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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1081話:ごちそうさまでした


「我が王、ルシファーは……?」

「機能停止しただけです。まっ、直に起きるでしょう」



 ――――ルシファーを機能停止に追い込んだノアはすまし顔で俺の側にやって来た。別に怪我もしておらず、ルシファーから奪い返した拳銃をカチャカチャと手入れしている。

 これでグラトニスとルシファーは倒れた。もうこの階層で脅威になる者は残っていなさそうだっ

た。



「やれやれ、派手にやってくれたのう……」

「――――ッ! グラトニス、いつの間に……」



 そう思った矢先だった、グラトニスが起き上がって俺たちの前に立ち塞がっていた。口調もさっきまでの少女としての『ルクスリア』から、魔王然とした『グラトニス』のものに変わっている。

 稲妻に貫かれて全身はボロボロ、心臓部分は焼け焦げ、右手には切断された“喰魔”ベルゼブブの残骸を握っている。とても戦える状態ではない。



「ほれ、お主の剣は返してやろう……受け取るのじゃ」

「ラグナロク! うげぇ……涎でベトベトだ」



 “喰魔”ベルゼブブに喰われた“神殺しの魔剣”ラグナロクを取り出して、グラトニスは魔剣を俺に投げ渡してきた。唾液でベタベタになっている。

 受け取った魔剣を手持ちの手拭いで丁寧に拭き取り始めながら、俺たちはグラトニスの動向に警戒した。敵意は無いように思えたが。



「ここまでコテンパンにされたのは初めてじゃ……儂もまだまだ鍛錬が足りんのう。そう言う訳じゃ……さっさと次に行くが良い。どうやら、そろそろ儂も消えるみたいじゃからのう……」


「グラトニス、身体が……」


「所詮、儂らは“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”が再現した数多ある並行世界に存在する“可能性”の具現にすぎん……別に気にせんでよい」



 グラトニスの身体にはノイズが入り、徐々に見え始めていた。立ち塞がったのは最後の挨拶をする為だろう。

 グラトニスの視線はノアに向けられていた。それを感じ取ってか、ノアも真剣な面持ちでグラトニスに向き合っていた。



「そなたがアーカーシャに代わり、この世界に君臨する“神”になるのかの? それで……そなたが“神”になればこの世界は誰もが幸福になれる“理想郷”になるのかの?」


「それは保証しません」


「ならば、そなたが“神”になれば世界はどうなるのじゃ? 儂のように、誰からも見捨てられたゴミ捨て場で生きる惨めな子ども達は居らんくなるのかの?」



 グラトニスの関心はノアが新たな“神”になった事にあった。女神アーカーシャを引きずり降ろし、ノアが新たな“神”になったら世界は変わるのかと。



「私は世界には深く干渉しない方針です。あくまでも歴史の主体はあなたたち人間にあります。私がするとすれば……世界の外から来たる厄災を打ち払い、あなたたちの在り方を見守るぐらいでしょう」


「我が王……」


「それでは世界から差別も貧困もなくならん! 人間は愚かじゃ……自分さえ幸福なら良いと傲慢に振る舞い、他者を蹴落とし踏み台にして、結局は底辺に負け犬たちが掃き捨てられる……それがそなたの理想か?」



 女神アーカーシャは自分を信奉する者しか守らなかった。結果、誰からも見捨てられた場所で生まれたグラトニスは劣悪な環境で過ごさざるを得なかった。

 そんな想いをする者たちを無くすのが“神”なのではとグラトニスは問うた。それに対してノアは『自分ができるのは決定的な破滅を防ぐことだけだ』と答えた。当然、グラトニスにとっては納得できない答えだろう。



「世界には多くの課題が残っています。そして、その全てを万能な“神”が取り除いてしまえば……そこに待っているのは人類の堕落のみです」


「じゃから痛みに耐えよと申しのか?」


「苦難や苦痛、絶望があるからこそ、人間はそれに抗い続けた。今だってそうです……世界が痛みを感じているからこそ、それに抗い者が立ち上がった。グラトニスさん……貴女の事ですよ」


「じゃが、儂とて万人は救えん」


「それでも……立ち上がり続ける人が現れ続ける限り、世界は前進し続けます。希望を信じる人を嘲笑う人も居るかも知れません……けれど、賛同してくれる人が居る限り、希望が死ぬことはないのです」


「それをそなたは見守ると言うのかの?」


「私の使命はそんな希望の“芽”を護り続ける事。グラトニスさんが理想郷を信じて戦い続けるのなら、私は貴女の希望を否定しません……貴女のような人たちが立ち上がり続けるのなら、私は安心してこの身を世界の“柱”にできましょう」



 それに対するノアの返答は、世界を作るのは人間たちであり、グラトニスのように立ち上がり続ける者が居る限り、世界は希望を失わない。だから“ノア”は干渉しない、という内容だった。

 一見すれば、苦しむ人々を見捨てるような内容だ。だが、苦しむ人々の為に立ち上がる人々が居るのなら、自分が干渉する必要は無いのだとノアは言っている。



「この先も様々な困難が人類を待っているでしょう。苦しむ人々も、悲しむ人々も居続けるでしょう。けれど、その痛みを振り払う為に立ち上がる人が居るのなら、世界は少しずつ良くなって行きます……歩くような速さかも知れないですけどね」


