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第32話:迷宮都市エルロル


「わ〜!! ここが迷宮都市エルロルですか?」

「すげぇ人だかり、サートゥスとは大違いだ!」



 迷宮都市エルロル――――世界七大迷宮の一つ、地下へと伸びる深淵の孔(アビス・ホール)【深淵迷宮インフェリス】を有する『迷宮の上に築かれた都市』だ。


 迷宮ダンジョンに眠る財宝トレジャーや内部に巣食う希少な魔物モンスターの素材を求めて、日夜多くの冒険者が攻略に挑む深淵アビスへの入口。当然、名高い迷宮ダンジョンを目当てとした冒険者が多く集い、エルロルの街並みは人混みでごった返している。



「ふむふむ……迷宮ダンジョン……私の時代では考えられない存在ですね。ラムダさん、迷宮ダンジョンとは一体なんなのでしょうか?」



 迷宮都市エルロル、第0階層――――冒険者たちの広場。先んじて宿屋を探す俺達は街の中央通り(メインストリート)を歩きながら、辺りを物色して丁度良さそうな宿屋や物資補給の為の道具屋を探していた。


 そんな折に、ノアから投げ掛けられた疑問。そも『迷宮ダンジョン』とは何かについて。


 思えば、古代文明人のノアにとっては、冒険者の存在も迷宮ダンジョンの存在も、馴染みの無いものなのであろう。


 だからか、ノアは俺に『教えて♡』と言わんばかりの媚び媚びの仕草で説明を促している。自分の愛嬌あいきょうを100%使ったあざといやり方に、俺は観念するしかなかった。



迷宮ダンジョン――――人類未踏の領域、或いは魔物モンスター等の人類にとって有害な生物が住み着いて荒廃した領域などを示す名称。多くの場合、古代文明……」


「十万年前のですか?」


「残念……千年ぐらい前の先史文明の。まぁ、古代文明の遺跡の名残がそのまま迷宮ダンジョンになっていたりして、冒険者たちはそこに巣食った魔物モンスターを討伐して素材を手に入れたり、古代文明の遺された遺産を見つけたりしているのさ」


「なるほど……ようは遺跡発掘といった所ですね?」

「なんか違うような……?」



 多少()つまんではいるが、俺はノアに迷宮ダンジョンの説明をする。


 千年前に栄えた国の残滓――――ここ迷宮都市エルロルにある【深淵迷宮インフェリス】もまた、そういった古代都市の名残だそうだ。



「因みに、俺ことラムダ=エンシェントの職業クラスゴミ漁り(スカベンジャー)】とは――――こう言った迷宮ダンジョン内部で死亡した冒険者の装備品や所持品を回収して売ったり、冒険者が回収しなかった微小な魔石や鉱石を集めて換金するのが主な生業なりわいなんだ」


「へぇ〜、すっっっごい地味」

「〜〜〜〜〜〜ッ!」


「わ〜……そんな鬼の形相ぎょうそうで睨まないで下さいよ〜ラムダさ~ん♡ ラムダさんなら〜どんな職業クラスでも素敵ですよ~♡」



 ともあれ、当面の目的は迷宮都市エルロルでの迷宮ダンジョン探索、及び【勇者】ミリアリアの行方の捜索だ。


 出来れば此処である程度、冒険の基盤を作れたら良いのだけれど。



「あの……すみません。冒険者ギルドの支部を探しているんだけど、ご存知ではありませんか?」


「んっ? はい、なんでしょうか?」



 そんな事を考えていたら後ろから声を掛けられた。


 振り向くと、そこには腰に片手剣ショートソードを携え、動きやすい軽装と大きなマフラーを口元に巻いた桃髪碧眼の少女が困った表情かおをして立っている。



「どうしたんですか、旅のお方? 困った事がございましたら、このわたし【神官】オリビア……の側で観光案内パンフレットを持っているコレットさんがお答えしますよ?」


「この神官、爽やかな笑顔でしれっとコレットに面倒ごとを押し付けたです〜!?」


「実はぼく、この街に初めて来て……ま、迷子になってしまって……」


「奇遇ですね〜。こちらのコレットさんも迷子なんですよ」


「コレットと皆さんは同じパーティなんですから、迷子なのはみんな一緒なのですが〜!?」



 どうやらマフラーの“ボクっ子口調”の少女は迷子の様子。しかし、俺たちもさっき迷宮都市エルロルに到着したばかりで街の構造を把握出来ていない。



「あ~、悪いんだけど、俺たちもさっき迷宮都市エルロルに来たばかりなんだ。良かったら一緒に行かない? 俺たちも後々、冒険者ギルドの支部に用があるからさ」


「はい、分かりました! それじゃあ、冒険者ギルドまで一緒に行きましょう! 良かった〜、いい人そう……」


「ラムダさんがまた女の子たらしこんでる……! うんうん、モテる男はつらいですねぇ……まっ、一番はこのノアちゃんですけど……!」


「――――チッ!」


「オリビアさんが汚物を見るような眼で私に舌打ちした!?」



 ノアから教えて貰ったことわざに『旅は道連れ世は情け』と言うものがある。


 一蓮托生いちれんたくしょう――――ここで会ったのも何かの縁、俺たちはマフラーの少女と行動を共にすることになった。



「そうそう、俺はラムダ、ラムダ=エンシェントだ」

「私はノア! よろしくね♡」


「コレットはコレット=エピファネイアと申します〜。こちらのラムダ様のメイドにございます〜」


「わたしはオリビア=パルフェグラッセと申します」


「えっと……僕はミリアリア……ミリアリア=リリーレッド! よろしくお願いしまーす!」


「「「「――ハッ!?」」」」



 その少女こそが【勇者】ミリアリア=リリーレッドだとも気付かずに。


 迷宮都市エルロル――――欲望の渦巻く都市。新たな冒険、うごめく悪意、【勇者】ミリアリア=リリーレッド争奪戦。通称『勇者事変カラミティ・トリガー』の幕開け。

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


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