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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1082話:聖騎士、帰還


「ここが第九十階層……あぁ、此処は……」

「第五十階層で見た景色に似てますが……」



 ――――“暴食の魔王”グラトニスを撃破して次の階層に到着した俺たちを待っていたのは、第五十階層でも見た、しかし何処か雰囲気の違う光景だった。

 朱く染まった空、遥か頭上で禍々しく輝く朱月あかつき、燃え盛る王城、そこはグランティアーゼ王国の王都シェルス・ポエナを再現した場所だ。そして、王都が地図から消え去った、忌まわしき日の再現。



「グランティアーゼの落涙……」



 それは『グランティアーゼの落涙』と呼ばれる、前王ヴィンセント時代の王国終焉の日を再現した光景だった。

 俺たちは再現されたエトワール城の一画に設けられた()()()()に立っていた。巨大な木組みの処刑台が設置された処刑場だ。



「我が騎士、ラムダさんの栄光が始まって……」

「……そして終わった場所。あぁ、頭痛がする」



 アーティファクト戦争で“暴食の魔王”グラトニスを王立ダモクレス騎士団が倒し、グランティアーゼ王国は戦争に勝利した。そして、戦争で多大な戦果を挙げた俺は“アーティファクトの英雄”と持て囃される事になった。

 だが、目下の脅威だったグラトニスを下した事で、前王ヴィンセントの計画は次の段階へと移行した。それはアーティファクトの軍勢を率いての世界制覇である。



「俺は無実の罪で投獄された……」



 当初、俺は前王ヴィンセントの計略でグラトニスに代わる魔界マカイの統治者として派遣させられる予定だった。そして俺を魔王として切り捨てて、引き離したノアを手中に収めるつもりだった。

 だが事件が起きた。前王ヴィンセントの頭脳とも言うべき第四師団長テトラ=エトセトラ卿が暗殺される事件が発生、同時に魔王軍の残党が王都へと忍び込んでくる事態が起きた。



「魔王軍の残党を手引きしたのはホープとリヒターさん……正確に言えばラストアーク騎士団でした。なんでもグラトニスさんの復活の為だったとか……」


「おかげで私に疑念が向けられましたけどね」


「ホープがリヒターさんに貴方の身柄を拘束して、保護するように頼んだらしいですよ。えっ……リヒターさんに獄中で煽られて傷ついた? それは、さぁ……あの人の性格が悪かっただけでは?」



 前王ヴィンセントは魔王軍の侵入とエトセトラ卿の暗殺を俺の仕業だと断定し、教皇ヴェーダと結託して俺を含めた魔王たちの粛清を決定した。

 俺を反逆者として始末して、ノアを奪い取ろうとしたのだ。そして、俺を含めた魔王たちは処刑台に繋がれ、そこで無慈悲な処刑宣告を受けた。



「しかし……貴方の処刑に反対する者たちが王城に突入、王立ダモクレス騎士団は真っ二つに分裂する事になった。レティシアさんが味方してくれたからですね」


「けど、俺のせいで騎士団は……」


「王立騎士団の分裂も、王都シェルス・ポエナの消滅も……全ては前王ヴィンセントの野心が生んだ結果です。貴方は因果の中心に居ただけ……まぁ、そう簡単には割り切れませんよね」



 しかし、教皇ヴェーダ、そして女神アーカーシャはグランティアーゼ王国をも粛清対象に選んでいた。前王ヴィンセントが教団が禁忌と定めるアーティファクトの軍勢を組織したからだ。

 前王ヴィンセントは女神アーカーシャの子どもであった王立ダモクレス騎士団のレイ=フレイムヘイズ卿によって処刑され、王都シェルス・ポエナはアーティファクト『月の瞳』から放たれた“落涙”で消滅した。



「…………」



 大勢の犠牲者を出し、国王を含めた為政者の大半を失ってグランティアーゼ王国は一度崩壊を迎えた。死者の中には俺の家族も含まれていた、生き残る為に俺は家族を斬って……そして殺してしまった。

