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第34話:深淵迷宮インフェリス・第一階層


魔弓まきゅう武器:マジックアロー――――認識にんしき。所有者の意志による保有権限の放棄――――認識。スキル【ゴミ拾い】の効果発動――――放棄されたマジックアローの所有権を術者:ラムダ=エンシェントに設定――――完了。スキル効果による拾得物と術者の同調シンクロ率の最適化――――完了。拾得物に記憶された技量ぎりょう熟練度じゅくれんど継承ラーニング――――完了。技量スキル【弓術:Lv.3】【高速詠唱:Lv.1】、修得――――完了』


「う~ん……俺は【弓兵アーチャー】じゃないからこのスキルは微妙だなぁ……ノアがくれたアーティファクトにも弓の武装は無かったし……。『魔法詠唱、一小節短縮』の【高速詠唱:Lv.1】も使い所が……」



 【深淵迷宮インフェリス】――――第一階層、誘いの迷路。冒険者ギルド・エルロル支部内部にある入口から迷宮ダンジョンへと突入した冒険者たちを待ち構える第一の階層エリア


 複雑怪奇に入り組んだ迷路が冒険者たちを惑わせて足止めする、先史文明の遺跡に於ける“侵入者除け”の領域の名残り。



『投擲武器:エンジェル・チャクラム――――認識にんしき。所有者死亡による保有権限の放棄――――認識。スキル【ゴミ拾い】の効果発動――――放棄されたチャクラムの所有権を術者:ラムダ=エンシェントに設定――――完了。スキル効果による拾得物と術者の同調シンクロ率の最適化――――完了。拾得物に記憶された技量ぎりょう熟練度じゅくれんど継承ラーニング――――完了。技量スキル【投擲とうてき:Lv.1】、修得――――完了』


「この骨の近くに落ちているのは……おっ、【投擲】スキルだ! これは便利そうだな♪」



 深淵迷宮インフェリスは複数階層に分かれた階層型の迷宮ダンジョンであり、ギルドランクによって行ける範囲が制限されると言う制約があった。


 関係者曰く、分不相応な階層エリアへと迂闊うかつに侵入し、『力不足による“無駄死”する事』を未然に防ぐ為に設けた冒険者ギルド側の『配慮』なのだそうだ。


 その為、ギルドランクを()()しているノア以外の俺たち【ランクE】組は第一階層から第三階層までしか探索する事を許されておらず、仕方なく今日の夕暮れ迄で探索出来る範囲を見て回って明日以降の段取りを考える事となった。



「あの〜ラムダ様〜……先程から、何をなさっているのでしょうか〜?」


「あぁ、『ゴミ拾い』だよ……『ゴミ拾い』! 迷宮ダンジョンの中で“ゴミ”になっている装備品やアイテムを拾って、そこから経験値を吸収しているのさ」


「なるほどなるほどー! 所でラムダ様、ただいまコレット達はうっかり【モンスターハウス】に足を踏み入れてしまい絶賛戦闘中なのですが、助けては頂けないでしょうか〜?」



 迷路の様に入り組んだ第一階層、そこで俺は迷路ダンジョンのあちこちに落ちている先駆者せんくしゃたちの遺品、或いはなんらかの理由で捨てたであろう装備品を拾っては固有ユニークスキル【ゴミ拾い】の効果で元の所有者の経験値を修得ラーニングしていた。


 そんな俺の思惑おもわくとは別に、現在、俺たち一行いっこう迷路ダンジョン内に存在していた魔物モンスターたちの巣窟そうくつ、通称【モンスターハウス】にうっかり踏み込んでしまい、絶賛激闘状態になっていた。



