。彼はどのみち、敵対した兵士たちをどうあっても皆殺しにするつもりなのだから。

 スペルビアが外套マントを大きくたなびかせた瞬間、彼と十本の短剣は忽然とその姿を暗ませる。



「消えた……!? これは……空間転移テレポートたぐいか……」

「気を付けろ! 奴は不意打ちを狙っているぞ!」



 瞬間移動ワープ、或いは空間転移テレポートか。高位の実力者が扱う空間術式。それをスペルビアは行使した。

 無論、敵が行使した術式が分からない兵士たちではない。スペルビアが監視塔から消えたのを視認した兵士たちは背中合わせで円陣を即座に組み、空間転移テレポートからの強襲に備えた。



「死角は無いぞ。さぁ、来るならこい!」



 何処から強襲しても死角は無い。唯一、全員が背を向ける円陣の中心も魔力による感知が仕掛けられている。円陣の中心を死角だと錯覚した敵を釣り上げる為の兵士たちのフォーメーションだ。

 全員が前方に視線を配り、背後に意識を集中する。兵士たちは知っていた。侵入者スペルビアが自分たちに殺意を向けて、必ず攻撃を仕掛けてくる事を。



「円の中心は死角ではなく“罠”か。面白い……」

「何処だ……!? なっ……頭上だと……!?」



 だが、兵士たちは読み間違った。スペルビアが現れたのは頭上、円陣を組んだ兵士たちの数メートル上だったのだ。

 背部から黒く輝く光で構築された翼を作り出し、スペルビアは空中浮遊をしながら兵士たちを見下している。そして、スペルビアの出現に気が付いた兵士たちが一斉に真上を向いて、スペルビアに向けてブラスターの銃口を向ける。



 次の瞬間だった――――


「そら、足元がお留守だぞ。刈れ……駆動斬撃刃セイバービット

「しまっ……足元から!? ぐあッッ!!?」


 ――――小さな短剣の光刃が兵士たちを斬り刻んだ。



 兵士たちの足元にスペルビアが操る十本の短剣が突如として転移。魔力を纏わせて刀身を巨大化させつつ高速で回転、勢いよく上昇して二十名の兵士を一気に斬りつけていった。

 スペルビアに気を取られた兵士たちは為す術なく光刃に斬り刻まれ、バラバラに切断されて死亡。スペルビアは十本の短剣を自身の周囲に舞い戻らすと、兵士たちの斬殺死体の中央に悠々と舞い降りた。



「さて……これで私が侵略者である事は理解できただろう? さぁ、命懸けで喰い止めねば帝国の未来は無いぞ」


「貴様……よくも我が兵を……この痴れ者が!!」



 遅れてやって来た帝国軍を威圧する為である。斬殺された先遣隊の無残な姿に畏怖する帝国兵たちをスペルビアは挑発する。

 その挑発に怒りを感じ、兵を引き連れていた青年将校は拳を震わせてスペルビアを睨みつける。



「傲慢な振る舞いはそこまでにして貰おうか、侵入者! 貴様はこの私……ケント=シィ=アロガンティアが成敗してくれる!!」


「その名前……皇族だな」


「我が帝国を踏み荒らす賊よ、覚悟せよ! アロガンティア帝国軍よ! 我等が同胞を殺めた悪党に、我等が威信を示せ!! 撃ち方用意ッッ!!」


「まずは一人目……クククッ!」



 部隊を指揮するのは皇帝カルディアの子、第一皇子ケント=シィ=アロガンティア。怯える兵士たちを勇ましい掛け声で奮起させた若き青年は、腰に携えた大型拳銃を敵対者へと向けるのだった。

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