表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
918/1170

幕間:Revenge


「ご報告を、皇帝陛下。エージェント・ブレイヴが魔界マカイご帰還なされました!」


「此処に通せ……」


「イエス、ユア・マジェスティ! エージェント・ブレイヴ、御入来!」



 ――――アロガンティア帝国、帝都ゲヘナ、インペルティ宮謁見の間にて。

 綺羅びやかな装飾の施された絢爛豪華な玉座に座る仮面の男、スペルビアは護衛からの報告を受けていた。魔界マカイに派遣したエージェント・ブレイヴが帰還したのだ。



「スペルビア様……エージェント・ブレイヴ、ただいま任務より帰還しました」



 千人は収容できる広大な謁見の間に招かれた仮面の女将校、エージェント・ブレイヴは玉座へと続く赤いカーペットを歩き、玉座の数メートル手前でかしずいて皇帝スペルビアに恭順の意を示す。



「礼の物は手に入れたか?」


「ハッ! 女神アーカーシャの権能の一つ、『地神炉心テラ・ドライヴ』は此処に。どうぞお納めください、皇帝陛下」


「良くやった、エージェント・ブレイヴ」



 エージェント・ブレイヴは魔界マカイでの任務達成の報告と共にふところから金色こんじきに輝く球体を取り出す。“地”(プリティヴィー)から奪取した女神アーカーシャの権能『地神炉心テラ・ドライヴ』だ。

 左手をかざした皇帝スペルビアはエージェント・ブレイヴの手から『地神炉心テラ・ドライヴ』を念動力で受け取り、戦利品をまじまじと眺めだした。



「これで『機神』を動かす準備はほぼ整った。後はラストアーク騎士団に与した“左翼”を回収すれば全ての準備が整う」


「申し訳御座いません、スペルビア様。“機神の左翼”アリステラ=エル=アロガンティアは捕縛には失敗しました。エージェント・ピースが先走ってしまった為に……」


「エージェント・ピースが?」


「はい……エージェント・ピースは無謀にもラムダ=エンシェントと交戦。結果、返り討ちにあい敗北しました。死体はラストアーク騎士団に回収されたものと……」


「そうか……エージェント・ピースは敗れたか。まぁ良い……アレには始めから期待などしていなかったさ。それに……アリステラの捕縛は後から十分に可能だ」



 女神アーカーシャの権能の一部を手に入れた事で、皇帝スペルビアの計画はいよいよ大詰めに向かうとしていた。だが、まだ肝心要なものが手に入っていなかった。それはラストアーク騎士団に属するアリステラ=エル=アロガンティアの身柄である。

 その事を皇帝スペルビアが気にかけた時、エージェント・ブレイヴは先の戦闘で敗北したエージェント・ピースに失敗の責任を擦り付けていた。



「ふん……エージェント・ピースが死んだですか〜。あいつ、スペルビア様の女気取りで気に食わなかったんですよね〜」


「フォックスの言う通りね、せいせいしたわ」


「功を焦って返り討ちに遭うなんて無能の極みなのだ。やっぱり……ピースにはエージェントの地位は相応しくなかったみたいなのだ」



 そんな事とはつゆ知らず、エージェント・ブレイヴの背後に現れた仮面の将校たちは、一斉にエージェント・ピースへの悪態をつき始めた。

 エージェント・ブレイヴと同じく、黒いボディースーツを纏い、頭部を仮面で隠し、アロガンティア帝国の紋章を刻む外套マントを羽織った将校たち。



「準備は整ったようだな、我が精鋭よ」


「ハッ! エージェント・クラウン、此処に」

「はい! エージェント・フォックス、此処に」

「はい……エージェント・ハート、此処に」

「はい! エージェント・アウル、此処に」



 人間種の女将校エージェント・クラウン、狐系亜人種の女将校エージェント・フォックス、サキュバス種の女将校エージェント・ハート、エルフ種の女将校エージェント・アウル。いずれもエージェント・ブレイヴと同格の帝国将校である。

 皇帝スペルビアの前に傅いたエージェントたちは深々とこうべを垂れ、目の前で玉座に座る男への変わらぬ忠誠を誓う。



「エージェント・クラウン、報告を……」


「イエス、ユア・マジェスティ! 帝国艦隊、全部隊出撃準備が整いました! 全トルーパー、全機械天使(ティタノマキナ)戦闘機(ファイター)、全機動兵器、いつでも戦闘可能状態にあります!」


「結構。帝都ゲヘナの準備は整ったか?」


「はっ! 帝都ゲヘナの基底部への“浮遊機構フロート・ユニット”、及び帝都外周への“電磁障壁タルタロス”の設置……既に完了しているのだ、スペルビア様」


「それで良い……」


「我ら『ベルヴェルグ』、この身、この命、全てをスペルビア様に捧げます! どうかご命令を……我があるじよ!!」



 彼女たちエージェントの総称は『ベルヴェルグ』――――皇帝スペルビアのやいば、彼が境界の向こう側から連れてきた精鋭。

 頭を垂れるエージェントたちの報告を受けた皇帝スペルビアはゆっくりと玉座から立ち上がる。



「全軍に通達せよ、これより『オーダー(アール)』を開始すると! 貴様たちエージェントは各大隊を引き連れ、与えられた使命を果たせ!」


「「「イエス、ユア・マジェスティ!!」」」


「失敗は“死”と心得よ、エージェント! エージェント・ピースのような失態は許さん……良いな?」


「「「仰せのままに……スペルビア様!」」」


「まずは手始めに……ラストアーク騎士団の拠点、そして“無限螺旋迷宮”ユグドラシル・シャフトの在る“海洋自由都市”バル・リベルタスを落とす! エージェント・ブレイヴ、貴様が指揮を執れ」


「イエス、ユア・マジェスティ!!」


「街の一切を焼き払え、歯向かう者は皆殺しにせよ! そうすれば……ラストアーク騎士団が向こうから現れる」


「仰せのままに……スペルビア様」


「エージェント・ハート、トネリコ=アルカンシェルとタウロスⅠⅤ(フォー)にも出撃を命じろ。逆らう場合は貴様の“魅了チャーム”で無理やり働かせよ」


「イエス、ユア・マジェスティ……スペルビア様」



 皇帝スペルビアにより、アロガンティア帝国軍は動き始める。彼が最初に命じたのは、冒険者ギルドの本部が在る“海洋自由都市”バル・リベルタスの陥落である。

 発令された無慈悲な殲滅指令にエージェントたちは恭順の意を示して従うのみ。指揮を任されたエージェント・ブレイヴは立ち上がり、きびすを返して謁見の間を後にしていく。艦隊を率い、海洋自由都市へと進撃する為だ。



「いよいよ……私の復讐が始まる。待っていてくれ……俺は必ず君を取り戻すよ、ノア……」



 ラストアーク騎士団が魔界マカイから飛び立ったその日、帝都ゲヘナからは数万人を乗せた帝国艦隊が“海洋自由都市”バル・リベルタスへと向かって発進した。

 ここより始まるのは復讐。皇帝スペルビアを名乗るある少年の、世界に対しての復讐劇である。

最長の章である第十四章、これにて完結です。

長時間お付き合いいただきありがとうございます。


次回からは第三部を締めくくる第十五章『ラムダ=エンシェントの復讐』が始まりますのでよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