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第41話:深淵牢獄迷宮【インフェリス】


「ラムダ様、ご無事でしたか〜! コレットは心配してましたよ〜」


「悪かった。それでノア、アンジュさんの様態は?」


「気を失っているだけだから大丈夫です。それで……エクスギアスは?」



 ――――リティア=ヒュプノスの撃破、そして続けざまに現れた黒い手と謎の人物。それらを切り抜けた俺は宿屋『アリアドネ』へと帰還、ノアたちと合流していた。


 幸いな事にノア達は誰ひとり傷付く事は無く、部屋のベットにはミリアリアが保護したアンジュが寝かされていた。



「逃げられた……いいや、リティアは連れ去られた。あいつに()()()()()()()()真の黒幕にな」


「それ、どう言う意味なの……ラムダさん?」



 ミリアリアの問いに俺は答える――――リティアの本心、彼を駒扱いした黒い手の存在、強制催眠装置エクスギアスの真の所有者、そしてそいつの口から語られた『牢獄』の謎。


「深淵迷宮【インフェリス】が牢獄……ですか?」

「心当たりはあるか、コレット……?」


「いいえ……深淵迷宮インフェリスが牢獄だなんて話、コレットは聞いたことありません~」


「女神アーカーシャ降臨の地……サートゥスの神父様がおっしゃっていました。世界には、いくつか女神アーカーシャ様が現れた地があると……」


 謎を紐解く口火くちびを切ったのはオリビアだった。曰く、この迷宮都市エルロル周辺には『女神アーカーシャ降臨』の伝承があるらしい。


「それが何か因果関係があるのか、オリビア?」


「教団に伝わる伝承では、女神アーカーシャ様が降臨されたのはいずれも『世界に害を成す巨悪が顕れた時』に限定されています。だとすれば、この迷宮都市エルロル周辺にも『女神アーカーシャ様が対処せざるを得なかった巨悪』が顕れた事になります……」


「それって、つまり……!」



 この迷宮都市エルロル周辺に顕れた『巨悪』を女神システムアーカーシャが倒した。その伝承が事実なら、ある『仮説』が一つだけ浮かぶ。


「ノア……俺が見た黒い手が、女神アーカーシャに敗れた巨悪の可能性……あると思うか?」


「…………充分に」


「つまり……黒い手が言っていた牢獄とは……深淵迷宮インフェリスのこと」


「この迷宮ダンジョンは元々“牢獄”として造られたって事?」



 深淵牢獄迷宮――――それが、迷宮都市エルロルの下に存在する迷宮ダンジョンの正体。



「女神アーカーシャに敗北した何者かが封印された地下牢獄……!」


「それを先史文明が迷宮ダンジョンとして開放した……!」


「そして、【死の商人】と呼ばれる人物から強制催眠装置エクスギアスを受け取った黒幕が、リティア=ヒュプノスを催眠して操っていた」



 迷宮都市エルロルに渦巻く陰謀、深淵の孔の底に潜む邪悪なる影――――それが、俺たちが巻き込まれた事件の全貌。



「コレット……今まで、この深淵迷宮インフェリスの最下層に挑んだ冒険者はいるのか?」


「いいえ、記録上では最下層に到達した冒険者は存在していません。しかし、最下層に何かが存在するのは間違いないかと……」



 深淵迷宮インフェリスの最下層に潜む巨悪は俺に『最下層まで来い』と促した。そして、最下層へと到達出来なければ、アーティファクトの奪還もリティアの救出も叶わない。



「ラムダさん、迷宮ダンジョンの最下層へと行きましょう! 私がギルドランクを偽装してでも最下層までの道を切り開きます!」


「…………ノア」


「あれは……【強制催眠装置エクスギアス】は回収しないといけません! 絶対に……!」


「僕もノアさんの意見に賛成だ! このまま、この問題を放置には出来ないよ! 行こう、ラムダさん!」



 ノアとミリアリアの提案、深淵牢獄迷宮【インフェリス】最下層への突入。これに対してコレット、オリビアもふたりも強くうなずいて同意し、彼女たちの意思は団結していた。



「待て待て、俺たちは全員レベル20にも満たない弱小パーティだ! A級冒険者でも普通に死ぬような迷宮ダンジョンで五体満足で行けると思うか?」


「その点なら安心しろ。私が君たちを最下層まで送ってみせよう……!」


「アンジュさん……意識が戻って……」

「ああ、今しがたな。まだ少し身体が痛いが……」



 そんな俺たちの意思を後押しする様に進言する人物が一人いた。意識を取り戻したアンジュ=バーンライトだ。彼女はベッドから身体を起こすと俺たちへの同行を申し出たのだ。



「アンジュ様、お身体は大丈夫ですか……?」


「心配ない、神官オリビアよ。ラムダ=エンシェント……すまない、世話を掛けたようだな」


「アンジュさん……催眠が解けたんですね?」


「おそらく、催眠に使うあのプレートの“所有権”がリティアから例の()()に移ったせいだろう。それと……君に思いっきり殴られたからな?」


「邪神? それが敵の正体?」



 にこやかに笑顔を見せるアンジュは眼にも活気が戻っており、今はリティアの支配も影響していない様だ。だがノアだけはアンジュの言葉に引っ掛かりを覚えたのか怪訝な表情をしていた。



貴殿きでんたちの深淵迷宮インフェリス最下層到達までの護衛は任せて貰おう。それに……私を散々にはずかしめたリティアは一発ぶん殴らんと気が済まない!」


「任せて良いんですね、アンジュさん?」


「期待には応えよう。ラムダ=エンシェント……私を倒した男よ。借りは返さないとな」



 組みかわされた握手、心強い味方――――S級冒険者、アンジュ=バーンライトと協力し、俺たちは深淵牢獄迷宮インフェリスの最深部を目指す。


 深淵の底に待つ、真なる巨悪を討つために。

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


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