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第109話:VS.【光の化身】アルテマ 〜Ar_Fine Daybreak〜


「ラムダ様、ご無事ですか!?」

「なんとかね……! オリビアたちは大丈夫!?」

「わたし達はなんとか……でも、状況は……」

「最悪……蓋を開けたら王国どころか『世界の危機』なんて何の冗談だか……! そりゃ、女神アーカーシャも“時紡ぎの巫女”と【時の歯車(クロノギア)】を使ってでも封印したくもなるわな……!!」



 逆光時間神殿【ヴェニ・クラス】、神殿の外――――すっかり日は落ちて、空は闇のとばりに覆われた夜の時間。


 ツヴァイ姉さんとツェーネルに救出された俺とジブリールは、神殿の外で待機していたオリビアたちと合流することが出来た。


 しかし、状況は切迫せっぱくしている――――鳴り止まない地鳴り、視界に映る全ての風景がブレる程の地震……間違いなく、【光の化身】の脅威はすぐそこまで迫ってきていた。



「第二師団! 予定では間もなく【聖処女】が近辺に到着する頃合いだ! 急ぎ飛竜ワイバーンで飛ばしてアインス卿を此方こちらに!!」

「私とツェーネル卿は【ベルヴェルク】と共に【終末装置アル・フィーネ】を食い止めます!!」

「承知しました! どうかご無事で……ツヴァイ団長、ツェーネル副団長……!!」

「勝手に弊機わたしたちも戦うことになっていますね、マスター?」

「逃げるわけにもいかないだろ……! こうなったら最後まで付き合えよ、ジブリール!」

「はーい……」



 第二師団はツヴァイ姉さんとツェーネルを残して応援を呼びに散開、残ったのは俺、オリビア、コレット、ミリアリア、リリィ、レティシア、ツヴァイ姉さん、ツェーネル、ジブリールの9名……この少人数で『世界滅亡ワールドエンドきゅう』の怪物を倒しきれるのだろうか。



御主人様ダーリン……体力は大丈夫?」

「はぁ……はぁ……ちょっとキツイかも……!」

「でしょうね……ごめん、オリビア――――()()()()()()()()()()()!!」

「えっ? なんですか、リリィさ――――あっ……あふん♡」

「リリィ様の尻尾をさされたオリビア様が情けない嬌声きょうせいをあげて倒れたですー!?」

「おい、リリィ!? オリビアになにを――――んッ///!?」

「そのままリリィ様がラムダ様にキスしたですーーッ!?」

「〜〜ッ/// おい、リリィ、いきなりなにを……あっ、体力が……!?」

「“癒やしの口づけ(ヒーリング・キス)”――――うちが使える数少ないの回復術式(スキル)! オリビアとうちの二人分、持って行って! う〜、本当はもっと情熱的な場面シチュエーションでキスしたかったのに〜!」

「ツヴァイ卿が『この世の終わり』みたいな表情かおでラムダ卿を見ていますわ……」



 そして人数はさらに7名に――――俺の体力の減少を補うべくリリィはオリビアから体力を吸収ドレインし、吸い取った生命力エナジーを“口移し”で俺に分けてきたのだ。


 オリビアとリリィふたりの生命力エナジーを分け与えられたぎっていく俺の身体、託された想い。


 まだ戦える――――もう一度、流星剣メテオザンバーを力強く握り締めて、俺は神殿の方へと視線を向ける。



「アリア……レティシア……悪いけど、オリビアの介護よろしく……! うちも……もうすっからかん……!」

「仕方ないなぁ……っと、うわわ!? 揺れが強くなってきた!?」

「いよいよだな――――来るぞ!!」



 ざわめく木々と草花、辺りから逃げるように飛び立つ鳥の群れ、その鳥たちを残さず捕らえる“光”の触手


 神殿の背後よりい出るは巨大な巨大な白光はっこうの腕――――小さな教会ぐらいなら手のひらだけで軽く押し潰すほどの巨大なかいな



「デカ過ぎない……!? 巨人族の比じゃ無いわ……!? アインス兄様……私はもう駄目かも知れません……!」

「あぁ……女神アーカーシャ様……我々をお守りください……!! うぅ……死ぬ前にツヴァイ卿といちゃラブな関係になりたかった……!」

「姉さんの貞操がツェーネル卿に狙われている……」

「推定体長――――2000メートル。推定脅威レベル――――“EX(測定不能)”」



 そして現れるは天を穿つらぬく光の巨人――――名を【光の化身】アルテマ。


 この惑星ほしを喰い尽くさんとする“終末”の使徒。



「オォオオ――――オォオオオオオオオオ!!」

「アーティファクト【光の翼(ルミナス・ウィング)】!!」

「飛翔兵装――――【ルミナス・ウィング】!!」

「飛びなさい……ワサビくん!!」

「飛翔せよ――――我が相棒、ルティーヤ!!」

「えっ……僕たち無理じゃない……? 足元にも及んでないよ……」

「だから御主人様ダーリンに託したのよ! さっさと避難するわよ!!」



 立ち向かうは4人の騎士と天使、相対するは終末の化身――――無謀な戦い、ありドラゴンに挑むような暴挙、死が必然たる絶望的な決戦。


 死を覚悟した。


 でも、あの“光”の中にはノアとアウラが居る。だから、俺は逃げない。


 君の居ない世界に、俺は居たくない。


 だから、死力しりょくを尽くしてあらがおう――――もう一度、君を抱きしめる為に。



「【煌めきの魂剣ヴィータ・フルジェント】……! ノアとアウラを返してもらうぞ……【光の化身】――――アルテマァアアアアアアッ!!」

「砲身冷却認識――――荷電粒子砲【ソドム】【ゴモラ】……最大出力、発射ファイヤ!!」

「「魔力装填――――撃ち出せ、“飛竜火炎ワイバーン・ブレス”!!」」



 持てる火力の全てをもって光の巨人を攻めたてる。


 俺は蒼き“魂剣こっけん”を魔力が尽きぬ限り撃ち続け、ジブリールは動力炉ドライヴが焼き切れる勢いで射撃を続け、ツヴァイ姉さんとツェーネルは跨った飛竜ワイバーンにあらん限りの魔力を回して火炎ブレスを吐き出させ続ける。



