表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/1167

第36話:新しい仲間


「まったく、酷い目に遭いました! う~……お尻がまだ痛いです……」


「ノアの尻を痛めつけるなんて……まったく、あのアンジュって人にも困ったもんだな!」


「私のお尻を痛めつけたのはラムダさんなんですが!?」



 迷宮都市エルロル第0階層、街の一画にる大食堂。時刻は夕方。


 窓から夕日が差し込む食堂で、深淵迷宮インフェリスから帰還した俺たちは少し早めの夕食を摂っていた。



「……で、結局、今回の探索の収穫はラムダ様が発見された武器100ティア、モンスターハウスで採取できた【インプの魔石30個】【よく分からない骨】600ティア――――占めて700ティア。はっきり言いまして、今の食事代にも届いていません!」


「うーん……やっぱ拾った武器の買い取り価格が低いんだよなぁ。そりゃ【ゴミ漁り(スカベンジャー)】なんて職業クラス、馬鹿にされるよなぁ……」


「オリビア様……ラムダ様がいじけてらっしゃります〜」


「まぁまぁ、ラムダ様♡ ラムダ様の売りは圧倒的な戦闘能力なんですから、そんなに気を落とさないでください……ね♡」



 途中で邪魔が入ったとは言え、結果としては非常に微妙。とてもじゃないが、俺たち五人パーティを養うにはほど遠い稼ぎしか無かった。



「となると、やっぱり冒険者ランクを上げてより下層の迷宮ダンジョンへ探索に出たほうが良いのかな?」


「まぁ、ミリアリアの言う通りだな。明日はギルドランクを上げる依頼クエスト込みで深淵迷宮インフェリスに潜ってみるか……」



 Eランクで行ける範囲の迷宮ダンジョンは既に多くの冒険者によって探索され尽くしている。ともなれば、より多くの報酬を獲得するためには冒険者ランクの向上は不可避だろう。


 幸いなことに、コレットの事前調査リサーチ深淵迷宮インフェリス向けの依頼クエストの中に冒険者ランクDへ昇格する為の討伐依頼(クエスト)があるのを確認している。


 明日はその依頼クエストを受注しつつ、深淵迷宮インフェリスに挑む。それが俺たちの明日以降の行動指針だった。



「あんまりぐずぐずすると、ツヴァイ様から頂戴ちょうだいしたお小遣い5万ティアもあっという間になくなってしまいます〜」


「……だな。っと、ミリアリアはどうするんだ? 無理に俺たちに付き合わなくても良いんだぞ?」


「そうだね……ランク上げは僕もしたいし、出来れば明日も一緒しても良いかな?」


「そう言う事なら喜んで」



 人数が増えたせいか会話がはずむ。ミリアリアも元気を取り戻した様子で楽しそうにオリビア達と談笑していた。



「そうそう……僕の名前、長いでしょ? よかったら『アリア』って呼んで欲しいな」


「あだ名か……?」


「うん! 僕ってちょっと()()()なんだけど………でも、『アリア』って女の子っぽい響きが好きなんだ! だからね……?」


「え〜っ! ノアは『ミリア』の方が言いやすいです~!」



 そんな中、ミリアリアからの突然の提案をされた。打ち解けたあかしだろうか、彼女は自分の事を『アリア』と呼んで欲しいと俺たちにお願いしてきたのだ。


 しかし、珍しくノアが反対。『ミリア』の方が良いと言い出してきた。



「おいおい……本人が『アリア』が良いって言ってるんだから、『アリア』で良いだろ?」


「嫌です〜……むかしの私の友だちに『アリア』って名前の子がいたから被っちゃいます~!」


「ふ~ん、そうなんだ」


「…………!」



 昔、『アリア』と言う友人が居た。それがノアの理由。今は亡き友人を思い出してしまうのだろう。


 けれど、ノアは友人の死には触れない。彼女なりに気をつかっているのだろう。ノアはわざと我儘わがままを装ってミリアリアに本心を気取けどられない様にしていた。



「複雑な事情があるみたいだね、ノアさんは。良いよ、僕は『ミリア』でも大歓迎さ!」


「ホント! じゃあ、よろしくね『リアリア』ちゃん!」


「次に『リアリア』って言ったら、お尻を四つに割るよ?」


「はぅ!? ふ……複雑な事情があるみたいだね……ミリアちゃんは……! もう言わないから許して……」



 ミリアリア――――『アリア』の寛大かんだいさについつい調子に乗ったノアに繰り出された強烈なカウンター。アリアの鬼の形相に気圧されたノアは顔面蒼白になって彼女に許しを乞うている。



「ぷっ、あははは! 冗談だよ、冗談! さて……じゃあ、改めまして――――」



 そのノアの慌てふためいた様子に大笑いし、満足したアリアは勢いよく立ち上がると、おもむろに自身のステータス画面を表示し始める。



 ︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻︻


 名前(NAME):ミリアリア=リリーレッド


 年齢(AGE):15 総合能力ランク:Lv.13


 体力(HP):140/140 魔力(MP):70/70

 攻撃力(ATK):150 防御力(DEF):80

 筋力(STR):100 耐久(VIT):70

 知力(INT):40 技量(DEX):90

 敏捷(SPD):130 (LUC):50


 冒険者ランク:E 所属ギルド:なし

 

 職業クラス:【勇者:Lv.1】(全能力に成長ボーナス)


 固有ユニークスキル:【強化充装填レヴィタス・インプレオ:Lv.2】


 保有技能(スキル):【厄災の引き金(カラミティ・トリガー):Lv.2】【聖剣覚醒:Lv.1】【不屈の意志(ブレイブ・ハート):Lv.1】【直感:Lv.2】【状態異常耐性:Lv.1】


  ︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼︼



「【勇者】ミリアリア=リリーレッド――――これからもよろしくお願いします!」



 改めての自己紹介――――偶然出会い、成り行きで迷宮ダンジョンを探索した『その場限りの関係』だったアリアと、正式に“えん”が結ばれた瞬間。


 ロクウルスの森での戦い、ラジアータ村の悲劇、オトゥールでの【吸血淫魔】との決戦。その因果いんがの行き着く先、【勇者】ミリアリアとの邂逅。


 俺たちのパーティに、賑やかな仲間が増えた瞬間であった。



「ねぇねぇ、ラムダ様。できれば……わたしもあだ名で呼んで欲しいな♡」


「? オリビアさん、急にどうしたの……?」


「オリビア“さん”じゃあ、なんだか他人行儀みたいで……」


「うんうん……! じゃあなんて呼べば良いの?」


「そう……できれば……『雌犬めすいぬ』で♡」

「うん……却下きゃっか

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


ご覧いただきありがとうございます。


この話を「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、↓の☆☆☆☆☆を★★★★★にしたりブックマーク登録をして頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オリビアは何処に逝こうと?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