 燃え盛るエトワール城は俺の“罪”の象徴であり、決して癒える事のない“傷”の記憶である。そして、その風景を再現したのなら、此処に現れるガーディアンはただ一人。



「ここは君の心に最も大きな“傷”を付けた回想……君の“罪”にして“罰”だ、ラムダ。“アーティファクトの英雄”はこの日に死に、迷い続ける“傲慢の魔王”だけが残された……」


「…………」


「私という『壁』を乗り越え、その先に見た風景はどうだったかい? 君の成長の手助けになったかい? それとも、君の未熟さを写す鏡になったかい?」



 姿勢を向ければ、そこには白銀の甲冑を纏った青年が一人立っていた。その背には純白の聖剣を携え、美しい金色の髪を風になびかせ、エメラルド色に輝く綺麗な瞳で俺を優しく見つめている。

 優しく微笑むその青年を俺はよく知っている。王立騎士を目指していた頃の俺が憧れていた存在、エンシェント家始まって以来の天才にして、“聖騎士パラディン”の称号を持つ我が敬愛の兄。



「アインス兄さん……」

「やっ、ラムダ……」



 彼の名はアインス=エンシェント、王立ダモクレス騎士団第一師団を率いる青年で、俺の兄だ。

 アインス兄さんは片手を降って、笑顔を向けて挨拶をしている。懐かしい人に逢えて少しだけ涙腺が緩んだ。



「ここのガーディアンはこの私……いいや、僕が相手だ。安心したまえ、僕は“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”が作り出した幻影……本物じゃない。何の気負いもなく戦えるという訳さ」


「兄さん……」


「あの時、王城で戦った時は……君は精神的にいっぱいいっぱいだったからね。……そしてこの僕も。だから心残りだったんだ……君の本気を、成長をちゃんと見れなかったのが……」



 アインス兄さんは優しく語り掛ける。だが、その笑顔の下からピリピリと張り詰めるような闘気を迸らせている。

 あの時、『グランティアーゼの落涙』の時は、アインス兄さんは王立騎士として、俺は反逆者として殺し合いをする事になった。お互いに本意じゃない決闘だ、今でも後悔している。



「さぁ、ラムダ……剣を抜きなさい。ここにはグランティアーゼ王国も王立ダモクレス騎士団もない。僕と君、何にも邪魔をされず、心ゆくまで戦おうじゃないか……!」


「…………ッ!!」


「僕という『壁』を乗り越えて世界に羽ばたき、自らの征く道を選んだ君の剣……それを見せてくれ。ラムダ……エンシェントの呪縛から解き放たれた騎士よ」



 けど、今回の戦いはグランティアーゼ王国とは関わりがない。“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”が見せる一時ひとときの幻想だ。

 アインス兄さんは背中に背負っていた“救国の聖剣”ジャンヌ・ダルクを引き抜いた。その表情はどこか楽しそうに見える。純粋な気持ちで俺と戦おうとしているのだろう。



「遠慮は要らないよ……全力で掛かってきなさい。僕は君の前に立ち塞がる『壁』だ……この先に進みたいのなら、この僕を倒していきなさい」


「アインス兄さん……では、胸をお借りします」


「この忌まわしき風景を、君に巣食った“傷”を克服し……この記憶を君のちからにするんだ。大丈夫、今の君なら出来るさ……なんたって、君は僕の自慢の弟だからね!」



 俺は魔剣を手に取ってアインス兄さんと対峙する事を選んだ。前は悲しみで押し潰されそうだったが、今は違う。どこか晴れやかな気持ちでアインス兄さんと向かい合えていた。

 この風景は、この思い出は俺の挫折の記憶である。その忌まわしい“傷”を乗り越えれば、俺はさらなる高みに登って征けるだろう。



「…………」

「…………」



 俺とアインス兄さんはお互いに剣を握り静かに睨み合い、それをノアが離れた位置から見守っている。あとはいつ剣を結び合うか。

 エトワール城の処刑場に風が吹く。足下の草が揺れて、木組みの処刑台が何処から飛んできた火の粉を浴びて引火する。それが決闘の合図となった。



 燃え盛る焔に照らされた瞬間、俺もアインス兄さんは同時に走り出し――――


「「いざ尋常に――――勝負ッ!!」」


 ――――聖剣と魔剣をぶつけ合い、閃光と火花を散らして激突を開始するのだった。

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