「だから……儂らに歩き続けよと申すか?」


「はい、歩き続けてください……その道を私が照らします。大丈夫、世界には貴女と同じように、立ち上がる人々がたくさん居ます。だから貴女は孤独ではありません、手を伸ばせば……その手を取ってくれる人は必ずいます」



 グラトニスは女神アーカーシャが敷いた理不尽な“ことわり”を打ち破る為に立ち上がり、魔王軍を率いて世界征服に乗り出した。ただ純粋に、苦しむ人々を無くそうとする一心で。

 そんな気持ちを持つ人々が存在し続ける限り、世界は捨てたもんじゃないのだとノアは笑った。そして、そんなノアの答えを聞いたグラトニスは呆れたようにため息をついた。



「はぁ……理想論者じゃのう。じゃが、そうか……それがそなたの方針か。ならば、儂の好きなようにしても良いという訳じゃな?」


「あくどい事をすれば……我が騎士が飛んできますよ」


「ふん……分かったのじゃ。それがそなたの方針と言うならばそれで構わん。そなたなりの“神”の在り方を貫くが良いのじゃ」


「はい……そのつもりです。行きましょう、我が騎士」


「“暴食の魔王”と怖れられた儂を『世界の良心』だと称したのには感心したのじゃ……そら、さっさと次に行くのじゃ。そして、ささっと正真正銘の“神”になっていると良いわ」



 完全に納得はしていないが、それでもノアの在り方に理解は示したのだろう。グラトニスは次の階層に向かうエレベーターへの道を譲ってくれた。

 そして、ノアはグラトニスに小さく一礼すると、彼女の脇を通り抜けて歩き出した。俺もノアに続いて歩き出す。



「あっ、そうだ……ルシファーに聞きたい事があったんだ。我が王、ルシファーを起動させれますか?」


「それならもう起きる頃合いですよ、我が騎士」


「き……起動、起動、起動。再起動開始……う、う〜ん。はっ……当機わたし、何をしていたの!?」



 だが、立ち去る前に、俺はルシファーに尋ねたい事があった。ちょうどノアの緊急停止が解除されたのだろう、ルシファーはゆっくりと起き上がった。

 グラトニス同様、ルシファーも身体にノイズが走り消え掛かっている。あまり時間は無いようだ。



「ルシファー、質問がある……お前は俺の“神殺しの魔剣(ラグナロク)”を()()()()()()()()()()()だと言っていた。それは何故だ……この魔剣は俺がコレットに創ってもらった物、俺のオリジナルだ」



 質問の内容は至ってシンプル、ルシファーが俺の持つ“神殺しの魔剣”ラグナロクを伝説のアーティファクトだと称した事だ。けど、それはおかしな話だ。

 この魔剣は獣国ベスティアでグラトニスに折られたアーティファクト『斬光流星剣メテオザンバー』の残骸を、覚醒したコレットの“憤怒”の焔で再構築した物だ。つまりは、獣国ベスティアでの戦いを通じて俺が手に入れた完全なオリジナル。伝承なんてある筈がないからだ。



「ああ、そんな事……簡単な話よ。そのアーティファクトは古代文明で振るわれた……だから当機わたしは知っている。それだけの話よ……シンプルでしょ?」


「“神殺しの魔剣(ラグナロク)”が……そんな馬鹿な」


「ふふふっ……焦らなくて大丈夫よ。いずれあなたはその伝説の真実を知る事になるわ。そして、真実を知りたいのなら、この“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”を攻略し……そして“最果ての楽園”に赴くのね」


「最果ての楽園……アーカーシャの居る!」


当機わたしに言えるヒントはここまで……機密情報だから、言えないようにロックされているの。あとはお楽しみ……せいぜい真実を知って悶え苦しみなさい」



 けど、ルシファーは“神殺しの魔剣”ラグナロクは古代文明で振るわれた事がある、と言う真実を語った。嘘をついている気配はない。

 ならば、俺が手にした“神殺しの魔剣”ラグナロクは如何なるアーティファクトで、古代文明で振るわれたソレとの因果は何なのか。ルシファーは語らない、ただ意地悪そうな笑みを俺に向けていた。



「じゃあね、おふたりさん……頑張りなさいな」



 そして、笑みを浮かべたままルシファーは消え去った。あとに残されたのはグラトニスだけ。彼女も間もなく消滅して退場する。

 ルシファーの意味深な言葉に困惑する俺を見て、グラトニスも意地悪そうに笑った。そして、暫く考えたあとに『ルクスリア』としての笑みを見せてきた。



「ルシファーがああ言っているなら、あなたには期待しているのよ。必ず真実に辿り着けるわ……だから歩き続けなさい」


「はぁ……分かったよ、ルクスリア」


「じゃあ、私もそろそろ退場するわ。ああ、それと……この『私』の結末を教えとくわ。あなたが居ないグランティアーゼ王国を攻め落としたは良いけど、その後に教皇ヴェーダに粛清されて負けた負け犬よ」


「そうか……大変だったな」


「だから……あなた達が教皇ヴェーダもアーカーシャも倒したと聞いてせいせいしたわ。そっちの私によろしくね。それと最後に……ごちそうさまでした。とても満足できる戦いだったわ……ありがとう」



 そして、最後に俺に照れくさそうに礼を言って、“異聞イフ”グラトニスも消え去っていったのだった。満腹になったと満足そうにしながら。

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