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第35話:【爆ぜる光】


「そう言えば、ノアさんはどこに……?」


「爆発とは反対側の壁に積もった瓦礫がれきの山から突き出たお尻がそうじゃないかな?」


「まぁ無様ぶざま……こほんっ、では無く、早くノアさんを救出しましょう!」


「ラムダさん! ノアさんは僕たちに任せて!」



 今度は瓦礫に埋もれたノアを救出するために走り出すミリアリアとオリビアを尻目に、俺は乱入者へと睨みをかせる。



「あーっ、ほら、やっぱり誰か巻き添えを喰らっているじゃないですか! 自分の実力ぐらい把握して下さいよ、アンジュさん?」


「分かっている……リティアはうるさいぞ!」


「……何者だ、あんた達?」



 ピリピリとした空気、張り詰めた雰囲気、緊張感からくる強張こわばり。さらに少年から『アンジュ』と呼ばれた女が放つ威圧感が空間に圧を掛けている。



「これは失礼した。戦闘音が聴こえていたから一大事だと思って近道をしたつもりだったが、そのせいで君の仲間に怪我をさせてしまったようだ……」


「それで済む問題か? 下手をしたら死んでいるところだぞ?」



 硬い姿勢で頭を垂れるアンジュ。一応、ノアを攻撃に巻き込んだ事を詫ているようだが、それで納得出来る訳も無い。



「大丈夫ですか、ノアさん!? しっかりしてください!」


「お、お尻が……二つに割れちゃう〜」


「全然大丈夫そう。結構タフですね、ノアさん」



 幸い、ノアは目をくるくる回して気絶してるだけに留まっている。だが、彼女がもう少しおしとやかな淑女ヒロインだったら大怪我は逃れられなかったであろう。


 周囲をかえりみないアンジュの無鉄砲な行動は正直に言って目に余る。してや、実際にノアに被害が及んだのだ。彼女の騎士である俺にとっては由々しき事態だ。



「すみません……アンジュさんは強いので、手加減してもついつい色々と壊してしまうのです」


「よせ、リティア! 人前でそう言う事を言うな!」



 睨み合う俺とアンジュの間に入ってきたのは『リティア』と呼ばれた少年。


 リティアは俺にペコリとやや軽やかに頭を下げると、『アンジュにも悪気は無かった』と精一杯に彼女の擁護をし始める。



「まぁ、分かっているよ。幸い、うちの連れも軽傷で済んでいるし、そもそもがあいつの自業自得で起きた事態だ。あんたらをこれ以上、責める気は無いよ」


「そうですか! 良かったですね、アンジュさん!」



 謝罪をし、反省の素振りを見せている以上、俺がこれ以上言う事は特に無い。俺が口を紡いだのに気が付いたのか、リティアはアンジュの腕にしがみつくように彼女に近付く。


 彼なりのなぐさめか、はげましか。人命に関わる事なので、ある程度真摯(しんし)に受け止めてくれればいいのだが。



「ラムダさん、ノアさんどうしましょう?」


「まぁ、そろそろ切りもいいし、一旦街に戻って宿屋に行こう! そこでノアをしっか休ませれば回復するだろう。今回の件はこれで終わり、あんた等もそれで良いな?」



 そんな折にオリビアから尋ねられる今後の動向。既にダンジョン足を踏み込んでから三時間程が経過していた。


 元々『夕暮れ迄に出来る範囲の探索』だと決めていた以上、一応手負いのノアを引き連れて探索を強行するのは得策では無い。俺はアンジュの早計そうけいを『帰還する為の適当な口実こうじつ』だと割り切る事にした。



「かたじけない。この詫びは近い内に必ずさせてもらう」

「すみません、ご迷惑をお掛けしました」



 俺の手打ち宣言に頭を下げてもう一度深く謝罪をしたアンジュとリティアは、ノア用に幾つかの回復薬ポーションを俺たちに預けてからその場を後にした。



「はぁ……何だったんだ、あいつ等は……?」


「あちらの女性はS級冒険者、アンジュ=バーンライトで間違いありませんね〜」


「知っているのか、コレット……?」


「はい……彼女はギルドでも数少ないS(ランク)以上の許可証ライセンスを持つ凄腕の戦士です〜」



 そして、ふたりの姿が見えなくなったと同時に、コレットの口から語られたアンジュの素性。冒険者ギルドの精鋭、【S(ランク)冒険者】アンジュ=バーンライト。


 攻撃箇所に大爆発を巻き起こす固有ユニークスキル【爆ぜる閃光エクスプロデーレ・ミーティア】による高火力・広範囲の攻撃力を誇る無双の【戦士ウォーリア】――――通称“爆ぜる光(バーンライト)”の異名で知られる猛者もさ



「もうひとりのリティアって奴も有名なのか?」


「いいえ、コレットはリティア様なる人物の噂は存じ上げておりません。それに……()()()()()()()……」


「何かが……?」


「はい……アンジュ=バーンライト様は……他者とは群れない()()()()()()です。そんなアンジュ様が無名の冒険者と行動を共にするなんて……!」



 そんなアンジュの()()()懸念けねんするコレット。彼女の直感――――【野生の勘(ワイルド・センス)】がそう告げているのだろう。


 不安げな表情ひょうじょうのコレットに、俺も妙な胸騒ぎを覚えた。



「ところで……コレットは随分とギルドの冒険者に詳しいんだな?」


「えへへ~、実はコレット……冒険者ギルドで発行されている『月間冒険者目録』を読むのが趣味で〜♪」


「へー……意外な趣味してんだな……」

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


ご覧いただきありがとうございます。


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