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第121話:団員集め① 〜再会の冒険者たち〜


「――――と、言う訳で! 第十一師団の団員募集の面接会場にようこそーーッ!! 本日の司会進行を努めさせて頂きますはラムダ=エンシェント卿の頭脳ブレインことノアちゃんと〜」

「毒舌評論家のオリビア=パルフェグラッセでお送りいたします〜♡」

「自分で『毒舌評論家』って名乗るんだ……」



 オクタビアス卿との決闘から数日後、王都市民街第十一区画、第十一師団の寄宿舎にて。早朝から此処で俺は第十一師団の新しい団員を見繕う為の選抜会を執り行っていた。


 各地で名を挙げた“アーティファクトの騎士”と共に戦おう――――と言う何とも微妙なキャッチフレーズの元、行われた公募に集まったのはそれなりの人数。


 だが、こちらとしても戦力にならず無駄死にする人を出したくは無いのである程度採用不採用の基準は線引しなければならない。さて、一体どんな人たちが来るのやら。



「では最初の方……どうぞ〜!」

「失礼する!」



 緊張の中、ノアに呼ばれて寄宿舎の応接室の扉を開いたのは金髪紫眼の女性――――んっ、あの顔は。



「“SS級冒険者”アンジュ=バーンライト……私の素性は言わずとも知っているな、ラムダ=エンシェントよ?」

「――――アンジュさん!?」



 アンジュ=バーンライト――――迷宮都市エルロルで巻き起こった『勇者事変カラミティ・トリガー』で出会ったギルドの冒険者。


 固有ユニークスキル【爆ぜる閃光エクスプロデーレ・ミーティア】による爆撃攻撃を得意とする女戦士で、迷宮都市エルロルでは催眠装置【エクスギアス】に操られて俺たちと敵対した被害者だった女性だ。



「どうして此処に……?」

「言っただろう、次に会った時は君の力になると! 君が【王の剣】に選ばれたと聴いてな……居ても立っても居られずに()()と一緒に王都まで駆けつけたのさ!」

「…………じゃあ!」

「無論、君の団に入らせて貰いに来た! 私では不足だろうか?」

「いいえ、全然! アンジュさんが加入してくれるなら俺は大歓迎です!!」

「ふふっ、決まりだな……! よろしく頼むぞ、ラムダ=エンシェント……団長!」



 もちろん、“S級”……いや、さっき“SS級”って言っていたな……ともかく、素性も実力もハッキリしているアンジュなら団員として申し分ない。


 アンジュ=バーンライト――――採用。



「――――いい顔になったな、ラムダ=エンシェント……強い男の顔になった」

「色々ありましたから……」

「フッ……()()()鹿()に、君の爪の垢を煎じて飲ませたかったよ……生きていたら、私がしごいて一人前の男にしてやったのにな……」

「アンジュさん……強くなったんですね……」

「あぁ……色々あったからな……」



 歓迎の握手を終えて、共に戦う同士となったアンジュが不意に俺に掛けた言葉――――俺の成長を喜び、欠けた想いに彼女は想いをはせる。


 憂いた表情かおで俺を見つめるアンジュ。

 俺の顔に、消えた相棒の影を重ねて静かに笑う。


 大切な人を失って、『痛み』を知って、人は強くなる。


 アンジュもまた、『痛み』を知って強くなったのだろう……だからこそ、今の彼女は騎士団に相応しい人だと俺は思う。



「アンジュ〜! あんた私の弟に粉かけに来たの〜?」

「げっ……姉さん……」

「久し振りだな、ツヴァイ! ふふふっ……生憎と私()ラムダ卿に粉をかけられていてね! 悪いが、過保護なお姉さんはお呼びじゃないんだ……!」

「アンジュさん!? 紛らわしい言い方しないでよ!?」



 そんなアンジュに恨めしそうな声を掛ける女ひとり、ツヴァイ姉さんだ。


 そう……ツヴァイ姉さんとアンジュは旧知の仲だ。

 ふたりが新人の時代に幾度も喧嘩していたらしい。


 扉の隙間からアンジュをジト目で睨みつける姉さんと得意気な顔で姉さんを挑発するアンジュ……う~ん、リリィと言いアンジュと言い、姉さんはいささ好敵手ライバルが多いような気がしてきた。



「むっきーーっ!! あんたみたいながさつな女、ラムダには似合わないわーーーーッ!!」

「なら試してみるか? 久々に喧嘩と洒落込もうか!!」

「あーはいはい! 喧嘩は外でやってくださーい!! 次の方〜どうぞ〜!」

「「は~い♡」」



 取っ組み合いを始めたツヴァイ姉さんとアンジュがオリビアに連れられて応接室から出ていったのと入れ替わりに、ノアに呼ばれて入ってきたのは二人組の女性。


 ひとりは軽装に弓を抱えた水色のツインテールと薄いエメラルド色の瞳が印象的なエルフの少女。


 もう一人はとんがり帽子が特徴的な黒髪と赤い瞳が印象的な魔女っぽい妖艶な女性。


 はて……何処かで見たような?



