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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第七章:獣国の公現祭《エピファネイア》

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幕間:闇の救世主、胎動


ソラを裂くように走った黄金の閃光……随分と禍々しい魔力じゃのう……」



 ―――――獣国ベスティア首都【ヴィル・フォルテス】、王城【アングルボザ】にて。


 ラムダ=エンシェントの持つ魔剣【ラグナロク】が夜のソラを裂き、ネビュラ=リンドヴルムに引導を渡した頃、魔王グラトニスは王城の展望台から夜空を翔ける黄金の軌跡を見上げていた。



「フンッ……リンドヴルムめ、儂に下剋上を仕掛けようと目論んで、“アーティファクトの騎士”に阻まれおったな。愚か者め……」



 “狼王”や臣下しんかたちが出払ってもぬけの殻となった王城。


 其処を我が物顔で闊歩かっぽしたであろうグラトニスは、左手に握った赤い果実を豪快にかじりながら失態を演じた部下の愚痴をこぼしていた。



「ガンドルフ=ヴォルクワーゲン、ルリ=ヴァナルガンド、ネビュラ=リンドヴルム……我が忠実な配下共よ、よく戦った……! お陰で……この獣国ベスティアに眠っていたアーティファクトを回収する事に成功できた……お前たちはゆっくりと休むといい……」



 だが、それでものが“信念”を持ってグランティアーゼ王国と戦い、散っていった部下たちにグラトニスは哀悼の意を捧げる。


 グラトニスの野望に賛同して獣国ベスティアの王位を退いたかつての獣王ガンドルフ、グラトニスの理想に共感して付いてきたルリ、アケディアスの副官としてくすぶっていたリンドヴルム、“暴食の魔王”の威光の元に集った『強者』たち。


 彼等が如何いかな思惑で動いていたにせよ、その活躍のお陰で目的を果たせた事に幼き魔帝は深い謝辞しゃじの言葉を述べる。自身の目指す『理想郷ユートピア』の為に戦った感謝を、自らの野望の為に散っていった謝罪を胸に秘めながら。


 左手に握った果実を芯ごと平らげて、魔王は右手に握った朱く発光する宝玉を月光にかざす。



「アーティファクト【第六永久機関(ゼータ・ドライヴ)】……内部で無限に膨張を続けエネルギーを精製する、ノア=ラストアークが造った“ケモノの心臓”か……! クフフフ……確かに、斯様かような恐ろしい一品、獣国の獣共には使えんはなぁ……」



 アーティファクト【第六永久機関(ゼータ・ドライヴ)】――――獣国ベスティアに王宮に隠されていたもう一つの国宝。


 無限のエネルギーを供給する“ケモノの心臓”とおそれられた宝玉。それをグラトニスは手にして、満足そうに笑みを浮かべる。



「聴こえておるか、ルシファー? 儂じゃ、ルクスリア=グラトニスじゃ!」

《――――通信良好。こちら“機械天使ティタノマキア”ルシファー、聴こえていますよ……我がマスター……》



 そんなご満悦な魔王の呼び掛けに応じたのは堕天の使徒。


 グラトニスの耳に装着された黒い機器から、何処かに居るであろう天使の声が雑音ノイズに乱されながらもハッキリと魔王の元へと届けられた。



「例のアーティファクトを奪取した。これで……『メサイア』は復活するのじゃな?」

肯定イエス――――【第六永久機関(ゼータ・ドライヴ)】があれば『メサイア』は再び目覚め、貴女の“理想”は遂に結実けつじつするでしょう……!》


「そうか……クフフ……クハーッハッハッハ!! 遂に儂の野望が……女神システムを掌握して世界を統一すると言う我が願いが成就する時が来たか!!」

肯定イエス――――これで残す“鍵”は『ノア=ラストアーク』と、何処いずこかに眠るアーティファクト【ラグナロク】を回収するのみ……!》


「女神アーカーシャが眠る楽園『セクターΛ(ラムダ)』へのきざはしを翔ける方舟【ラストアーク】……女神を討つ大逆たいぎゃくの魔剣【ラグナロク】……その二つを喰らい、儂は世界を獲る!!」