「せいっ! やぁっ! まだまだ、どんどん来い!」



 周りを囲む悪魔種の魔物モンスターである【インプ】の集団をいさみよく斬り倒していくミリアリア。



固有ユニークスキル【玖色焔狐・煉獄焔尾エストゥス・イラ・ヴルペス】……魔を焼く“白”のほむら――――“狐火・白(アルブム・イグニス)”!!」



 俺の盾になりながら、“対魔性特効”の効果を有する白炎をインプの軍団へ向けて放つコレット。



「聖なる光よ、集え! 思いっ切り、杖で殴る♪」

「アレ!? 杖で殴るんだ!?」



 手にした杖の先端に飾られた白い魔石に対魔の力を持つ“聖属性”の光を宿し、そのまま杖でインプを殴り倒していくオリビア。魔法使いなよ。



「ラムダさ〜ん、助けて〜壁に埋められちゃいました〜(泣)」



 この部屋の大半のインプに寄ってたかられ、魔法の力で壁に埋め込まれているノア。あぁ、顔とお尻だけを壁から突き出した姿がなんとも無様ぶざまだ。



「ごめん、ラムダさん! ノアさんにだけ何故かインプが集まっちゃって……!」


「ノアさん……“盾役タンク”の素質がありますね」

「コレットたちは自分の身を守るので精一杯です〜!」


「はぁ、やれやれ……『ラムダさんはそこで見学していてくださーい』って言ったのはどこのどいつだよ?」


「「「あの壁尻かべしりしている人です!」」」



 大きく仕切られた空間にわらわらと大量に浮かび、こちらを凝視するインプ達。


 ノアを囚えた事で気が大きくなったのだろう。手にした小さな三叉矛(トライデント)をこちらに向けながら、小悪魔インプたちはジリジリとこちらに距離を詰めてくる。


 インプの数は三十匹――――如何いかに討伐推奨レベル10の低級悪魔と言えど、徒党を組めばそれなりに厄介やっかいにはなるだろう。


 そこで切り札(ジョーカー)である俺の出番と言う訳だ。



「ノア、一つ()()だからな!」

「は、はぁ〜い……分かりました~」


「オリビアさん達は伏せていて! 当たると()()()()()()()()!」


「は、はい! 分かりました、ラムダ様!」


「ふぅ……光量子展開アイン射出式超電磁左腕部シュタイナー――――光量子拡散砲フォトン・シャワー!!」



 コレット、オリビア、ミリアリアの三名が姿勢を低くしたのを確認すると同時に、俺の左腕アインシュタイナーの手のひらから放たれる小さな光弾――――光量子拡散砲フォトン・シャワー


 拡散された低威力の弾丸による斉射攻撃。本来であれば殺傷能力の低さから“牽制用”にしか用途が無いが、インプの様な『小柄かつ低級の魔物モンスター』なら気絶スタンにまでは持っていける。


 回避困難な攻撃に一匹、また一匹と気絶して地面に落下していくインプ達。



「痛たたたたたたたたたっ!? ラムダさん、お尻が、お尻が痛いですーーーーっ!!」



 壁から突き出たお尻に光弾が連続命中して悶え苦しむノア。



「す、すごい! これがラムダ=エンシェント……!」



 時間にして僅か十秒――――ミリアリアの感嘆かんたんの声と共にモンスターハウスに巣食っていたインプ達は一匹残さず地面へと落下した。



「流石はラムダ様! えぇ、えぇ、左腕の物騒さは考えないとして……あれだけの数のインプを一掃するなんて、婚約者としてわたしも鼻が高いです♡」


「えっ……? オリビア様は【神官】になられたから、ラムダ様との婚約は破談になったとコレットはツヴァイ様から伺ったのですが……!」


「何か? それが……何か?」

「いえ……なんでもありませんです〜」


「さて! ノアを壁から引っ張り出して、インプから素材でも回収しようか!」



 静まり返ったモンスターハウス――――敵が残っていない事を右眼カレイドスコープで確認した俺はコレット達にインプから素材の回収を頼み、壁に埋められたノアの救出へと動く。



「……で? 今回のは『最高にヒロインっぽい』醜態しゅうたいかな、ノアさん?」


「えへへ~♡ 無様ぶざまでーす♡ 反省しますので助けてくださーい♡」


「……はぁ、反省してなさそうだな」



 壁に埋められたノアは引きった笑顔で俺に助けを乞うている。正直に言って面白そうだからもう少し放置しても良いかと考えてしまうが、こんな所でモタモタもしていられない。


 そう思って、ノアの周りの壁を破壊しようと試みた時だった。



固有ユニークスキル発動――――【爆ぜる閃光エクスプロデーレ・ミーティア】!」


「――――ッ!!」


「……え? ……えぇ?? なんですか、何が起きるんですかーーっ!?」



 ノアが埋められた壁の向こう聴こえる女の声、それと同時に壁から湧き出る様に広がっていく朱い【行動予測】の幻影ヴィジョン――――間違いない、()()()()()()()()()()()()



 とっさの判断で壁から距離を離した瞬間――――


「――――って、ぎゃあああーーーーっ!?」


 ――――向こう側から起きたであろう爆発でノア諸共壁は吹き飛び、モンスターハウス内は一瞬の内に土埃つちぼこりに被われてしまった。



「ノア!? くそっ……一体誰だ!?」



 土埃でかすむ視界、その中で俺の右眼カレイドスコープに映る青い生体反応が二つ。


「ゲホゲホ……駄目じゃないですか、いきなり壁を壊しちゃ! 向こうに人が居たらどうするんですか、アンジュさん?」


「ただの近道だ。リティアは口煩くちうるさいな」



 とがめる声と弁明する声が聴こえ、晴れた土埃と共に現れたのはアンジュと呼ばれた金髪紫眼の女とリティアと呼ばれた黒髪紺眼の少年だった。

 

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