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第133話:祝いの席の悲劇


「それでは……“星騎士セイクリッド”となられました我らがラムダ卿の【王の剣】叙任と第十一師団の発足を祝しまして〜……乾杯ですわーーーーッ!!」

「「「乾杯ーーーーッ!!」」」



 ――――ラムダ邸2階大広間、ラムダ=エンシェントの叙任式アコレードの日の夜。シャルロットの乾杯の音頭と共に集まった人々たちによる盛大なパーティーが執り行われた。


 集ったのは【ベルヴェルク】の仲間たち、王立ダモクレス騎士団の縁故えんこある面々――――俺の門出を祝ってくれた人々。



「さあさあ、今日はめでたい記念日! シャルロット様の従者たちにもお手伝い頂きましたのでお料理はたくさんご用意しましたよー♪」

「ジュースもお酒もいっぱい……いっぱい召し上がってください……!」

「コレットとシリカ、シャルロットの護衛の皆さんも遠慮なく料理をつまんでくださいねー!」

「ありがとうございます、ラムダ様〜♪」


 コレットとシリカ、シャルロットの従者たちがせっせと料理や飲み物を運ぶ中で、愉快な宴は続いていく。



「ラムダ卿、貴殿のここまでの旅をぜひ私に聴かせて欲しい!」

「うちも興味あるで〜♪ さあ、“アーティファクトの騎士”の軌跡、た~っぷり語って貰うで〜!」

「ちょっとオカン、酒臭いで!? もう酔っぱらっとんの!?」

「なんや、ネオン? 今日は無礼講やん、なぁ〜ラムダ卿〜?」

「すみません、ラムダ団長! 私の母がご迷惑を……!」

「あはは……え~っと、じゃあ私が『神授の儀』を受けた所から……」


 オクタビアス卿やエトセトラ卿、ネオンに囲まれてこれまでの旅を語る事になった俺。



「ツヴァイ! どっちが呑めるか勝負といこうじゃないか!」

「望むところよ、アンジュ! 負けた方が次、奢りね!」

「――――上等!! おい、リリエット=ルージュ、お前も混ざれ!!」

うちに勝負を挑むとはいい度胸ね、アンジュ……! ツヴァイもろともゲロまみれにしてあげるわ!」

「「「コレット、今すぐ一番強い酒を持ってきなさい!!」」」

「ひぃ~……地獄絵図になりそうですぅ~……」


 テーブルを囲んで呑み勝負を始めたツヴァイ姉さん、アンジュ、リリィの3名……いや、普通に迷惑だからやめて欲しい。



「あら〜……エリスちゃん、久しぶりね〜……! あの大火事で生きていたなんて、お姉さん嬉しいわ〜♡」

「…………ヒッ!? ぎ、虐殺聖女……トリニティ……!? な、なぜあなたが……!?」

「うふふ……秘密♡ それと、300年前の事、ラムダ卿に喋ったら素っ首、斬り落としますね♡」

「…………はいぃ…………」


「何だ? エリスお姉ちゃんとトトリお姉さんは知り合いか?」

「えぇ、昔に少し……♪ まぁまぁ、そんな事は気にせずアウラ様もジュースをどうぞ♡」

「おお、ありがとうなのだ!」

「エルフの里でも稀代の天才と語り継がれるアウラ様とこうしてご一緒できるなんて光栄です♪」

「なはははは! あたしってば有名人なのだ♪」


 怯えた表情かおでトリニティ卿を見つめるエリスと、楽しげに談笑するトリニティ卿とアウラのエルフ組……トリニティの表情が心なしか怖い気がする。



「へー……あなたが【勇者】ミリアリア=リリーレッド? 何というか……中途半端に“女”ね……」

「え~っと……あの……ヘキサグラムさん……僕は……その……」

「あなた、ラムダ卿に“勇者扱い”されたいの? それとも“女扱い”されたいの? はっきりしないからハーレムの輪から漏れてんのよ!」

「うぅ……ごもっともで……///」