《その険しきみちに祝福を! 魔王グラトニスのく地獄の果てに血みどろの喝采を!!》



 魔王グラトニスは“ケモノの心臓”を手にわらい、機械天使は少女の征く茨の道に祝福を贈る。


 “暴食の魔王”と恐れられ、強大な魔族たちを統べ、世界を相手取り挙兵した『愛玩の化身』――――彼女の野望は遂に大きな一歩を踏み始めようとしていた。



「儂は魔王城に戻り『メサイア』に【第六永久機関(ゼータ・ドライヴ)】を組み込む。ルシファーよ、戦局を報告せよ」

《魔王軍、全勢力の三割が喪失。グランティアーゼ王国軍、全勢力の七割が損失……ただし、ダモクレス騎士団は未だに健在です》


「ヴィンセントが雇った有象無象どもは早々に退場したか……まっ、想定の範囲内じゃな……! だが……流石は【王の剣】ども、グランティアーゼが誇る英傑たち……一筋縄ではいかんようじゃな……!」

《けど、当機わたしとディアスの二人で【不毛地帯テラ・ステリリス】の端まで追い込んだ……! あと一息でグランティアーゼ王国へと雪崩込める……!!》


「なら……早速、新しい玩具で蹂躙してやるとするか! ルシファーよ、もう遠慮は要らん、グランティアーゼを叩き潰せ……この世界を統べる王が誰か教えてやるのじゃ!!」

《命令受諾――――“機械天使ティタノマキナ”ルシファー、これよりダモクレス騎士団を壊滅します!》



 復讐、冒涜、凌辱、破壊、蹂躙――――魔王グラトニスの忠実なる配下は戦争と言う名の舞台から姿を消して、あるいは“アーティファクトの騎士”に鞍替えして、残す“駒”は【堕天】と【怠惰】のみ。


 だが、それでも魔王グラトニスは自身の華やかな勝利を確信している。


 魔王の指令オーダーに従って、ダモクレス騎士団壊滅へと動き出した堕天使。彼女が宣言通りに騎士団の一切を鏖殺おうさつすると、グラトニスは信じているからだ。



「クフフフ……感謝するぞ、ラムダ=エンシェントよ……! おぬしのお陰で、こうして労せず【第六永久機関(ゼータ・ドライヴ)】を手に入れることが出来た……! 褒美にその“憤怒の魔王”はくれてやろう……」



 そして、機械天使との会話は終わり、魔王は黄金の光と共に首都【ヴィル・フォルテス】を駆け抜けた一陣の風を全身に感じながら、遥か遠くに居るであろう“アーティファクトの騎士”に視線を向ける。



「お主を縛る騎士の矜持、その一切を儂が絶ち切って、お主を解放してやろう……! そしてその時、貴様は我が掌中に落ちるのだ……クフフ、クハハハハハ!!」



 “暴食の魔王”が目の前に出された晩餐を残すことは無い。ただ目の前の全てをたいらげて胃袋に収めるだけだ。


 故に、彼女は『ラムダ=エンシェント』と言う食事を諦めることは絶対にしない。必ずや喰らうと意気込むだけである。



「我が親愛なる機械天使、怠惰を極めたふるき魔界の支配者、その二人を乗り越えてみせよ……! さすれば、儂はお主を片腕として迎え入れてやろう……! 愉しみにしているぞ……クハハハハハ!!」



 獣王ベスティアでの戦いは終わりを迎え、魔王軍は三名の幹部を失うと言う憂き目にあった。


 だが、その裏で暗躍した魔王によって獣国の秘宝は奪われて、ダモクレス騎士団は人知れず窮地に陥ることとなる。


 ――――“闇の救世主”の目覚めと共に。



「夜風に当たったらお腹が痛くなってきたのじゃ……! ノア=ラストアークの“毒”がまだ残っておるのか……!? ええい……魔王城に帰る前に毒を排出しなければ……ちょっとお手洗いを借りるのじゃーーッ!!」

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