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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1078話:VS.【暴食の魔王】ルクスリア=グラトニス“異聞”⑤/ “PRIDE”


『儂とお主がもう一度真剣勝負……殺し合いをしたらどっちが勝つかじゃと? 決まっておろう、たわけめ……儂が勝つに決まっているのじゃ! ん、なんじゃ、その不服そうな表情かおは?』


『その根拠は?』


『決まっておろう……お主は()()()()()()()()()からじゃ、ラムダよ。正々堂々と戦おうとする相手には、お主も正々堂々で応えようとするじゃろ? それとも何か、名乗り上げもせずに銃でズドンと撃ち殺すのかの?』


『いや……そんな真似しないけど』


『そうじゃろ、そうじゃろ……けど儂はする。そして、やるなら徹底的にする……ルシファーとアケディアスを連続でけしかけて、疲弊したお主を潰しに掛かったようにのう』


『確かに……卑怯上等すぎる』


『じゃが、まぁ……儂にも弱点はある。それは欲張りさんな事じゃ……かわいいじゃろ? ほら、ノアが言うとったじゃろ……二兎追うものは一兎も得ず、と。極上の獲物が複数ある時、儂は集中が疎かになるのじゃ……つけ入るならそこじゃな。あ、かわいくない、むしろ下劣じゃと……よし、表に出るのじゃ、このスケコマシ野郎』



 ――――“喰魔”ベルゼブブに胸を貫かれ、地面に蹴り倒されながら、俺はかつてグラトニス(本物)が語っていた事を思い出していた。俺とグラトニスが殺し合いをした場合、()()()()()()()()()()、勝つのはグラトニスになるのだと。

 しかし、グラトニスは自身の弱点を“欲張り”だと言っていた。目の前に複数の“餌”がある場合、彼女の集中力に若干の乱れが起こる。まさに今がその状況だ。



「ルクスリア、さっさとトドメを刺しなさい!」


「分かっておる、ルシファーはノア=ラストアークを確保せよ。クッフッフ……あやつの頭脳があれば、儂らを“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”のシステムから解放し、実体化をする事も可能じゃろ。そうなれば……」


「ルクスリア、当機わたしの話を聞いているの?」



 グラトニスは俺の頭を脚で踏み付けて、“喰魔”ベルゼブブの刃を突き立てようとしている。だが、ルシファーに警告されているにも関わらず、彼女の意識は僅かにノアに向いていた。


 視線や殺意は俺に向いている。

 興味や感心だけがノアに向かっているのだ。


 そして、独り言から察するに、グラトニスは脳内でこの後の算段をしている。頭の回転が良いばかりに、この先の盤面を俯瞰しているのだ。灯台下暗しとはこの事を言うのだろう。



「まぁ良い……ともかくトドメを刺すのじゃ」



 グラトニスが晒した隙はわずか数秒、俺を倒した後の事を計画したグラトニスは意識をこちらに向けた。

 グラトニスは“喰魔”ベルゼブブを振り被り、ルシファーはノアを捕らえようと視線を逸らした。その数秒の隙は反撃を仕込むには十分すぎる時間だった。



「まったく、ルクスリアにも困った……ぐあ!?」

「――――ッ!? なんじゃ、ルシファー……!?」



 俺が右手の人差し指をクイッと微動させた瞬間、ルシファーの胸部を蒼い剣が背後から貫いた。グラトニスの意識が逸れた隙に俺が仕込んでいた“魂剣こっけん”だ。

 胸部を貫かれたルシファーはその場で仰け反り、ルシファーの悲鳴を聴いたグラトニスは視線を彼女の方に向けた。相棒であるルシファーを気遣うのは、小心者である()()()()()さがだ。



「我が王への手出しは……この俺が許さん」

「貴様、まだ動けて……なんじゃ、離せ!!」



 その隙を突いて、俺は頭を踏みつけているグラトニスの脚を左手で掴んだ。ただ掴んだだけである、そこから攻撃を仕掛けても意味が無いと判断したからだ。

 グラトニスは俺の手を振り払おうとしている。だが、左手の爪は服を貫通して彼女の肉に喰い込んで離れず、グラトニスは苛立った表情をしていた。



「この、もう貴様には用は無い……離すのじゃ!」


「そんなにアーティファクトが欲しいってんなら……我が王よりもっと良いのを俺がくれてやるよ。“輝跡書庫レーカ・カーシャ”……ブラック・ゲート解放! 記録情報……注入開始!」


