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第122話:団員集め② 〜集いし騎士たち〜


「俺マジでツエーから、王立騎士団とかマジ余裕だし~! さっさと採用しろや、ヤリチン小僧!」

「態度が悪い……不採用!」



「あの……僕、まだ12歳なんですけど……入団できますか?」

「もう少し大きくなったらまた来てね?」



「あ、あの……オリビアさん、おれと付き合ってください!」

「えっ……ナンパ? 引くわ……」

「貴様……俺の女を寝取るつもりか!?」

「あわわわ……!? ラムダさんが抜刀した!? そ、そこの人、急いで逃げてくださいーーッ!!」



「ラムダ様〜♡ 私をあなたの愛人にしてくださ〜い♡」

「ラムダ様……胸の谷間をチラチラ見ないでください……怒りますよ?」

「…………別に恋人を募集している訳じゃ無いんだ……帰ってください……」

「――――チッ! 辺境伯のご子息の愛人になればお小遣いいっぱい貰えると思ったのに……!」



ラムダが心配だから私も第十一師団に入る!」

「不採用」

「即決で不採用にされた!?」

「はーい♡ ツヴァイ卿は第二師団の寄宿舎に帰りましょうね〜♡ ラムダ卿、ごめんあそばせ〜♡」

「はーなーしーてー! ツェーネル()()の意地悪ーーーーッ!!」



 ――――迷宮都市エルロルで知り合った3人の冒険者、アンジュ=バーンライト、エリス=コートネル、シエラ=プルガトリウムを騎士団の団員に加えてしばらくして、ツヴァイ姉さんとアンジュのいさかいを何とか鎮めた俺たちは再び騎士団員の選抜を行っていた。



「何人か不採用にしていますね、ラムダさん?」

「気持ちは嬉しいけど冒険者ランクも低くて個性的な固有ユニークスキルも無いのはなぁ……いたずらに採用してもしもの事があったらその人たちに申し訳ないよ……」

「まぁ、不採用にされた人たちもラムダ様の名声目当てだったり、騎士団の給金目当ての方が多そうでしたし……王立騎士団の威厳を損なう可能性のある方も採用はご法度ですし……」

「『弟が心配だから私も入る!』とか抜かしてきたお馬鹿な姉は即刻不採用にして、ツェーネルさんに引き取って貰ったけど……」



 採用は難航気味――――冒険者になって間もない者(※人のこと言えないけど……)、俺の部下になった“箔”を付けたいだけの下心の見え透いた者、単にお金が欲しいだけの荒くれ者…………各地から募ったとは言え中々採用に到れる人材には出会えなかった。


 欲を言えば前回戦った魔王軍最高幹部であるレイズの配下と渡り合える、もしくは激しい戦闘の支援を行える者が好ましい。


 あまり選り好みをしたくはないが、激しい戦闘が予測される以上仕方が無い。



「ではでは〜次の方、どうぞ〜!」

「やっとあーしの番が来たしー! 今行くしー!」

「何、この軽いノリ……?」



 そんな折に現れた次の団員候補――――日焼けして小麦色になった肌、あり得ないほど派手にデコレーションされた薄めの色調の金髪のポニーテール、淡いみどり色の瞳、おしゃれに着飾られた白い鎧、ややダルダルに着崩された黒いインナー、自身の身長を超える大きな双頭の槍。


