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第47話:【古の勇者】クラヴィス=ユーステフィア


「すごい……あの骸骨さん【勇者】だったんだ……! じゃあ、僕ってばあの人の後輩……?」


「あの骸の正体が勇者ユーステフィアだと……!? そうか、だからここの封印は……」


「どうされたのですか〜、アンジュ様〜? 何か気になることでもあるのですか〜?」


「いや……別に。アレの正体を私も知らなくてな……」



 剣撃は激しく、斬撃は激しく飛び交い、かつての勇者クラヴィスと俺の戦いはますます激しさを増していく。


 俺の持つ流星剣メテオザンバーは古代文明時代に飛来した隕石より採掘された未知の合金『星屑の因子(プラネタリウム)』で造られた兵装であり、光量子フォトンを分解する性質から『バリア等の量子障壁』を貫通して切り裂く特性を有し、その硬度もこの世界に存在するあらゆる物質を凌駕する。


 だが、勇者クラヴィスの持つ剣は俺の振るう流星剣メテオザンバーをものともせずに受け止める。



「ふふふっ、良いつるぎだな……! 受け方を間違えると私の聖剣が簡単に折れてしまいそうだ……!」


「実際なら簡単に折れる手前、貴方の実力に感心させられるよ! ビクともしねぇもんな……!」



 クラヴィスの表情かおに焦りは無い…………骸骨だから表情は分からなかった。


 が、その立ち振舞に少なくてもほころびは見えない。ノアが教えてくれたことわざ、『腐ってもたい』とはこの事か。



「そろそろ、準備運動で身体も温まってきた頃かな?」

「あんた骸骨なのに体温なんてあるのか……?」


「…………確かに、意味が無かった! ……っと、いけないな。つい乗せられてしまったよ……!」



 幾つかの剣撃と言葉を交わした勇者クラヴィスは不敵に笑い、後ろに飛び退いて距離を取ると骨をポキポキと鳴らしながら『準備運動の終わり』を宣言する。



「正々堂々と“剣”を使った果たし合いに付き合って貰って礼を言おう。しかし……君もそろそろ()()()()()()()じゃないか……?」


「…………良いんだな、本気でやっても?」



 むくろと化してなお、深淵に封じられた邪神を監視し続けるかつての勇者は、身体の正面に聖剣を構えて祈りを捧げ始める。



「女神アーカーシャよ、我が名においてこの聖なる剣を解き放ち給え――――聖剣、解放……!!」



 勇者クラヴィスの祈りに呼応したのか、聖剣のつばに埋め込まれていた翡翠エメラルド色の魔石は強い輝きを放ち始め、たちまちに骸の騎士の姿を覆ってしまう。


 そして、ほんの数秒後、光の中から現れたのは――――鮮やかな金色の長髪、翡翠エメラルドの様に美しく煌めくあおい瞳、透き通るなめらかな白い肌をしたひとりの少女。



「あんた……女だったのか……!?」


「いかにも……私は【勇者】クラヴィス=ユーステフィア! この姿は幻想……聖剣の解放と共に再現される在りし日の私だ!」



 聖剣の解放よって現れたのは全盛期の姿の勇者クラヴィス。煌めく聖剣に相応しい幻想的な雰囲気の少女が俺の前に立ちはだかる。



「そして、ここからが私の全身全霊、全力全開……! 固有ユニークスキル発動――――【聖剣投影プロイエクトゥーラ・カリバー】」



 そして、彼女が天高く掲げた聖剣から現れた眩しい程に輝く六つの光と、その光に照らされて地面に出来上がった聖剣の影。勇者クラヴィスの合図と共に、黒くにじんだ聖剣の“影”はひとりでに宙へと浮かび上がり、やがて6本の黒い影の剣となりて勇者クラヴィスを取り囲む。



「…………な!?」


「これぞ女神アーカーシャよりたまわりし私の固有ユニークスキル【聖剣投影プロイエクトゥーラ・カリバー】――――手にした聖剣と同等の性質を持つ聖剣の“影”を実体のある剣として使役する能力……!」



 黒い影の聖剣――――勇者クラヴィスの持つ聖剣の影。六本の剣は骸の勇者を取り囲む様にくるくると円を描いて周り、まるで意思を持つ生物のようにひとりでに動いている。



「我が剣は【破邪の聖剣・シャルルマーニュ】。そして、この聖剣の影たるこれらのつるぎもまた、破邪の権能を宿すものなり! 深淵へと挑みし者よ――――数多の死を踏み越えて、抗って見せよ!!」



 聖剣の名を破邪の聖剣・シャルルマーニュ――――勇者クラヴィスの名の元に集った聖剣は彼女の意思に呼応して一斉に俺に襲い掛かる。


 まっすぐ飛来するもの、ジグザグの軌道を描いて飛翔するもの、大きく弧を描いて迫りくるもの、背後へと回り込んで強襲するもの。四方八方からの方位斬撃、逃れる可能性は低い。


 だからこそ、俺もこの戦いに相応しいアーティファクトを繰り出そう。



「転送――――来い、“光量子自在推進フォトニック・式駆動斬撃刃セイバービット”!!」



遺物アーティファクト――――認識。脳波誘導式自在駆動兵装・光量子自在推進(フォトニック・)式駆動斬撃刃セイバービット:――――認識。スキル【ゴミ拾い】効果発動―――所有者をラムダ=エンシェントに設定――――完了。スキル効果による拾得物と術者の同調シンクロ率最適化――――完了。拾得物に記憶された技量熟練度及び技能の継承ラーニング――――完了。技量スキル【並列思考:Lv.10】取得――――完了』



 俺の合図と共に繰り出されるは十本の小型の剣。


 自律して駆動するビット型のアーティファクト――――“光量子自在推進フォトニック・式駆動斬撃刃セイバービット”。俺の脳波によって操作する腕の長さほどの小型浮遊兵器であり、光量子フォトンで構築された光刃で敵を斬り裂く制圧兵器。



《ラムダさん、聴こえますか? その駆動斬撃刃セイバービットは脳の負担が大きすぎるので、なるべく【自動操縦オート・パイロット】のスキルと併せて使用してください!》


「分かっている……今でも頭が焼ききれそうだ……」


《お気を付けて、ラムダさん……!》

「大丈夫……わかっているさ!」



 現れた駆動斬撃刃セイバービットは、飛来する勇者クラヴィスの聖剣の影を全て受け止めて俺を守り抜く。


 俺のスキル【自動操縦オート・パイロット】によって『ラムダ=エンシェントを守護せよ』と命じられた十基の刃が、迫りくる勇者クラヴィスを威嚇する。


 戦いは次の領域ヘ――――勇者クラヴィスは一本の聖剣と六本の聖剣の影を引き連れて、俺は一本の遺物アーティファクトの剣と十基の小型剣を引き連れて、互いに騎士と騎士との『誇り』と『信念』を掛けて斬り結ぶ。

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


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