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第37話:誘いの眼


「ですから〜、私のギルドランクを偽装して、今からでも最高級スイートルームに変更しましょうよ~ラムダさ〜ん」


「だめだめ、絶対にダメ! S級冒険者ご用達のスイートルームなんて幾らすると思っているんだ? ランク相応の部屋で良いの、分かった?」


「はぁ~い……。うむむ……まさか貴族であるはずのラムダさんが“倹約家けんやくか”だったなんて……」



 迷宮都市エルロル、第0階層・宿屋街、冒険者ギルド専属宿泊施設『アリアドネ』。迷宮都市エルロルへと訪れる膨大ぼうだいな数の冒険者たちの宿泊施設としてギルドが設けた『冒険者専用の宿屋』の内の一つであり、ギルドの許可証ライセンスを持つ冒険者のみが宿泊出来る。


 そこに俺たちは部屋を取り、迷宮都市エルロル滞在中はそこで宿泊する事に決めた。


 ここ『アリアドネ』は所有しているギルドランクによって泊まれる部屋のグレードが変化し、S級以上のライセンスを持つ冒険者には『もうここに住めば良くね?』ともっぱら評判のスイートルームに案内されるらしい。


 が、そんな『夢のある話』はランクEの俺たちには関係ない話だ。最底ランクの部屋でもしっかりとした個室、路銀ろぎんに頭を抱えている俺たちには十分過ぎる程の部屋だ。



「部屋割りは俺、ノアとコレット、オリビアとアリアで三部屋な。もう、コレット達に部屋は確保させているからさっさと行くよ」


「ねぇねぇ、後で夜這よばいしに行っても良い?」


「だめ」



 コレット達に部屋の確保を頼み、明日の探索に使う物資を買い込んだ俺は、『部屋のグレードを上げたい』と駄々をこねる付き添いのノアを牽制けんせいしながら宿屋の通路を歩いていく。



「あっ、ラムダさん、ノアさん、こっちこっち!」


「アリア、遅くなってごめん」


「もぉ~、待ちくたびれたよ! 早く明日の準備をしよ! ラムダさん、荷物持ってあげるね♪」


「そっち!? か弱い乙女であるノアちゃんをいたわる気は無いんですかーー!?」



 長い通路の途中で現れたのはミリアリア――――手を振ってはにかむ彼女と合流し、部屋の鍵を受け取った俺たちは予約した部屋にもう少しで到着と言う所まで来ていた。



「おや……誰かと思えば、昼間の冒険者さんじゃありませんか?」


「ん? あんたは確か……」



 その時、不意に背後から掛けられる少年の声。振り向いた先に居たのは、昼間、深淵迷宮インフェリスで出会った冒険者の少年・リティア。



「ランクEの冒険者、リティア=ヒュプノスです。改めてよろしくね……ラムダさん?」


「ねぇねぇ、リティア君? この人たち知り合い?」


「くすくす……よろしくね〜♡」



 彼の両隣には昼間は見掛けなかった女性がふたり、ひとりは【弓兵アーチャー】とおぼしき軽装に弓を担いだエルフ族の少女、もうひとりは【魔女ウィッチ】とおぼしき黒いローブととんがり帽子に身を包んだ女性。



「あなたに名乗った覚えは無いけど……ところで、そのふたりは? 昼間にいたアンジュさんはどこに?」


「アンジュさんなら部屋で休んでいますよ。少し、()()()()()()()()()()()()。それと、このふたりは()()新しい仲間、ふたりともA(ランク)の冒険者なんですよ!」



「A(ランク)の冒険者がふたり……昼間のアンジュさんがS(ランク)だから、すごい高レベルのパーティだ!!」



 ふたりの女性の肩に腕を回し、自慢気に語るリティア。その目は少しだけくすんで、何かよこしまな気配を漂わせていた。



「そうか、それは良かった! きっとあのアンジュって人の強さに憧れて仲間になったんだな……」


「いいや、違う! 僕が、仲間にしたんだ! この僕がね!」



 どうも様子がおかしい。リティアはふたりを仲間にしたことを『自分の成果』だと強く主張している。



『はい……アンジュ=バーンライト様は、他者とは群れない()()()()()()です。そんなアンジュ様が無名の冒険者と行動を共にするなんて……』



 深淵迷宮インフェリスでのコレットの言葉が脳裏をよぎる。そう、コレット曰く、そもそも一匹狼であるアンジュが、目の前にいる無名の冒険者であるリティアの仲間になっていること自体がおかしいらしい。



「ふ~ん……じゃあ、あのアンジュって人はなんで貴方の仲間になったの?」


「………………」



 その違和感を感じ取ったのか、はたまた天然か。ミリアリアはリティアに『なぜ、アンジュ=バーンライトは貴方の仲間になったのか?』と、不思議そうに尋ねた。



「ふ……ふふふ……ふふふふふ! アンジュさん……なぁに、簡単だよ。お願いしたら仲間になってくれたのさ!」



 ミリアリアの問いに『お願い』しただけと、笑いながら返すリティア。どう考えても様子が変だ。昼間に会ったときはもっと穏和な性格だったはずだ。



「お前、俺たちに何の用だ?」


「そうそう……君たちに相談があるんだ。ねぇ、僕の仲間にならないか?」


「…………え!?」



 そんなリティアの口から漏れたのは勧誘の言葉。彼は臆面おくめんもなく、俺たちに『仲間にならないか?』と言ってきたのだった。

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


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