「くっ……動きが全然止まらない……!?」

「相手の規格スケールが大き過ぎて我々の攻撃が効いていない……!? ツヴァイ卿、これはあまりにも無謀かと……!」

「無理よ……ラムダ……逃げないと……」

「提案拒否――――何処に逃げても結果は同じ。むしろ……まだ『完全体』に成長しきっていない今しか勝ち目はありません……!」



 されど、【光の化身】はビクともしない。


 こちらの攻撃は全て“光”の巨躯きょくに、湖に落ちた一滴ひとしずく水滴すいてきのように飲まれて消える。


 砂漠に一握いちあくの苗を植えて緑の大地を作ろうとするような不毛ふもうさだ。



「ラムダ……エンシェントォォォオ……! ソノ忌マワシキ“剣”ト共ニ、墜チルガ良イィィィィイイ!!」

「敵性個体から大量の触手の出現を認識――――こちらに急速で接近します!」

「【行動予測】――――姉さん、そのまま右斜め下に旋回! ツェーネル卿、急停止のち上方向に大きく旋回! ジブリール、気合でなんとかしろ!」

弊機わたしだけ精神論!?」



 そして、【光の化身】の攻撃は熾烈しれつ苛烈かれつ――――天をみはるような巨体から繰り出される無数の“光”の触手が、俺たちを捕らえんとむちのようにしなりながら飛来する。


 捕まればそのまま奴の体内に取り込まれる……それだけは断固阻止しないと。


 右眼カレイドスコープの【行動予測】による触手の軌道を見切り、姉さんたちに指示を出して攻撃をいなしていく。


 だが、長くは保たない……その前に、何としてでも決着を付けないと。



「こんな怪物、どうやってこの流星剣メテオザンバーで倒したんだ!? 大きさが合致がっちして無さすぎだろ!?」

「それは弊機わたしにも分かりませんーーッ! せめて、【光の化身】の解析データ所持していたノア様が居ればぁ……!!」

「結局はノア頼みか……! ノア……頼む、返事をしてくれ……ノアーーーーッ!!」

「――――ッ!? 【光の化身】頭部に超高密度集束エネルギー反応を検知! あぁ、不味い……マスター、急いで離れて!!」

「――――ォォォオオオオ!!」

「――――【オーバードライヴ】!!」



 そして、極めつけと【光の化身】の頭部から放たれたのは一筋のまばゆい光――――危険を察知し、咄嗟に【オーバードライヴ】による“空間跳躍ワープ”で回避した俺を掠めて、極限まで圧縮された光球は彼方かなたへと飛んでいく。


 次の瞬間、俺たちが見たのは絶望の光景だった。



「推定消失範囲…………直径10キロメートル……!! 範囲レンジ内、生存物体……無し」



 遠い彼方、放たれた光球の着弾地点から立ち昇ったのは『光の柱』。


 大地を丸々消滅させ、爆風で山を削り飛ばし、雲を引き裂き、夜空を白く照らし出し、天を穿つらぬいたのは――――“絶望の光”。


 惑星ほしを飲み込む終末の調べ。



「無理……! 無理だよ……あんなの聞いてない……! 勝てっこない……私……此処で死ぬの……? まだ……恋もしてないのに……! あぁ……お父様、お母様、アインス兄様、ゼクス……助けて……!」

「あぁ……あぁああ……わ、我々は……開けてはならない『厄災の箱』を開けてしまったのか……!?」

「ツヴァイ=エンシェント、ツェーネル=バハムート、気力消失……戦闘続行、不可。抵抗――――無意味」

「嘘だ……デタラメ過ぎる……!? こんな化け物、どうやって倒すんだ……!?」



 ツヴァイ姉さんとツェーネルは“絶望の光”を前に心を折られて抵抗を諦めた。


 地上で行く末を見守っていたミリアリアたちは膝をついて【光の化身】を前に屈服した。


 ジブリールは戦闘の継続を無意味と判断して武器を降ろした。



「こんなところで終わるのか……俺の旅は? ノア……俺はまだ君の願いを叶えていない……! 俺はまだ……君と一緒に居たいんだ……!」



 打つ手が無い――――手持ちのアーティファクトは歯が立たない、所持したスキルは意味を成さない、唯一の『対抗手段メテオザンバー』は規格スケールが違い過ぎて有効打が打てない。


 このままじゃ……勝てない。



「なんだよ……お前、何なんだ!! ふざけているのか……くそったれが……!!」



 でも、まだ諦めたくない……まだ諦めきれない……ノアを見捨てたくない。


 どんなに強がって虚勢きょせいを張っても、どんなに泣き言を言っても、【光の化身】は歩みをめない……俺たちを殺し、この惑星ほしを滅ぼすまで決して。


 それでも……俺は諦めない。



《――ダさん! ――えますか、ラムダさん! 聴こえますか、ラムダさん!!》

「――――ッ! ノア……ノア!!」



 そして、彼女も諦めていない。



《使って……『時間を巻き戻す』アーティファクト――――【時の歯車(クロノギア)(エンシェント)”】を!!》

「クロノギア……エンシェント……!?」



 だから……俺は最後まで戦おう。

 ノア……君を迎えに行く為に。

 

【この作品を読んでいただいた読者様へ】


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