「あたしの愛用の化粧品店教えあげるから、もっと“女”を磨きなさい! 良いわね!?」

「は、はい……!」


 ジュース片手にルチアは苛つきながら、ミリアリアにいらぬ世話を焼いている模様。もしかして、ルチアは意外と面倒見が良いのだろうか……口は恐ろしく悪いが。



「あら、シャルロットさん……具合は如何ですか? 暗殺者に拉致監禁されたと聞きましたが?」

「お気遣いなく、レティシア様……見ての通りピンピンしていますわ! まったく……暗殺者の独断とは言え、まさかお父様の愚行に巻き込まれるなんて思ってもいませんでしたわ!」


「その件に関してはエシャロット伯爵も『まさか娘に危害が及ぶとは、私が浅はかでした』と反省の弁を述べ、暗殺者たちと第十一師団の戦闘でできた破損の弁償をしていますので、多目にとは言いませんが……多少、()()は加えてあげてね?」

「まぁ、お父様が反省したお陰で爵位剥奪はなんとか免除されてわたくしも没落を回避できたので、これ以上はどやかく言いませんが……まぁ、罰として、ラムダ卿に差し上げたこちらの邸宅はきっちりと利権から接収させていただきましたが!」

「あらあら……」


 レティシアとシャルロットの上流階級グループは小さなテーブルを囲んで優雅におしゃべり中。シャルロットも大きな怪我も無さそうだしようやく安心できた。



「うぅ~……人が多くて落ち着かない……」

「え、えへへ……わ、私も……! や、やっぱり……暗くてジメジメした場所の方が……お、落ち着くよね? お、お母様も……暗い場所の方が……す、好きだったから……!」

「い、いえ……わたしは別に暗所あんしょが好きな訳では……!」

「えっ……ち、違うの……?」

「もしかしてわたし……同類と思われている……!?」


 部屋の隅っこでジュースに口を付けながら雑多を見つめるラナとデスサイズ卿……暗いな、雰囲気が陰気すぎる。



「ねぇねぇ、リヴぴょん……団長ちゃんが勲章貰ったら、あーしらの給料って上がんの?」

「上がりませんが? そもそも、王立騎士団の給金は高い方ですよ? だからラムダ団長の入団審査も敷居が高かったですし……」

「マジ……!? 給料上がったら凸盛りパフェ毎日食べれると思ったのに〜!」


「凸盛りパフェ……? もしや三番地にある菓子店のパフェの事ですか? あそこ、ラムダ団長の叙任にかこつけて新作パフェを出すらしいですよ?」

「デジマ!? リヴぴょん、もしかしてイケるくち?」

「当然――――情報通ですので! 今度、一緒に行きますか、キャレットさん?」

「行くし行くしー♪ やっべ、パフェ友とか最高サイコーじゃね?」


 リヴとキャレットが女子トークで盛り上がっている。これはリヴ女史が意外と世俗的だったのが交友のきっかけか?


 何れにせよ、団員同士で仲が良いのは団長としても喜ばしい……ふたりの会話の内容はよく分からなかったが。



「いや~……第十一師団は若い女子おなごが多くて羨ましいの〜。儂もあと50歳若かったらのぅ……」

「あら〜? レーゼおじ様、まだまだお若いわよ~♡」

本当ホントかの、シエラ殿!? 儂、年甲斐も無くハッスルしても良いのかの!?」


「えぇ、もちろん♡ 代わりに〜……おじ様の秘蔵の禁書が観たいな〜♡」

「ええのう、ええのう♡ 儂の図書館に来てくれたら幾らでも観せてあげるわい♡」

「サンクチュアリ卿……色仕掛けにすっかり骨抜きにされているにゃ~……」


 ソファーで寄り添いながらサンクチュアリ卿を接待するシエラと、その横で呆れ顔をするメインクーン卿――――あの光景がノアの言っていた『キャバクラ』なる大人の遊び場か。サンクチュアリ卿がすっかりメロメロになっている。