「はぁ~い、お名前をどうぞー!」

「ギルド“A級冒険者”の【弓兵アーチャー】エリス=コートネルと……」

「同じくギルド“A級冒険者”の【魔女ウィッチ】シエラ=プルガトリウム♡」

「「迷宮都市エルロルではお世話になりました、ラムダ=エンシェントさん♪」」

「…………あ~~っ!? あんた達、リティアに催眠に掛けられていた!?」

「ハイ……以前は危ないところを助けていただきありがとうございました!」



 思い出した……エリス=コートネルとシエラ=プルガトリウム。


 迷宮都市エルロルでの事件の主犯格だったリティア=ヒュプノスが【エクスギアス】で操り俺にけしかけたふたりの冒険者…………それがエリスとシエラだ。



「ふたりともどうして……?」

「実はあの後、アンジュさんと3人でパーティーを組んで冒険を続けていまして……」

「それでラムダさんの報せを聞いてみんなで入団しに来たって訳です♡」


「なるほど……」

「ずばりパーティー名は……『エルロル被害者の会』!!」

「まんまですね、ラムダさん?」

「しかも悲壮感が漂ってるパーティー名だ……」


「うぅ……わたしもエリスちゃんもアンジュさんも……『“ギルドの狂犬”ラムダ=エンシェントに傷モノにされた女』って言われて肩身が狭くて……よよよ(泣)」

「合ってるんですけど……その文面じゃラムダさんが3人の処女を奪ったような言い方ですね(笑)」


「…………不名誉すぎる」

「ラムダさんに乱暴に扱われて怪我を負って、しばらく病院で入院していました……よよよ(泣)」

「ご……ごめんなさい……」



 どうもエリスもシエラも、ひいてはアンジュも、迷宮都市エルロルでの戦いの影響が後に引いているようだ。


 まぁ、たしかふたりとも2回ほどぶっ飛ばして壁に叩き付けて、アンジュも腹部を殴った覚えがあるから、俺も加害者になってしまうのだが……リティアめ、あの世に行ったらもう一回ぶん殴ってやる。


 けど、エリスもシエラも俺に禍根かこんは残しておらず、おまけにふたりとも“A級”の実力者だ。戦力としては申し分ない。



「わたしたちの事……採用して頂けますか、ラムダさん?」

「もちろん! ふたりなら大歓迎さ! よろしくお願いします……エリスさんに、シエラさん!」

「…………っ! こちらこそ、精一杯頑張りますので、よろしくお願い致します!!」



 感極まって椅子から立ち上がったふたりと固く手を結んで騎士団に迎え入れる。


 弓兵アーチャーと魔女――――ふたりなら騎士団の後方支援として申し分ない働きをしてくれるだろう。



「じゃあ……エリス=コートネルさんと、シエラ=プルガトリウムさん……採用っと!」

「あの、ラムダ様〜! ツヴァイさんとアンジュさんが殴り合いの喧嘩を始めたので一緒に止めてくださ〜い(泣)」

「やれやれ……姉さんも仕方がないなぁ……! エリスさん、シエラさん、早速で悪いけど、アンジュさんを止めるの手伝ってくれる?」

「「はい、喜んで〜♡」」



 ふたりを迎えたところで困り顔で応接室に戻って来たオリビアと、部屋の外から聞こえて来た激しい喧嘩の音……どうやらツヴァイ姉さんとアンジュの喧嘩がヒートアップしてきたらしい。


 このままではスキルを使った喧嘩に発展してせっかくの寄宿舎が壊されかねないから止めに入らなければ。


 早速、エリスとシエラを引き連れて行く―――――アンジュとパーティーを組んでいたらしい二人ならきっとアンジュを上手く止めてくれると信じて。


 団員集めはまだ始まったばかり……さて、どうなることやら。

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


ご覧いただきありがとうございます。


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