 パッと見た印象は何と言うか気だるそうな女性。



「え~っと……あなたは……」

「ちぃーっす♪ あーしの名前はキャレット=テスラノーツ♪ 気軽にキャレットって言って欲しーし♪」

「これもしかして……『ギャル』ですよギャル! ギャル騎士が来ましたよラムダさん!!」

「…………ギャルって何??」

「――――ハッ!? まさか……『ギャル』って概念が……存在していない……!?」



 彼女の名はキャレット=テスラノーツ――――ノア曰く、『ギャル』という存在らしい。


 何かノアがショックを受けたように青ざめているが俺には関係ない話なので、放って置くことにしよう。



「あーしの職業クラスは【槍騎兵ランサー】! 元は流れの傭兵だったんだけど……団長ちゃんの噂を聞きつけて来たし! 採用してくれたらうれしーし!」

「団長ちゃん……」

「因みに冒険者ランクは〜“S級”だったかな……? 興味ないからあんま分かんないや〜」

「適当ですね♡ でも強そうですね、ラムダ様?」

「確かに……!」

「ちなめっちゃ疾い馬ちんも居るから前衛での撹乱とか得意だし!」

「採用しましょう、ラムダさん! キャレットさんはこの世界にギャルの風を取り戻す重要人物ですよ!」

「ギャルの風……??」



 なんだがよく分からないがキャレットの機動力は戦力になるだろう。


 キャレット=テスラノーツ――――採用。



「うっし! これでお給金で王都の(デコ)盛りパフェいつでも食いに行けるし~♪」

「凸盛り……? オリビア〜、キャレットが何言ってるか俺分からないよ〜(泣)」

「なんでわたしに泣きつくんですか……?」



 〜しばらくして〜



「次の方ーどうぞー!」

「は……はい!!」

「んっ……? 修道女シスター??」



 次に部屋に入ってきたのは黒い修道服を来たピンク色の髪で右眼を隠した青い瞳の小柄な少女だった。


 少し緊張しているのかガチガチに震えながら、俺の目の前の椅子に座った少女は俯いたまま黙っている。



「??? あの……名前は……?」

「…………シスター=ラナ……です…………下の名前はありません……」

「シスター=ラナね……」



 シスター=ラナ――――と名乗った修道女の少女。


 下の名前が無いというのは恐らくは名字ファミリーネームが無い、つまり身寄りのない孤児という意味だ。


 きっと何処かの街で捨てられていて教会に拾われたのだろう。



「それで……シスター=ラナはどうして第十一師団に入団の希望を……?」

「――――復讐」

「…………い゛っ!? どうしようオリビア〜(泣) この子、重いよ〜(泣)」

「お、落ち着いてくださいラムダ様!? なんでちょっと及び腰なんですか!?」

「わたしを育ててくれた聖女様を殺して……わたしの身体に『呪い』を刻んだ“魔女”に復讐する……!」

「その右眼……魔女の烙印か!?」



 復讐――――それがシスター=ラナの目的。伸ばした前髪で隠された彼女の右眼にはある『呪い』が刻まれていた。


 搔き上げられた前髪の下の右眼には、朱くにじんだ瞳に刻まれた妖しく輝く烙印。


 俺たちの世界では『魔女の烙印』と呼ばれる上級の“呪法”の一種……その刻印を受けた者は“魔女の生贄”とされ、女神の加護から見捨てられた捨て子の証とされる物。



「魔女の烙印?? 何ですか、それ?」

「路地裏に捨てられていたわたしは聖女様に拾われた……けど、ある日……聖女様も、他の孤児たちも……魔女にみんな殺された……」

「酷い……敬虔けいけんな信徒を手に掛けるなんて……」

「わたしの居た教会を襲ってみんなを殺した魔女はこう言ったわ……『私に復讐したければ、いずれ現れる“遺物を操りし騎士”の仲間になりなさい』って……!」

「遺物……アーティファクトの事か……」


「わたしは……何もかも奪われた……! 残っているのはこの眼に刻まれた『呪い』と燃えるような復讐心だけ……! お願いします、わたしをあなたの騎士団に入れてください!! 戦闘でも、後方支援でも、何でもします……だから……わたしに、居場所をください……!」

「…………シスター=ラナ……」



 目に大粒の涙を溜めて必死に懇願するラナ。本来であれば『復讐』を動機にしている以上、断った上でしっかりと説得してあげたいが……こと、“魔女の烙印”が絡んでいるなら以上、それは難しい。


 曰く、“魔女の烙印”は呪われた者の性質を暗黒面ダーク・サイドに変貌させる強い効果を持っているらしい。彼女の右眼に烙印がある以上、シスター=ラナは“復讐”を忘れ去ることは出来ない。


 解放される方法は2つ――――復讐を果たし烙印から解き放たれるか、狂気に呑み込まれて破滅するかだ。



「シスター=ラナ……得意な魔法や得手とするスキルは?」

「水属性の魔法と……それを使った癒やしの術が使えます……! 武器は……その……チャクラム型のヨーヨーを……!」

「なんでヨーヨー!? ラムダさん、ヨーヨーは武器では無いですよ!?」

「ヨーヨーに水を纏わせて……カッターにして敵を切り刻む……」

「結構、効果的ですねラムダさん!」

「手のひら返すの早いな……」



 ある程度支援能力に長け、戦闘能力も最低限あるか……なら、下手に一人にして復讐で破滅させるよりかは組織に入れて目の届く範囲に居させたほうが安全だろう。



「分かった! 君の入団を歓迎するよ、シスター=ラナ! ただし、復讐に関してはこちらと情報を共有して、慎重に事を運んでもらう……良いね?」

「――――ハイ! ありがとうございます、ラムダ様!」


「それと最後に……君に烙印を刻んだ魔女の名は?」

「…………インヴィディア!」

「インヴィディア……? 聞かない名だな……?」

「古代文明の言語、ラテン語で“嫉妬”……恐らくは嫉妬の魔王ですよ、ラムダさん……!」

「何だと!?」



 シスター=ラナを害した者の名はインヴィディア――――ノア曰く、“嫉妬”の名を冠した魔王たる人物。


 いずれ何処かで敵対するであろう相手か。


 なら、シスター=ラナの目的も遠からず達成出来そうだな。その先に、彼女の安らぎがあれば良いのだが。



「あの……精一杯お仕事しますので、よろしくお願い致します……ラムダ様♪」



 屈託の無い笑顔……きっとそれが彼女の本来の性格なのだろう。


 それを取り戻すのも、騎士としての役目だ。


 恩義、復讐、あるいはただ単に運命の気紛れで巡り合っただけか……着々と集まりつつある団員たちに想いを馳せながら、俺は引き続き団員集めに奔走していく。


 はてさて……次に此処を訪ねるのは一体誰か?

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


ご覧いただきありがとうございます。


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