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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1069話:VS.【憤怒の魔王】イラ“異聞”③ / “Wild Sense”


「フッ、少しは野生を思い出したか?」



 ――――イラは笑みを浮かべると、頬を膨らましながら大きく上体を逸らす。膨らんだ頬の中には高熱の反応が出ている、焔を蓄えているのだろう。



「灼き尽くす――――“業焔ごうえん”!!」



 そして、イラが吸い込んだ空気を吐き出した瞬間、金色こんじきに煌々と輝く焔が俺と背後のノア目掛けて勢いよく放射されてきた。



「――――むんッ!!」

「ほう……焔を斬るか」



 俺は魔剣を素早く振り下ろして迫りくる焔を縦に真っ二つに斬り裂いた。そのまま同時に身体を捻って回転しつつ、振り上げた右脚に魔力を集束させていく。



「囲め、亡獣よ――――“襲爪焔狐牙しゅうそうえんこが”!!」



 俺が身体を捻り出すと同時に、魔剣で斬り裂いた火炎放射の残滓が燃え盛る亡獣に姿を変えた。なんとなく察していたが、イラはからかじめ二段階に攻撃を分けていたのだ。

 二匹の亡獣の内、一匹は俺めがけて飛び掛り、もう一匹は背後のノア目掛けて飛び掛っていた。



「邪魔だ、どけェ!!」



 素早く脚を振り抜いた衝撃波を発生させて、飛び掛ってきた亡獣をかき消すように消滅させた。背後ではノアが今まさに襲われそうになっていた。



「さぁ、あるじの危機だぞ、どうする?」



 このままではノアが襲われてしまう。だが、ノアから『助けて』の声は聴こえなかった。代わりに聴こえたのは拳銃を構える音だ。



「魔剣駆動……ッ!!」

「ほう……妾を討つ気か?」



 だから俺はノアが自ら窮地を脱する事を信じて、イラを討つ為に戦うことを選んだ。身体を回転させつつ狙いを定め、左手に握る魔剣をぶん投げる用意をする。



 そして、ノアが拳銃を撃つと同時に――――


「魔剣投擲――――“超電磁魔剣砲ブラスト・キャリバー”!!」

「――――ッ! “野生の勘(ワイルド・センス)”!!」


 ――――俺は魔剣をイラに向かって投擲した。



 左腕のアーティファクトの機能で高速で撃ち出された魔剣はイラの胸部目掛けて飛んでいく。それを優れた直感で予測したイラは上体を大きく逸らし、リンボーダンスのようにして魔剣を躱した。

 魔剣がイラの胸の谷間をすり抜けていき、イラは魔剣をやり過ごすと後方にそのまま回転しつつ両腕に焔を集束し始めた。



「残念、惜しかった……な!? いない!」



 魔剣による攻撃を躱したイラは得意気な表情をしていた。しかし、彼女の視線の先には俺はすでに居なかった。彼女の視界に映ったのは亡獣を拳銃で撃退したノアの姿だけだった。

 何故なら魔剣を投擲し、イラが回避の為に俺から視線を外した一瞬の隙を突いて、俺は空間転移で移動していたからだ。



量子残光クォンタム・パリサー……!」

「背後! まさか、投げた魔剣を印にして……!」



 俺は投擲した魔剣の側に転移していた。つまりはイラの背後だ。俺は転移と同時に魔剣の柄を握りしめ、イラに背後から斬り掛かった。

 投げた魔剣がブラフだと気がつかなかったイラは慌てて回避行動を取ろうとしていた。急いで反転しつつ、俺に対してカウンターを打ち込もうとしていた。



「遅い! 喰らえェェ!!」

「これは……ぐっ!? おのれ……!!」



 だが、イラが反撃するよりも疾く、俺は魔剣を振り下ろしてイラの尻尾を三本切り落とすことに成功した。

 イラの反転が僅かに間に合ったのか、斬れたのは九尾の内の三本だけ。しかし、それでも耐えがたい激痛が走ったのか、イラは苦悶の表情をしていた。



「お返しだ――――“大憤火だいふんか”!!」



 イラは激痛を堪えながらも両手を合わせると、貯めた焔を散弾銃のように撃ちはなってきた。無数の焔が俺に向かって水飛沫のように迫ってくる。



「可変銃、弾丸装填――――“豪雨ごうう”!!」



 即座に右手の可変銃を高出力形態で構え、イラに向かって躊躇なく引き金を引いた。撃ち出された魔弾がイラの放った散弾をその威力でかき消しながら飛んでいく。



「しまっ……ぐあっ!?」



 俺が撃った魔弾は散弾をかき消し、そのままイラの九尾を撃ち抜いた。胸部から血を噴き出しながらイラは大きく吹っ飛んでいく。

 そして、地面に背中を打ってバウンドしつつ、尻尾で地面を押して跳躍してイラは宙返りして起き上がった。



「ぐ……やるではないか……! 妾の直感を上回るとは……其方も野生の戦いが何たるかを思い出したようだな?」


「…………」


「その獲物を狩ろうとする、鋭い捕食者ハンターの目付き……其方の眼からは強い怒りを感じるぞ。自らの弱さを恥じる内側への“憤怒”、それを戦いのちからに変換する闘志……良いぞ」



 胸元の傷口を手で抑えつつ、イラは不敵に微笑んでいる。追い込まれた様子も、窮地に陥った様子もない。まだ彼女的には戦いは始まったばかりなのだろう。



「まだ奥の手があるようだな……それを出せ」


「フッ……言われずとも見せてやろう! 全ての獣たちの王である妾を喰らわんとする、“神喰らいの狼(ヴァナルガンド)”が其方を相手するに相応しい姿をな!」


「この反応……アーティファクトですか!?」


「妾は完全なる“憤怒の魔王”として権現せし獣国の王……イラである! 我が怒り、煮え滾る“憤怒”は全てを飲み込み、灼き尽くすであろう……来たれ、黙示録のケモノよ!!」


「これは……まさか()()()()()()()()()()か!」



 右手に魔力を溜めて、その手でイラが地面に触れた瞬間、空間そのものが激しく揺れ出した。そして、イラを中心に魔法陣が展開され、その魔法陣からはあるアーティファクトが召喚され出した。

 全長二五〇メートルはある巨大な“獣”の怪物。九本の尻尾を靡かせ、獰猛な唸り声をあげて敵対者を圧倒する『黙示録』の体現者たる兵器。



「アーティファクト【黙示録の獣(マスターテリオン)】――――起動!!」



 その名は黙示録の獣(マスターテリオン)――――獣国ベスティアに隠されていた秘宝、ノアが開発した獣型のアーティファクト。

 かつて俺たちを苦しめたイラの切り札が再び姿を現し、空間全体を震撼させる咆哮をあげて“憤怒の魔王”が本気を出したことを宣言するのだった。

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