「ヘイヘーイ♪ DJノアちゃんだよー♪ みんなー、ノッてるかーい? イェ~イ♪」

「ノア様ーーッ♪ DJ姿もさまになってますよーーーーッ♪」

「良いねー、ノアちゃーーん!! もっと会場をアゲていこーーーーッ♪ イェーーイ♪」

「ジブリール、アインスお義兄さん、ありがとーーーーッ♪」

「僕たちの文化には存在しない雰囲気ムードを盛り上げる曲調……素晴らしい!! 是非、我が第七師団にもこの未知の音楽を取り入れねば……!!」


 大広間に謎の機材を持ち込んで、その機材の上で謎の円盤ディスクを指で回して部屋中に楽しげな音楽を流すサングラスとヘッドホンを掛けたダルダルのシャツ姿のノアと、ノアの周りでノリノリで踊り狂うアインス兄さんとジブリール、ノアの奏でる音楽に耳を澄ますセブンスコード卿…………何あれ??



「ハハハハハーーッ! 良いぞー、騒げ騒げ!!」

「あはははは! ええでええでーーーーッ!!」

「おかんもオクタビアス卿もすっかり酔いが回ってるわ……」

「ラムダ卿も呑め呑め! もう『神授の儀』は終えて酒は呑める年齢だろ?」

「い、いえ、オクタビアス卿……私は飲酒は好みでは無いので……」


「ぬぅ……仕方あるまい……! 嫌がる者に無理に呑ませるわけにはいかんな……!」

「ならウチと呑もや、オクタビアスの旦那〜! 今日はレティシア様の奢りや! 呑まな損やでーー♪」

「だな、エトセトラ卿! よ~し……呑むぞーーーーッ!!」

「…………駄目な大人だ……」



 夜通しの宴は続いていく。



「酒臭っ!? 何だこの体たらくは!?」

「あ~……フレイムヘイズ卿、遅いですよ〜……」

「アインス卿……なんだその酔っ払った情けない表情かおは?」

「酔った〜〜♡」

「はぁ……弟の門出だからと羽目を外し過ぎだ、この馬鹿者!」



 酔いが回り酩酊状態に陥った駄目な大人たち。



「うっぷ……! いい加減に降参しろ、ツヴァイ……!!」

「うぇぇ……! 嫌よ……あんた等が先に降参しなさい……!」

「ひっく……! ツヴァイもアンジュも人間の分際で生意気〜〜!」

「シリカさん……エチケット袋の準備を……」

「了解……! 3バカ女の後始末……する……」



 徐々に倒れていく来賓たち。



「あはははははは! 酔い潰れた愚か者がいっぱいいるのだーーーーッ♪」

「う~ん……むにゃむにゃ……ストルマリアお姉様……Zzz」

「…………ホッ! やっとトリニティが眠ってくれた〜(安堵)」



 大広間に積み上がっていく酔っ払いたち。



「うぅぅ……わたくしのお見合い相手は高慢ちきな貴族ばかり……! なぜ、わたくしとラムダ卿は血縁者なのですわ……!!」

「あの……シャルロットさん? なぜ飲酒もせずに酔っ払った感じになっているの……?」

「場酔いですわ……! う~……わたくしもラムダ卿のような殿方との出会いが欲しいですわ〜〜!」



 ラムダ=エンシェントの祝いの席で起こった悲劇。



「ラムダ様……あの……この状況……コレットたちはどうすれば良いのですか……?」

「…………取り敢えず、ありったけの毛布を持って来て……」



 大量のへべれけの面倒を見る羽目になった俺の嘆きは続く…………どうしてこうなった?



「とぅ、とぅ、とぅー♪ 夜は続くよ♪ 酔いは回るよ♪ 宵は悲惨よ♪ 家主嘆くよ♪ ずんちゃ、ずんちゃ、ずんちゃっちゃ♪」

「…………ノアのラップが無性にムカつく!」

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