「な、なんじゃ、頭に何かが……んぎッ!!?」



 そして、グラトニスが感情を荒立てた瞬間、俺は彼女の神経を通じて脳にある情報データを無理やり流し込んだ。

 俺の身体に融合している情報集積体『輝跡書庫レーカ・カーシャ』に収められておる、古代文明に関するあらゆる情報を。常人なら脳神経が一瞬で焼き切れる程の膨大な量で。



「あ、あがが……んぎぎぎぎぎぎぎッ!!? 頭が……頭がぁぁぁ!!? あが、あがぁぁあああああああああッ!!? んががががががががが!!?」


「ルクスリア……しっかりして、ルクスリア!!」


「儂の脳みそが……私の頭が破裂する……!! 痛い、痛い痛い痛い痛い痛い!! なんなのこれ、やめてやめて、やめてぇぇエエエエエエエ!!」



 古代文明滅亡時に生きていた人間100億人のパーソナル情報、戦争で用いられていた兵器群の詳細なデータ、古代文明の国家データ、様々な情報媒体の精密な模写データ、ノアを含めた“人形マキナ”たちの設計データ、その他もろもろ。

 俺ですら一度に開示すれば脳神経が焼き切れ、発狂してしまう程の莫大なデータをグラトニスの脳みそに直接流し込んだ。その結果、グラトニスはガクガクと痙攣して苦しみだし、グラトニスという“仮面”すら取り繕えなくなった。くちや鼻、眼からも出血が見てとれる。



「二兎追うものは一兎も得ず……確かにその通りだな。だから俺からのプレゼントだ……欲張りなお前に、お望みの古代文明のアーティファクトの情報を。その脳みそでよく味わえよ……」


「くぁwせdrftgyふじこlp……ぐがが!!?」


「我が王への危害を仄めかさなければ、俺もここまではしなかった。先に俺の矜持に銃口を向けたのはお前だぞ、グラトニス……覚悟しろ!! さっさと俺の“神殺しの魔剣(ラグナロク)”を返せ!!」



 グラトニスの脚を払い除けて立ち上がり、悲鳴をあげてガクガクと痙攣するグラトニスに可変銃の銃口を向けた。魂剣が刺さったルシファーは動けない、グラトニスは無防備だ。

 あとは引き金を引いて、グラトニスのパンク寸前の脳を撃ち抜けば勝敗は決する。躊躇う必要はない、俺は引き金を引こうとした。



 その瞬間だった――――


「わ、わわ……儂を……ん舐めるなァァ!!!」

「――――ッ!? グラトニス、意識が!?」


 ――――グラトニスが暴れ始めたのは。



 大声を張り上げながら魔力を放出し、グラトニスは強引に俺を吹き飛ばしてきた。俺は数メートル後方まで後ずさってしまい、トドメを刺すことに失敗してしまった。

 グラトニスは白眼を剥いて叫んで、くちや眼から血を流している。それでも彼女は驚異的な精神力で意識を保っていた。



「この程度の情報など……全て喰らい尽くしてくれるわ!! 儂は“暴食の魔王”グラトニスなるぞ……この程度、この程度ォォ!! がぁぁあああああああッ!!」


「情報の爆弾を喰らって平然と……!!」


「この程度……“廃棄孔”の環境に比べれば……あぁぁ!! 古代文明の亡霊共の記憶なんぞに……儂は屈せんぞ!! ガアッ、ぐぅぅ……ハァ、ハァ、ハァァ!!」



 それは世界に対する反逆者としての意地の現れなのか。グラトニスは右手で顔を抑えつつも、俺に対して殺気だった鬼気迫る表情を向けている。どうやら、流し込まれたデータを無理やり呑み込んだらしい。


 形成は逆転した。だが、脅威は去っていない。


 グラトニスは息を荒くしつつも、空中ヘとゆっくりと上昇していく。ただ浮遊するだけで艦橋ブリッジが嵐に包まれた。正確に言えば、グラトニスの元に空気が集束し始めている。



「ラムダ=エンシェントォォ……よくもくだらん小細工を儂に施しおったな!! 許さん、絶対に許さんぞ……貴様だけは塵一つ残さずに消してくれるわ!!」


「やべぇ……めちゃくちゃキレてる……」


「じゃが感謝するぞ……このデータを完全に儂のものにすれば、もはや全てのアーティファクトを手に入れたも同然じゃ!! よって褒美を取らす……我が最大奥義で、苦しまさずに葬ってやろう!!」



 “喰魔”ベルゼブブが通常形態である華奢な腕に変わり、その腕をグラトニスは高く掲げた。すると、掲げられたてのひらに小さな黒球が形成され始めた。

 それはグラトニスの元に集束していく空気の集束地点だ。空気だけではない、空中要塞メサイヤの風景を再現する光量子フォトンまでもが吸収され始め、周囲の風景が乱れてブラックアウトしていく。



「これはグラトニスの奥義の……!!」



 その術技を俺は知っている。アーティファクト戦争で戦った際、グラトニスが見せた最大の大技だ。黒球を視認した瞬間、俺はかつての敗北を思い出した。

 あの時、俺はグラトニスが放った奥義を打ち消す事には成功したが、そこで全てのちからを使い果たしてしまった。これはその時の再現なのだろう。



「我が王、星間兵装ホロスコープの使用許可を……!」

「許可します。今度こそ勝ちなさい、我が騎士よ」



 “闇の救世主”は再び俺の前に立ちはだかった。そして、今度こそグラトニスという強敵を打倒するべく、俺は決戦兵器を持ち出す事を決意したのだった。

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