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【第四部】忘れじのデウス・エクス・マキナ 〜外れ職業【ゴミ漁り】と外れスキル【ゴミ拾い】のせいで追放された名門貴族の少年、古代超文明のアーティファクト(ゴミ)を拾い最強の存在へと覚醒する〜  作者: アパッチ
第十八章:虹を越えて、無限の彼方へ

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第1053話:王立騎士として


「我が騎士、身体の調子は?」

「多少は回復しました……移動時間が長いので」



 ――――“無限螺旋迷宮”ユグドラシル・シャフト、階層移動用エレベーター。第四十階層をクリアした俺たちはエレベーターに乗って次の階層に向かっていた。

 本当は少し休憩したかったが第四十階層を無闇に破壊してしまった為、トネリコに追い出されてしまった。次の階層へと向かう時間の中で俺は少しでも体力を回復させている状態だった。



「先ほどグラトニスさんと通信しました。どうやら攻略隊も“無限螺旋迷宮ユグドラシル・シャフト”の攻略に手こずっているようですね……通信段階でやっと第九階層だそうです」


「グラトニスでも苦戦するのか……」


「聞いていた限りでは……どうやら此処の魔物モンスターは挑戦者の記憶から“トラウマ”を読み取って、それを元に挑戦者がもっとも苦手とする存在に姿を変えるようですね。あと、それでいてかなり手強いようです」


「通常の魔物モンスターもその仕様か……」


「いきなり誰かのトラウマである“大蛇”が出てきて一同大慌てだったらしいですよ。グラトニスさんは『誰じゃ蛇なんぞ苦手にしておる軟弱者は』と震え声で言っていましたが……さて誰でしょうね?」



 通常の手順で“無限螺旋迷宮”ユグドラシル・シャフトを攻略しているグラトニスたちも苦戦を強いられているらしい。

 ノアはエレベーターの壁にもたれながら、腕のデバイスから投影された報告書を眺めている。それと同時に俺たちが見聞きした情報を送っているようだった。



《まもなく第五十階層に到着します。お降りの際は足下にお気を付け下さい。繰り返します、まもなく第五十階層に到着します》


「どうやら到着したようですね……」


「私なら大丈夫です、我が王。あとはガーディアンと適当に会話して時間を稼ぎつつ、ギリギリまで体力の回復に努めます。さぁ、行きましょう……此処で足踏みをしている場合ではありません」



 そうこうしている間にエレベーターは次の目的地である第五十階層に到着した。エレベーターの扉は開かれ、またしても未知の領域への逆光が俺たちを出迎えていた。

 俺は息を整えるとノアに『自分は大丈夫だ』と伝えるように小さく一礼をした。ノアは俺が強がっていると内心思いつつも了承したのか、ゆっくりと歩き始めてくれた。



「おや、此処はたしか……」

「エトワール城の中庭か……」



 エレベーターを降りた俺たちを出迎えたのは、やはり見覚えのある光景だった。城内に設けられた吹き抜けの庭園。周囲を観客席に囲まれ、中央には武舞台が用意された場所。

 今は存在しないグランティアーゼ王国の王都シェルス・ポエナ、その象徴たるエトワール城の一画にある場所だ。



「俺はここで王立騎士団入りを賭けた決闘を……」



 “逆光時間神殿”ヴェニ・クラスでの戦いを終えた俺は兄アインス=エンシェントから王立ダモクレス騎士団へのスカウトを受けた。俺の評判を聞き付けたヴィンセント陛下がプロパガンダの為に俺を引き入れようとしたのだ。

 しかし、ぽっと出のラムダ=エンシェントの入団を巡って王立騎士団は意見が対立。歓迎派、反対派、様子見派に分かれてしまった。そこで俺の入団を賭けて、現役の団長との一騎打ちが行われる事になった。



「その憂いた表情……まさか誉れある王立ダモクレス騎士団に席を置いた事を後悔しているのか、ラムダ=エンシェント卿? 由緒あるエンシェント家の子としては特殊な反応だな」


「…………やはり、貴方が相手ですか」


「そのようだな……此処は貴殿のもっと深く刻まれた“記憶”を再現した場所だ。そのような幻影に私が選ばれるとは……どうやら貴殿にとって王立騎士団入りは深く記憶に刻まれた思い出のようだな」



 ふと、声がする武舞台に視線を向ければ、そこには一人の騎士が威風堂々とした立ち姿で佇んでいた。

 黄金に輝く騎士甲冑を身に纏ったくすんだ金髪と灰色の瞳の壮年の男性。忘れもしない、王立ダモクレス騎士団の団長、“王の剣”の一人。



「ゴルディオ=オクタビアス卿……」



 その名はゴルディオ=オクタビアス――――王立ダモクレス騎士団第八師団を率いていた騎士。我が父アハト=エンシェントの跡を継いで団長になった男だ。

 アーティファクト戦争の最中、魔王軍最高幹部だったルシファーとの戦闘で戦死した筈の男が幻影となって俺の前に立ち塞がった。



「さてラムダ卿……もう理解しているとは思うが、私はただの幻影だ。故に遠慮は要らん……先に進みたくば我が首を掻っ切って征くが良い」


「…………」


「無論、私も貴殿を全力で排除させて貰う。私が敬愛するアハト=エンシェント卿の後継者に軟弱者は不要ゆえな……貴殿がエンシェント家の恥さらしなら此処で死んで逝け」



 オクタビアス卿はこの階層を守るガーディアンとして配備された。戦闘を避ける事は不可能だろう。

 俺は懐かしさと後悔を胸にしまい込んで、オクタビアス卿の待つ武舞台へと歩いて行った。入団試験の時は周囲に観客が満ちていたが、いま戦いを見守っている観客はノアしか居ない。



「さて、ラムダ卿……貴殿はルール無用の『殺し合い』が所望か? それとも誉れある騎士としての『決闘』が所望か? 此度は貴殿がルールを決めるが良い」


「…………決闘を」


「よかろう……ならば騎士らしく正々堂々と戦うとしようか。アーティファクトの使用は禁ずる。使用武器はその手にした魔剣で良いな?」



 オクタビアス卿との戦いは騎士らしい“決闘”で決める事になった。かつての入団試験の再現、俺はヴィンセント陛下から課された『アーティファクトの使用禁止』を己の制約に課した。

 あの時の自分から今の自分がどれほど変わってしまったのか、それを知る為にも。俺が魔剣を構えたのを見て、オクタビアス卿も外套マントを脱ぎ捨てて剣と盾を装備した。



「オクタビアス卿、一つ質問を……貴方は“異聞イフ”ですか?」


「その質問は私に勝ったら教えてやろう……無駄な情報は雑念になって貴殿を惑わすぞ。今は目の前の戦いに集中しろ……それが今の貴殿の責務だ」


「…………はい、分かりました」



 お互いに剣を構え睨み合う。心の中に渦巻くオクタビアス卿への懐かしさ、死なせてしまった事への後悔を押し殺し、ただ彼を倒すことだけを意識する。

 これは騎士としての誇りを賭けた一戦、俺が逃げられない道へと足を踏み込んだ記憶の再現。その試練を乗り越えて俺はかつての“王立騎士”だった事の記憶と向き合う。



 そして、静寂の中に一陣の風が吹いた瞬間――――


「「いざ尋常に――――勝負ッ!!」」


 ――――俺とオクタビアス卿の決闘が始まったのだった。

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