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閑話①:湯煙温泉街【ムラクモ】


此処ここがグランティアーゼ王国の隠れた名所――――“湯煙温泉街”【ムラクモ】かぁ……!」

「わぁ~、むっちゃ東洋風オリエンタル……! 世界観無茶苦茶ですね〜」

「失礼なことを言いますわね、ジブリール……! ここは先々代の国王が遠征で訪れた東の国の建築様式に感動して作り上げた立派なグランティアーゼ王国の避暑地ですわ!」



 逆光時間神殿【ヴェニ・クラス】を発ってから3日ほど経過し、王都へ向かう俺たち【ベルヴェルク】とツヴァイ姉さん率いる第二師団【竜の牙】は、道中の山間部にあるグランティアーゼ王国の観光地“湯煙温泉街”【ムラクモ】に足を運んでいた。


 湯煙温泉街【ムラクモ】――――近くにある休火山の地熱と地下を流れる魔力の源“マナ”が溶けた源泉が混じり合って出来た世にも奇妙な『生命の泉』と名付けられた温泉が街中から湧き出る王国の隠れ里。


 グランティアーゼ王国の各地で見られる石造りの建物とはまた違う、木造建築がのきを並べる東洋風オリエンタルな街並み。



「……で、此処にはなんの用があるんですか、アインス兄さん?」

「んっ? ここには君たちの慰安いあんの為に来たんだよ?」

「僕たちのですか?」

「あぁ、その通り……! サートゥスからの長旅でさぞ疲れたろう? 掛かった費用は第一師団で持つからラムダたちはここで少し羽を伸ばしなさい」

「ホントですか、兄様♪ あぁ~……ムラクモの温泉に第一師団の奢りで入れるなんて……♪」

「もちろん第二師団の経費はツヴァイの自腹だよ? 私がもてなすのはあくまで【ベルヴェルク】の面々だけだからね?」

「「「…………はぁ~い……」」」

「第二師団の全員が露骨にがっかりしてる……」



 その目的はアインス兄さんによる俺たち【ベルヴェルク】の慰安という粋な計らいのため。


 辺境の街【サートゥス】、迷宮都市【エルロル】、享楽の都【アモーレム】、逆光時間神殿【ヴェニ・クラス】――――多くの場所で多くの死闘を演じた俺たちの一時びとときの安らぎの時間。


 それをアインス兄さんは用意してくれたのだ。



「もっとも……私たち第一師団はこの近くの……先日現れた“光の巨人”による破壊活動の被害状況を調べる必要が有るだけなんだけどね♪」

「なるほど……」

「まっ、被害を受けたのは雪山地帯だから死傷者は多くは無いと思うけど……多分、地図を書き直す必要はあるかな〜?」

「ありゃ〜それは大変ですね、ラムダさん?」

「まぁ……元はと言えば俺たちが【逆光時間神殿ヴェニ・クラス】で暴れたのが原因だけど……」

「あっはっは! ノアちゃんが居るならラムダも安心して休息出来るだろう……! じゃあ、第一師団は3日ほど街を離れるから、また合流したら王都へ向けて出立しようか……!」

「分かりました! ありがとうございます、アインス兄さん!」



 アインス兄さん率いる第一師団【聖処女】は先日の戦いで【光の化身】が放った超広範囲攻撃の被害状況を調べる為に【温泉街ムラクモ】を後に……。



「じゃあ第一師団のみんな、調査の方よろしくね~♪」

「『よろしくね~♪』じゃなくておめぇも来んだよ、アインス卿! なに爽やかな顔で見送りに混ざってんだ! おい、あのアホ団長を縛って連れてくぞ!!」

「あぁ〜……せっかくツヴァイとラムダの3人、家族水入らずで温泉に入ろうと思っていたのにぃ~……」

「そもそも私は女です! いい歳した兄様と一緒に入る訳無いでしょ!! 早く、その兄を連れて行ってください!!」

「あ~れ~……ラムダ〜お土産よろしくね〜♡」

「兄さん……うぅ……平常運転すぎる……」

「ラムダ卿、胃薬です」

「ありがとうございます、ツェーネル卿……」



 アインス兄さんは怒れる第一師団の騎士たちにぐるぐるに拘束されて街を後にした……やっと行ってくれた。


 はぁ……疲れた。

 ツェーネルのくれた胃薬が身体によく染みる。



「私を見つけてくれたのがラムダさんで良かったと……アインスお義兄にいさんを見ててつくづく思いました……!」

「わたしも婚約者がラムダ様で良かったと思っています……」

「惚れたのが御主人様ダーリンで良かった〜」

「アインスお兄さんは……うん、無いのだ!」

「アインスさん……すごい総スカンされてる……」

「まぁ、あの方は昔から『そう言う人』みたいですから……ミリアリア様……」

「はぁ……グランティアーゼ王国一の“誉れ”の自覚は無いようですわね……アインス卿……」

「なるほど……『残念なイケメン』と言うやつですね、マスター?」



 まぁ、アインス兄さんの素行はともかく、せっかく温泉街での休暇を奢りで出来るんだ。兄さんには感謝してゆっくりと羽を伸ばすとしようか。



「じゃあ……さっそく昼食と洒落こもうか!」

「さんせ~い♪ ノアちゃん歩き疲れてお腹ペコペコですぅ~」

「わぁ~い♪ 久々にエルフの粗食以外のご飯が食べれるのだー!」

「私たち第二師団は粗食なのだ……悲しいのだ……」

「うぅ……我々も頑張って戦ったのに……」

「第二師団の全員が凄い悲しそうな表情をしてる……ツヴァイ姉さんに至ってはアウラ化してるし……」

「アウラ化って何なのだ!? 勝手にあたしを“現象名”にするななのだー!」



 しょんぼりと肩を落としたツヴァイ姉さんには非常に申し訳ないが、アインス兄さんのもてなしの主賓はあくまでも【ベルヴェルク】らしいし、仕方ないのかな。



 などと思いつつノア達を連れて【温泉街ムラクモ】の散策に乗り出そうとしたが――――


「ラムダぁ……お姉ちゃん達を差し置いて食べるご飯は美味しい……?」

「ラムダ卿……我々は【逆光時間神殿ヴェニ・クラス】で共に戦った“同士”ですよね……?」

「マスター……めっちゃグイグイ来ますね、この人たち……」


 ――――第二師団の怨嗟えんさの視線があまりにも酷い……と言うよりも怖い。



「あー、分かったよ姉さん! アインス兄さんには俺から言い訳しとくから、第二師団も一緒にご飯食べよう!」

「「「いぇーい! 第一師団の奢りだー-っ♪ ありがとうございます、ラムダ卿--っ♡」」」

「ありがとう、ラムダ……お姉ちゃん信じてたよ……!」

御主人様ダーリンの善意に付け込んだわね……! なんて浅ましいのかしら、ツヴァイ=エンシェントめ……!」

「うーむ、もしかしてラムダさんのご兄妹ってみんな残念系なのかな?」

「そうですよーミリアリア様~! 『頭は残念なのに腕っぷしは強いとか最高にムカつく!』とは亡きゼクス様の言葉です~」



 ツヴァイ姉さん達の圧に根負けして、結局16名の大所帯で高級料亭で昼食をすることになってしまったが……はてさて、この3日で幾ら旅費が掛かるのやら。


 アインス兄さんに大目玉を食らわないように祈っておかないと。

あけましておめでとうございます♪

今年も本作をよろしくお願いします(^o^)ノシ


少し題名をいじってますので、ややこしいかと思いますが、変わらずのご声援よろしくお願いします♪

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