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第14話:無双


「――――っ、ラムダさん、後ろ!!」


「貴っ様ぁーーーーッ! よくも……よくも……よくも俺の弟を斬り殺したなぁーーーーッ!!」


 盾持ちゴブリンを両断した瞬間に同時に響くノアの叫びとゴブリンの咆哮ほうこう


 俺が気を取られたのはノアの方、彼女は俺の後ろを指差して懸命けんめいに危機を訴えている。そして、俺の背後にいるのは大きく棍棒メイスを振りかぶって狂乱きょうらんする大型のゴブリン。



「弟の仇ィーーーーッ!!」



 ノアの警告が聴こえた時には既に手遅れ、大型のゴブリンの一際ひときわ大きな絶叫ぜっきょうと共に振り落とされる鋼鉄の棍棒メイス


 本来であれば、昨日までの俺であれば、その攻撃でいともたやすく押し潰されて圧死あっししていただろう。だが、今は違う。


「――――ッ、な、何ィ!?」


「残念……()()()()()その攻撃……!」


 俺の視界を染める朱い残像ヴィジョン。スキル【行動予測】でゴブリンの攻撃を()()()()()()()()俺は、ゴブリンに背中を向けたまま左腕アインシュタイナー棍棒メイスを受け止める。



「う、動かねぇ……!? に、人間風情が……そ、それもこんな子供チビが俺の怪力を上回っているなんて……!?」


子供チビで悪かったな……光量子輻射砲フォトン・ウェイブ!!」



 今さら負け惜しみを言った所でもう手遅れだ。俺は左腕アインシュタイナーから再び光量子フォトンの照射攻撃を行い、鋼鉄の棍棒メイスごとゴブリンの頭部を粉砕する。



「その弓矢も()()()()()……弾丸バレット装填そうてん……!」



 そして、俺はそのまま倒れた大型ゴブリンの後ろに隠れて攻撃の機をうかがっていた弓持ちゴブリンに視線を合わせて、突き出した左腕アインシュタイナーてのひらに黒い球体を発生させる。


 超電磁によって周囲にある微量びりょう砂鉄さてつを集束させ、圧縮し造り上げた黒鉄くろがねの弾丸。



「死ねぇーーーーッ!」

超電磁砲レールガン、発射!」



 先手を打ち、必殺の弓矢を放ったのはゴブリン。


 だが、超磁力ちょうじりょくの反発を利用して俺が勢いよく撃ち出した超電磁砲レールガンが、放たれた弓矢を粉砕し、“ズドンッ!!”と大きな音を立てて弓持ちゴブリンの心臓を射抜く。



「が……がぁ……ば、けも……のぉ……!」



 自分の身体に空いた風穴かざあなを見つめながら、小さく弱々しい断末魔を上げて息絶えるゴブリン。これで四匹目、残すはノアの近くにいる斥候スカウトゴブリンのみ。



「オイ、人間! いや、化け物!! この女の命が惜しかったら大人しく武器を捨てて降参しろッ!!」



 しかし、最後に残ったゴブリンはまだ諦めず、抵抗を続ける…………って言うか、わざわざ“化け物”って言い直すなよ。



「ごめんね〜ラムダさん。私、人質になっちゃいました〜♡」



 俺が振り返った時、最後に残ったゴブリンは近くにいたノアの背中に組み付いて彼女の首に隠し持っていたナイフを突き付けていた。人質――――ゴブリンはノアを盾にして、俺に投降するように呼び掛けている。



「なにしてんのさ、ノア〜?」

「えへへっ、油断しちゃった〜」



 俺の呆れた表情かおに『ごめんね♡』と舌をペロッと出しながら謝罪するノア。



「えっ……? なに、なんで人質になってんのにこの小娘こんな余裕そうなの……??」



 俺たちのやり取りを見て困惑するゴブリン。


 最後の手段だった筈なのに、あまりの手応えの無さに戸惑っているんだろう。まぁ、人質にした相手ノアが悪いよ。



「あっ……でもでも〜、人質になって主人公の足を引っ張るのって……とってもヒロインらしくありませんか? 私……いま最高にヒロインしてませんか?」


「馬鹿言ってんなら助けないよ?」


「あぁ、嘘です嘘ですごめんなさい。ラムダ様〜、あわれな人質のノアを助けて〜♡」


 喉元のどもとにナイフを突き立てられているのに、笑顔で、余裕そうに、意気揚々と俺に助けを懇願こんがんするノア。


 ここまで『くさい演技』をされたら俺も少々、助けてあげようって気が失せてしまう。


「はぁ〜……、どうせ()()()()()()()()()んだろ? 下手な芝居するなら助けないからな」


「ガ~ン!? か弱い乙女ムーヴはヒロインの特権って、乙女ゲームで言ってたのに〜! ……もう、こうなっては仕方ありません……!」


 やっぱり白々しい演技だった。


 俺の『自力で何とかしろ宣言』に観念したのか、ノアは心底残念そうな表情かおをしながら、ゆっくりと右手の人差し指を背後に組み付いたゴブリンの額に押し当てる。



「オイ、何をしている小娘!? 変な真似するなら今すぐ喉元掻き切って――――」


「残念♡ 指を動かした時点で搔き切らなかったあなたの負けです♡ スキル発動――――【麻痺付与エンチャント・パラライズ】」



 ゴブリンの脅迫に満面の笑顔で答えるノア。


 そして、次の瞬間、ノアの人差し指から走った黄色い電撃がゴブリンの全身を駆け巡った。



「アギャギャギャギャーーーーッ!?」


「全身の筋繊維きんせんいと神経をビリビリにしちゃう麻痺攻撃で〜す♪ おやすみなさい……ゴブリンさん♪」



 電撃照射から10秒後、全身を激しく痙攣けいれんさせ、白目を剥いたまま失神したゴブリンはだらしなく力尽きて、ノアの足元へと落ちていった。



「スキル使えたんだ?」


「ふっふっふ……まぁ、アーティファクトで誤魔化してるだけですけどね♪」



 戦闘開始から僅か2分――――俺とノアの最初の討伐依頼(クエスト)は、50匹いたゴブリンの内、49匹が死亡、1匹が失神による戦闘不能と言う形で幕を下ろしたのだった。

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